外国語の世界へ Vol.1 ヘブライ語は学んでおくべき言語か?

まえがき

フランス語学習者にはおなじみの雑誌に『ふらんす』というものがある。文字通り、フランス語やフランス語圏の国に関する文化や時事問題を扱った雑誌である。

今日ではそのほかにも様々な言語や外国の文化を扱った雑誌や書物は多いが、それぞれが独立したものであり、1冊にまとめられているものは少ない。

この雑誌を創刊したきっかけは1冊に様々なとりわけ外国語に関する記事が載った雑誌があったらいいなという単純な想いからである。

読み物は読者あってのものなので人気がなければすぐ廃刊になるだろう。あるいは、自己満足として長く続けるかもしれない。いずれにせよ、末永くご愛読いただきたい。


もくじ

1、まえがき

2、特集「ヘブライ語は学んでおくべき言語か?」

3、連載 語学2.0 −第1回 外国語を学ぶ方法はいつの時代も同じだった?

4、海外ニュース局 マクロン大統領は古い言葉を使うのがお好き?

5、映画紹介 ドイツ映画『es』

6、編集後記


特集 ヘブライ語は学んでおくべき言語か?

インターネットで「将来役立つ言語」や「学んでおくべき言語」と検索すると英語、フランス語、中国語、スペイン語、アラビア語、ロシア語と世界中で多く話されていたり、将来的にビジネスチャンスが見込める国の言語がヒットする。

確かにこれらの言語は国際世界において重要な言語とされており、ビジネスだけでなく世界を知る上で必要不可欠な言語である。

では、現時点では国際的に重要な地位は占めていないものの、将来、重要度があがりそうな言語はなんだろうか?

様々な言語の名前が挙がると思うが、私はヘブライ語だと考える。

ヘブライ語はイスラエルの母語である。イスラエルというと日本ではとりわけパレスチナ問題に関するニュースが多く報じられているので、イスラエル=危険な国や悪い国といったネガティブなイメージが大半だろう。しかしながら、パレスチナ問題はイスラエルに関する1つの側面でしかなく、他方でイスラエルはIT大国として現在注目を集めているのである。

例えば、イスラエルではAIやロボットを医療現場に用いるIT医療最先端の国で「メッド・イン・イスラエル」という最大規模の医療機器展示会なども開催されている。

また、イスラエルは軍事にもITを積極的に用いており、特に相手からのサイバー攻撃に対する防御としてのサイバーセキュリティー分野においては世界トップレベルである。

こうした背景から近年、多くの国の企業がイスラエルにオフィスを構え、研究や開発を行っている。

したがって、国際的にはイスラエルという国にはもちろんまだ負のイメージはあるものの、こうしたプラスのイメージも多くなっており、近い将来イスラエルが国際社会においてきわめて重要な国になる日が来るだろう。

ヘブライ語はそんなイスラエルを知るための重要なツールである。もちろん、イスラエルでも英語教育は行われており、国民の大半は英語を話せるため我々は英語でイスラエル人とコミュニケーションをとることができるし、イスラエルに関するニュースも日本語や英語、そのほかのメジャーな言語で入手することができる。

しかしながら、例えば英語はあくまでも両者にとって外国語でしかない。外国語でコミュニケーションをとるよりもどちらかの母国語でコミュニケーションをとるほうがより相手との距離は近くなり、相手を深く知ることができる。

それこそが言語のもつ力の1つであると考える。

ヘブライ語はヘブライ文字という文字を用い、日本語と違い右から左に書かれる。ヘブライ語のアルファベットは22文字しかなく、加えて全て子音である。そこでヘブライ語ではニクダーという母音記号なるものが使われ、子音と母音記号の組み合わせで言葉をつくっていく。

このヘブライ文字とニクダーの習得がヘブライ語をマスターするための最初の関門である。学習者の中にはここで挫折してしまう人も少なくないようである。

ヘブライ語ではティベリア式発音という旧約聖書に基づく伝統的な発音方式を用いている。我々日本人はヘブライ語の発音なんて今まで一度も聞いたことがないと思っているがそれは大きな間違いで、多くの日本人はヘブライ語に親しみがある。「マイム・マイム」という曲を知っている人は多いのではないだろうか?キャンプや運動会のダンスなどで多く使われる曲である。この曲は開拓地で水を掘り当てた人々の喜びを歌ったイスラエルの民謡で歌詞も当然ヘブライ語である。例えば、「マイム」というのはヘブライ語で「水」という意味である。このように日本人はヘブライ語に小さいときから親しみがあるのだ。

今日、日本ではいくつかの大学でヘブライ語の授業を履修することができる。また、ヘブライ語に関する日本語の書籍も出版されており独学も可能である。

IT大国としての地位を確固なものにしつつあるイスラエルの母国語であるヘブライ語をこの機会に学んでみるのは面白いのではないだろうか。


連載 語学2.0 −第1回 外国語を学ぶ方法はいつの時代も同じだった?

