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井上晋太郎

2013年にプロとなり、JAPANに参戦した井上晋太郎プロ。2013年度は、全大会に出場したが最高位はJAPAN16が1回どまり。JAPANのベテラン勢にとって、それほど驚異的な存在ではなかったのではなかったかもしれない。

2014年度に入ってからも17位~64位タイあたりの成績がしばらく続く。しかし、突然、井上プロに変化が起きた。STAGE 7で準優勝すると、STAGE 8、STAGE 9ではなんと連覇を達成。その勢いのまま初参戦したTHE WORLDでもいきなり準優勝の座を射止めてみせたのだ。

背が高くて、表情にはどこか幼さも残るような井上プロ。日ごろは、東京都葛飾区のダーツバー『だーつとかふぇの店 イワオ』に勤務する好青年だ。井上プロは、いったいどのような経歴の持ち主なのだろうか。そして、今シーズンの好調の理由はなんなのだろうか。

おだてられて、その気になって、よかった!

井上プロがダーツに出逢ったのは、丁度、大学を卒業するくらいのタイミング。中学、高校、大学の間、打ち込んでいたバスケットの引退を決めた頃だった。

「バスケを引退してから、よく先輩と遊ぶようになって。そのときダーツに出逢ったんです。当時は、ダーツかビリヤードをして遊ぶことが多かったですね」

懐かしそうに当時の様子を振り返る井上プロ。ダーツをはじめてからハマるまでは、時間はあまりかからなかったそうだ。

「その頃はろくにフォームも知りませんから投げ方なんかでたらめでした。でも、案外狙ったところにいくんですよね。すると、ダーツバーの店員さんも、ダーツバーのお客さんも『おお、センスあるね!』なんておだててくるんです。それで、これはおもしろいなと思って、ハマったんです。いま思うと、乗せられただけなのかもしれませんが(笑)その気になってよかったですね」

バスケを離れて夢中になれるものを失っていた井上プロは、すぐにダーツにのめり込んだ。毎日のようにダーツバーに通うようになり、2ヵ月後には紹介されたダーツバーでスタッフとして働くことが決まった。

「それがだいたい24歳くらいの頃ですね。僕はダーツバーでの接客も好きなんですよ。だから毎日が楽しくって。それで、ダーツは店が終わってから毎日、練習をしていました。漠然とプロへのあこがれもあったのですが、アマチュアの大会にいろいろ出ているだけで、その当時は満足していました」

負けてもいいけど、同じミスでは、負けない

プロの大会に初めて出場したのは2013年、JAPANの開幕戦だった。参戦したての頃は、まだ、それほど“勝ちにいくぞ”という気持ちは強いものではなかったようだ。

「近いところで大会が開かれるなら参加しようかな……、くらいの気持ちだったんです。でも、参加して負けるとやっぱりくやしくて、次も出場したくなってしまう。そうこうしているうちに、全大会に出ていました」

しかし、2013年度は9位タイが最高位だったというのに、今年は優勝2回のほか準優勝も果すなどまさしく快進撃。いったい、なにが起きているのだろうか。

「だんだん勝ちたいという気持ちが強くなってきていますよね。ただ、いまは一つひとつ、目の前の試合で結果を出していきたいと思っています。課題は大事な試合で緊張しがちだということ。だから、なるべくたくさん試合経験を積んで、場数を踏んで、緊張する場面に慣れていこうと思いました」

覚えている中でもっとも緊張したのは、2013年のツアー、STAGE 16の神奈川大会だという。STAGE 15で、初めてJAPAN 16に残った井上プロ。STAGE 16の入れ替え戦で、はじめて予選の勝者を迎え撃つカタチになった。

「やっぱり初めてのことは緊張します。だから、すごくよく覚えていますよ。相手は神奈川県が地元の赤松大輔プロだったので、大きな声援を受けていて。そんな雰囲気に飲まれて思い切り緊張してしまいました……」

「試合に負けること自体は構わない」と言う井上プロ。しかし、「同じ失敗で負けること」については、自分に許してはいない。

「だから、同じような場面があったら、そのときにはもう負けません。そういう気持ちで、やっています」

THE WORLD準優勝に、悔しくて泣けた

目の前の試合、一つひとつをこなしていくことで、着実に結果を残しはじめている井上プロ。9月に開催されたTHE WORLDのSTAGE 4では、初参戦ながら準優勝という衝撃的なデビューを飾ってみせた。

「THE WORLDは、JAPANとはやっぱり雰囲気が違っていて。外国の選手が多いので、入ったとき、外したとき、それぞれの客席のリアクションが大きいんです。また、外国の選手と対戦すること自体も、それほど経験が多いわけではありませんでしたから、僕としては、ひとつでもたくさん試合に出たいと、そのことだけを考えていたんですよね」

無欲の勝利というわけなのだろうか。井上プロはあれよあれよと決勝のステージへ。DarinYoung選手に、僅差で敗れたものの、堂々と胸を張れる成績を残すことができた。

「でも、やっぱり、悔しいですよ。プロの選手はみんなそうだと思うのですが、僕も結局は負けず嫌いなんですよね。だから、負けたら、ものすごく悔しい。そして、僕はすぐ泣いてしまうところがあって。THE WORLDのときも、表彰式のときに、悔し涙をふくためのタオルが手放せませんでした」

井上プロは、THE WORLDを振り返りながら、「でも、同じミスでは、もう負けませんよ」と話す。決勝で犯したミスはもうしない…、それは「次は優勝する」ということなのだろうか。THE WORLD STAGE 5最終戦にも参戦予定という井上プロ。なにを魅せてくれるのか、そんな言葉を聞くと、自然に期待が高まってくる。

「ダーツって、バスケと似ているところがあるんですよね。バスケのフリースローに似ています。イメージを高めて、力を使わずに目標を射抜くんです」

バスケとダーツの共通点について教えてもらったが、いま考えているのは、ダーツのことだけ。ダーツバーで働きながら、お客さんと毎日ダーツを打つ。休みの日は、お客さんと飲みに行き、そのままお客さんと一緒にダーツバーへ。

「JAPANで優勝してから、『だーつとかふぇの店 イワオ』に来てくれるお客様がだんだん増えてきています。『会いに来ました』なんて言われると、びっくりするくらいうれしいですね」ダーツが好きだから、楽しいから、自然にこういう毎日だ。まだ30歳、まだ伸び盛り。これから、井上プロがどこまで飛躍するのか、楽しみだ。

THE WORLD 2014 STAGE 4 JAPAN 決勝戦の動画はこちら

-Profile-
井上晋太郎(東京都)
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THE WORLD 2014 STAGE 5 USA
11月2日(日)3:00よりLIVE中継スタート
http://dartslive.tv/world/live2014s5/

JAPAN STAGE 12 北海道
11月8日(土)13:30よりLIVE中継スタート
http://dartslive.tv/japan/live/

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