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野毛駿平

数年前「ヤンチャだけどダーツの上手い奴がいる」と、注目を集めた若きプレイヤーがいる。現在23歳の野毛駿平プロだ。15歳でダーツを始め、ソフトダーツU-19トーナメントなど、ユースの大会で優勝し、華々しいダーツ人生をスタートさせた。同年代で彼に敵うものはいなかった。

2012年からはJAPANに参戦。今シーズンは、すでに2度の優勝を経験している。横須賀に生まれ、地元のダーツ仲間たちと共に歩んだ少年時代。今後、日本のダーツ界を背負うことになるであろう野毛プロの想いに迫った。

なにか夢中になれるものを探していた

野毛プロが最初にダーツをプレイしたのは、15歳のとき。高校受験を終え、家族で遊びにいった先でダーツをプレイしたのだという。なんとも微笑ましいきっかけだ。

「ダーツをプレイしたのは、本当にたまたまでした。でも、その日、家に帰ってすぐにインターネットでダーツを探して買いました。思い通りにならないところが、すごく面白くて。自分でも意外なくらいハマってしまったんです」

“思い通りにならない”。それは、当時の野毛プロにとって、新鮮な驚きだった。曰く、部活動も勉強も、そつなくこなすタイプ。そのかわり、なにかに熱くなるようなこともなかった。

「裏を返せば、そこそこまでしかできないってことなんですけどね。だけど、苦労せずに“ある程度”はいけるわけだから、何でもすぐに飽きちゃう子どもでした。だけど、ダーツだけは最初から思い通りにならなかったんです。早く上達したくて、大人の世界に飛び込むのも躊躇はありませんでした。同級生と遊ぶよりも、ダーツが面白くて。もっと強い人とプレイしたい、上手くなりたいって、それだけでした。礼儀や、上には上がいるってこともダーツから教わったんです」

開幕戦の優勝で、環境が変わった

高校生の頃の話を聞くと、本当にダーツが好きで、何時間でも投げていたという。年上の仲間とよくプレイし、同年代の誰よりも上手いという自負もあった。ただ、大会にでるようになって“楽しい”だけでは、やっていけないと感じるように。

「ダーツスポットに通ううち、地元以外のいろいろなリーグ戦に誘ってもらえるようになりました。僕は運が良かったと思います。ずっと地元にいたら自分の本当のレベルが分からないままでしたから。でも、そうやって期待してもらっていたのに、結果を出せない時期が続いて、長く苦しみました」

やがて、仕事を始めると投げる時間がとれなくなった。思うように試合に出られない期間もあった。その間、野毛プロは、どのようにモチベーションを保っていたのだろうか。

「僕の場合、試合に出ないと話にならないんですよね。というのも、実は練習が苦手なんです。気持ちで入れるタイプとよく言われるのですが、練習のときに気持ちを持っていくのが難しいんですよ。だから、試合で勝つ方法は、試合でつかむしかないと考えています。それで今、自分のモチベーションを保つのに一番いいのは、JAPANに出場することなんです」

日本のトッププロが集まるJAPAN。参戦することで、気持ちが入って必死になれるのだと野毛プロは語る。そして、その強い気持ちが、開幕戦での優勝へと繋がったのだ。

「みるみる環境が変わりました。改めて、試合に出続けるというのは大事なのだと感じたんです。開幕戦で優勝したとき、一番に思ったのは“今年は全ステージまわれるんじゃないか”という希望でした。そのために、まず仕事を変えました。そして、ステージ5で2度目の優勝ができた。これには、どちらかというとホッとしましたね。開幕戦の優勝がマグレではないことを証明できましたから(笑)」

ダーツでは常に挑戦者でいたい

結果を出せば、おのずと応援してくれる人も増える。以前より、声援を“感じる”ことができるようになったのも、野毛プロにとっては大きな変化だった。

「以前は“結局、頑張るのは自分だ”という考えがあったんです。別に、応援があってもなくても、試合をするのは自分しかいないんだからって。だけど、そうじゃないんですよね。僕が勝ったら、みんな自分のことのように喜んでくれる。そのことに気がつけてよかったです。これからプロとしてやっていく上で、すごく大きいことだと思います」

THE WORLDへも挑戦し、着々と実力に磨きをかけるまだ若きダーツプレイヤー。今のユース世代からは、憧れの存在とされるまでに成長を遂げた。そんな彼は、これからどのようにダーツと向き合っていくのだろうか。

「僕は、いつでも挑戦者でいたいと思っています。自分自身、10代の頃から大人に囲まれてプレイしているからこそ、ダーツは年齢も経験も関係ないと思います。それに、もっと上手くなりたいという気持ちも変わりません。海外の選手を間近に見て思ったのは、自分はまだまだだなってことです。JAPANでは、まだまだ下っ端だし、謙虚に頑張りたい。目標はあります。それは、ダーツの賞金だけで食べていくこと。僕はしゃべるのが苦手なので、イベントなどへの出演ではなく、他のプロスポーツ選手と同じように、結果だけで勝負したい」

力強く、胸に秘めた目標を口にした野毛プロ。無邪気にダーツが好きで、誰よりも上手くなれると思っていた少年の姿はもうない。大人に混ざってダーツをプレイしてきた彼は、JAPANで戦ううち、落着きのあるトッププレイヤーのひとりとして成長したのだ。ただし、心の中には、熱い闘志が燃え続けている。

-Profile-
野毛駿平(神奈川県)
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