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08:北欧のスマートシティとその傾向

編集:安岡美佳 / 今村真梨香
2019年1月18日

はじめに

近年の世界的な都市トレンドの一つに「持続可能な街づくり」がある。現在、世界の人口の50%に当たる欧州の人口の75%は都市に居住しているといわれ、世界の30以上の都市が100万都市となっている。国連の算定によると世界の都市人口は年間1.5%増となっており都市拡大傾向は世界的な動きだ。人口増加、都市回帰が世界中で起こり、今後世界中の都市の過密、大型化は急速に進むと考えられている。都市拡大に伴い、人口増加に伴う大気汚染居住スペースの確保リクリエーションの場や、職の確保安全安心な生活環境など各種課題の解決が深刻化することが予想されており、多くの先進国では、持続可能な街づくりを模索している。持続可能な街づくりと同時に各都市が注力するのが、より魅力的な都市づくりだ。新産業を興したり支えたりすることのできる高度人材の誘致合戦は、世界中の先端都市で見られ、例えば高度なIT人材は各都市で引き手あまたと言われる。

デンマークの首都コペンハーゲンの人口も年々増加傾向にある。現段階ではコペンハーゲンに、デンマーク人口の40%が住んでおり、国内外から、より高技能の人材誘致を進めている。数々の競合都市からコペンハーゲンを選択してもらうためには、街を魅力的にすることが不可欠であると判断し、コペンハーゲン市は「住みたい・訪れたいと思わせる魅力的な街づくり」を進めている。その成果か、英国・エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した「世界で最も住みやすい都市ランキング2018」では、前年の10位圏外から9位に選出されるなど、環境作りの成果はが徐々に見られている。

持続可能な街づくりや環境に優しい都市開発は、ITによる効率化、データの活用や可視化を進めるスマートシティの動きと相まって、より一層加速するだろう。未来の新しい都市の形がどのようなものであるべきか、どのような形が望ましいのか、明確になっていることは多くはない。しかしながら、都市計画は数十年規模で実施されるものであるゆえに、現在の技術のみを使っていては、出来上がる頃には時代遅れのコンセプトや技術となってしまっていることも十分考えられる。そのような事態を極限まで避けるため、現在、北欧では、利用可能な技術の模索を続けながら、同時に最先端の研究に基づいた実証実験やイノベーティブな都市計画を産官学連携で進める「リビングラボ」の方策が盛んになってきている。

本レポートでは、デンマークのスマートシティの概略とスマートシティの新しい動きを解説し、デンマークを中心とした欧州地域の特に注目されるスマートシティ事例を紹介する。

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