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開発者は無目的にリソースを投資しやすい

DX を考える記事の第二弾。前回は目次のようなものなので実質これが第一弾。

今後の議論のために、まず開発者について再確認する。

ここでは開発者を「ソフトウェア作成によって課題解決する人間」という定義とする。「開発」の原義は「アイディアなどを実用可能とすること」くらいの意味合いのようだが、目的も加味して課題解決できる人間としている。また簡単のためにソフトウェアに絞っている。

生活

開発者は人間なので生活しなければならない。生活するために稼ぐ必要がある。お金のハナシだ。

開発者というざっくりとした範囲では厳密な議論はできないが、平成 30 年の時点で平均年収は約 418 万円から 551 万円。

プログラマーとシステムエンジニアを対象とし、「きまって支給する現金給与額」を 12 倍し「年間賞与その他特別給与額」を足している。プログラマーの場合 `298.5 * 12 + 601.2 = 4183.2 千円` という計算になる。また、事業所に回答してもらうという調査方法のため、フリーランスは調査対象に多分入っていない。そのため、今回はフリーランスについて議論しない。

また、日本の平均年収は平成 29 年の時点で 432 万円。


平均ではなく中央値で議論すべきなのだが短時間の調査では手に入らなかった。

これらの数字を信用する場合、平均程度には稼いでいる、ということのようだ。仕事道具として個人で購入すべきものとしてマシンや椅子などが挙げられるが、趣味嗜好も多分に入るので必要経費はその他職種と変わらないとしてよいだろう。

また、平均労働時間についても月ごとでシステムエンジニアが 158 時間と残業 16 時間、プログラマーが 162 時間と残業 15 時間なので働きすぎということもないだろう。時期や周期によるとは思うが仕事が忙しくて身動きが取れないということはないはずだ。

肌感としては良くも悪くも安定してきた印象がある。デスマーチ続きで残業時間、給与ともにすごいことになっていた時代はすでに過去だ。企業に勤めている場合は仕事終わりに趣味・自己投資や家族と過ごす時間を持てるようになっている。

生きる目的

さて、生活については平均的であることがわかったが、ひとは生活するためだけに生きるのではない。何かしら目的を持っている。これに関して傾向として大体 2 つの側面を持つ。これは主観。

ひとつめは目的指向の人間。人生のロードマップを持っており、どう死ぬかまで考えている人間もいる。現時点でやるべきことも逆算してわかっており、夢のために必要な資金を集めたりコネを作ったり勉強したりなど。

ふたつめは刹那的な人間。より快楽の大きい方へ進み、趣味や周りの人間にパワーを割く。こちらは様々だ。

実際はキレイに 2 つに分かれるわけではなくグラデーションを形成する。どう死ぬかまではイメージがついていなくとも 2 年後どうなっていたいかを見定めながら貯金と趣味でバランスを取るというのはよくあるパターンだ。

ここで大切なのは、グラデーションのどの位置にいるにせよ人間は多かれ少なかれ目的を持っているということだ。今後これが議論のポイントとなる。

人間のリソース

また別の話題。目的を達成するためにはリソースが必要だが、人間のリソースとは時間とそれを増幅させる触媒、とここでは定義する。触媒には資金、才能、環境、健康がある。

資金はリーチできる対象を広げる。資金によってより効果の高いものが手に入り、コミュニケーションしやすくなり、趣味を充実したものとすることができる。また、時間の投資効果は才能と環境によって大きく左右される。同じ時間を投資しても才能があるほう、もしくは環境が整っているほうが大きな成果を得られる。

健康は触媒というより抵抗と呼んだほうが良いかもしれない。健康であれば最大の 1 倍、調子が悪くなるごとに減っていき、寝込んだりすると 0 倍となる。

ただし、いくら触媒があっても時間がなくては投資できない。つまり時間はリソースの主としての側面がある。時間を使って稼ぎ、コミュニケーションをとり、趣味に没頭する。さらに、時間と触媒は相補的な性質を持っている。時間を投資すると資金が集まり才能を伸ばすことができ環境を整えることができる。健康については 1 倍に保つために睡眠や休養などを必要とするため、投資というより固定費かもしれない。

つまるところ時間配分が重要になってくるのだが、人間は同じ時間しか与えられていないのでいかに少ない投資で触媒を最大化するかがリソースの総量を決める。

リソース総量とどう使うかについては議論する上での制約として働く。

開発者

ここからは開発者特有のハナシ。

開発者は趣味と実益を兼ねることが多く、無目的にリソースを投資しやすい側面がある。話しているとこの点に気づいていないことが多く、ロードマップを作るように指摘すると戸惑いや感謝など様々な反応がある。ただし開発者は仕事での目的遂行にあたってロードマップを意識することが多く、目的指向について理解があるのでメタファーを使って話すと理解してもらいやすい。

また、開発者は自己投資にレバレッジが効く。才能と環境への投資からのリターンがすぐに返ってきやすい性質を持っているので、リソースの総量を増やしやすい。スキルの習得は成果に直結するし、効率をあげるために必要な環境整備をすると同一の成果を短時間であげやすい。

言い換えれば触媒の中でも才能の比率が高い。才能を伸ばす才能があると自己投資も効果が高く、たとえば読書術や情報の真贋の見極めなどは前提スキルとして有用だ。先人がまだ通ったことのない領域で理論を組み立てたりメタファーを使うことが多いため、様々な分野の知識を持っていると統合・昇華・止揚しやすく、道標となりやすい。環境整備でオープンソースソフトウェアを使うためのスキルがあるとより効率が加速しやすいという点がある。

才能・環境に投資するリソースが個人でまかないやすいことも特徴だ。才能はスキルの習得と言い換えることができ Web ・書籍・動画などを用いることで自己完結しやすい。環境整備についてもモニターや椅子など個人で完結するものが多く、効率をあげやすい。

さて、これでおおまかに議論の前提について整理できた気がする。次回は開発者を取り巻くエコシステムについての話題となる。

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