今日、外国語を学ぶ環境は大きく変化した。

母国語で書かれた参考書や問題集は書店に平積みされ、海外で出版された書物も簡単に購入できるようになった。また、格安で家にいながら外国語のレッスンを受けられたり、無料で海外の友人を見つけ言語交換を行えるアプリも登場し、学校に通わずとも簡単に外国語を学べるようになった。

要するに、独学でも比較的容易に外国語を身につけられるようになったのだ。

こうした変化は外国語学習者にとってはまさに革命とも言えるような劇的なものだろう。今日の流行で言えば、学校で外国語を習う人が大半だった時代を語学1.0というのに対して、今のような独学でも外国語を学ぶことができるようになったことを語学2.0といえるかもしれない。

では、学校ができる前、あるいはできたとしても大半の人々は行くことができなかった語学1.0よりも前の時代の人々はどのように外国語を学んでいたのだろうか。

19世紀にトロイヤ遺跡を発見しその名を歴史に残したドイツの考古学者のシュリーマンは15ヶ国語を操る人物としても名を残した。そして、そのほとんどが独学だった。

彼の外国語習得方は以下の5つだった。

①音読

②母国語に翻訳せず、その言語で理解する

③毎日1時間勉強する

④興味のあることについて作文をする

⑤書いた作文をネイティブに添削してもらう

語学2.0時代の今日、様々な方法で外国語を勉強することができるようになったがシュリーマンが行ったこれらの方法は今でも行われている。そして、多くは外国語習得において非常に効率的な方法でもある。要するに、外国語学習が多種多様になっても根本的なやりかたは変化しないということである。

確かに選択肢が増えることはいいことである。自分に合う方法を見つける確立があがる。しかし、選択肢があまりに増えすぎると今度は返って取捨選択が困難になる。

例えば、英語の参考書を見つけようと書店に行くと、100冊は超える参考書が置かれていてどれを買えばいいか迷ってしまう。

また、いくらいいサービスが登場してもそれを使いこなすことができなければ意味がない。優秀なアプリが出てもそれをユーザーが使うことができなければ宝の持ち腐れになってしまう。

では、はるかに外国語学習がしやすくなったこの語学2.0時代の今日、私たちはどのような方法で何を用いて学習すればよいのだろうか?また、語学2.0時代よりも前から行われている普遍かつ有益な方法をどのように活かしていけばいいのだろうか。

また、言語とは我々にとってなんなのか。言語とどのように向き合っていけばいいのだろうか。

これから数回にわたって考えていきたい。


海外ニュース局 マクロン大統領は古い言葉を使うのがお好き?

現フランス大統領のエマニュエル・マクロン氏はたびたび今のフランス人では使わないようなフランス語を使い話題になります。

例えば、フランスの「Le Parisien」という新聞では「Débat : «poudre de perlimpinpin» et «galimatias», les expressions désuètes de Macron」という見出しで、マクロン大統領が«poudre de perlimpinpin» や «galimatias»のような古いフランス語を大統領選挙戦のルペン候補との党首討論の場で言ったことを話題にしています。また、Youtubeでも彼の古いフランス語を用いた発言に関するコメディービデオが多く作られています。

日本でも最近、将棋の藤井聡太棋士が普段我々が使わないような日本語を使ってインタビューを答えたことで話題になりました。

マクロン大統領も藤井棋士も読書家だというので、そういった豊富な語彙の背景には読書が関係していることは明白だ。


映画紹介 ドイツ映画『es』

日本語タイトル es

製作国 ドイツ

公開日 2001年3月

この映画はアメリカのスタンフォード大学で1971年に実際行われ、現在は実験を行うこと自体が禁止になっているスタンフォード監獄実験というものがベースになっている映画である。

広告によって募集された男たちが刑務所で看守役と囚人役に分かれ、2週間それぞれの役を演じるというもので、主人公は囚人役としてこの実験に参加した。しかしながら、看守役と囚人役の男たちの些細なトラブルから実験は次第に惨劇へと変わっていくというストーリーである。

なぜただの実験が殺し合いに発展してしまったのか。殺し合いの末に彼らはどうなったのか。ネタばれになるのでここに書くことは控えるが、いつの時代も人間の心はもろく弱いということが如実に描かれた映画である。


編集後記

外国語を学ぶことは面白い。その言語自体が面白いがその言語を通して見えてくる文化や歴史はそれ以上に面白く、興味深い。確かに今日、我々は日本語で他国に関する情報を得ることができる。しかしながら、それらの情報はその国の母国語で書かれた情報のほんの一部でしかない。日本語以外から得た情報を通してその国を見るとまた違った見え方があるだろう。今回特集記事を組んだイスラエルがその例である。

日本ではイスラエルに関する書籍やニュースは大半がマイナスのものである。しかし、ヘブライ語や英語など日本語以外で書かれた書物や記事ではイスラエルはどのようにとらえられているだろうか。

外国語を通して世界を深く知る。外国語を学ぶ醍醐味の1つである。

2018年4月10日 春の訪れを予感させる暖かな日差しが差し込むブダペストのオフィスから。

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Papico

外国語の世界へ

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