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営農情報 #4 夏まきコマツナは防虫ネットでバッチリ防除

JAにしたまでは、学校給食への地場野菜の供給が年々増加しています。

主な品目はタマネギ、ニンジン、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、ネギが主流であり、年間通じて出荷可能な葉菜類の出荷販売体制の確立が期待されていました。

そこで目を付けた品目がコマツナです。

コマツナは、特別な資材や設備を使わなくても生産に取り組みやすい品目であり、JAにしたま管内の瑞穂町に農外から新たに参入した新規就農者にもうってつけの品目であると考えたのです。

こうして瑞穂町の若手農家とJA営農指導員がコマツナの学校給食出荷への安定供給に取り組んだところ、キスジノミハムシの被害が問題となってしまいました。

キスジノミハムシは、発生時期が5月から9月までと長く、幼虫は土の中で植物の根を食害し、成虫は地上部の葉を食害する厄介者です。

特にコマツナは同一圃場で周年栽培することが多く、作を重ねるごとに害虫密度が高くなってしまうのです。

瑞穂町のコマツナ農家の圃場でも、6月出荷のコマツナに食害が多く、出荷不可能な程の大きな被害が発生してしまいました。

そこで、発生が多く、被害が甚大になることが予想される8月播きのコマツナ栽培について、防虫ネット(サンサンネット目合0.06㎜)によるトンネル被覆と土壌施用殺虫剤(フォース粒剤、スタークル粒剤)の組み合わせによるIPM(総合的病害虫・雑草管理)に基づく防除方法の確立を目指した試験栽培を行ないました。


試験栽培の概要


(1) 栽培品目:コマツナ

(2) 品種:夏の甲子園/トキタ種苗

コマツナ種子 夏の甲子園(トキタ種苗)


(3) 栽培概要

栽培概要
写真1 播種直後の様子


試験栽培の結果

(1) 虫害について

表1 虫害の程度


8月に栽培するコマツナにおいて、防虫ネット被覆とネットなし区の栽培を比較したところ、ネットなし区では、ハイマダラノメイガの食害により芯止まり症状となり、生育が阻害されました。また、キスジノミハムシによる食害も多く、ネットなし区での栽培では、出荷できるものは1株も生産できませんでした。一方、防虫ネット区では、ハイマダラノメイガ、キスジノミハムシの被害はほとんどなく、全て出荷可能なものが生産できました。

写真2 防虫ネット区で生産した小松菜
写真3 防虫ネットなしで生産したコマツナ
写真4 防虫ネット有無の比較(左:ネットなし、右:ネットあり)

(2) 除草効果について

播種前1週間程度、透明マルチで畝被覆をし、地表面の地温は50℃以上に上昇しました。生育中の雑草の発生は非常に少なく、高い除草効果があり、コマツナが順調に生育しました。


考察


最も虫害が懸念される夏季のコマツナ栽培において、防虫ネットを使用することで、キスジノミハムシ、ハイマダラノメイガ等の害虫の食害をほぼ抑えることが可能であることが分かりました。

農薬による防除は、防虫ネットの有無に関わらず、両区とも同様に行ったが、ネットなし区では、可販率は0%でした。
この結果から、農薬による防除よりも防虫ネットによる物理的防除の効果が極めて高いことが分かりました。

コマツナの品目的特徴


① 特別な施設や高額な資材を必要としないこと
② 播種から収穫までの栽培期間が短く、素早く換金できること
③ 広い栽培面積を必要とせず、単位面積当たりの収益性が極めて高いこと
以上の事項から、新規就農者や施設を持っていない露地野菜農家への導入に適している品目であることが考えられます。

また、パイプハウス等の施設を持っている生産者であれば、寒い時期も含めた周年栽培体系を確立し、学校給食や直売所、量販店を含めた安定的な出荷販売体制を確立しすることができるでしょう。


試験栽培から得成果の利活用

(1)現地検討会の開催


調査日(収穫日)前日の9月6日にコマツナ学校給食出荷農家による現地検討会を開催しました。

試験栽培の概要、ねらい、IMP防除の効果を説明し、生産技術や秋冬期の低温対策、今後の出荷販売体制のあり方について意見交換を行ないました。

参加した農家は、「とても参考になった」、「こうした成功事例を実際に見て、生産意欲が高まってきた」と語ってくれました!

写真5 現地検討会の様子

(2)コマツナ学校給食出荷者への情報提供

現地検討会修了後、取りまとめた虫害データや考察を情報提供し、防虫ネットの防除効果の裏付け資料として情報提供を行ない、安全・安心な農産物生産の意識向上を醸成させるよう啓蒙活動にも取り組みました。


(3) 直売所出荷者への情報提供

直売所定例会等において、防虫ネットの防除効果を説明し、農薬の使用回数を減らしても良品生産が可能だということを理解してもらうための情報提供を行ないました。

併せて、東京都エコ農産物認証制度の普及にも繋げていきたいと考えています!

(営農生活課H.O)