10:デンマーク人女性がどのように自分らしい働き方を実現することができるのか

執筆:今村 真梨香
2019年1月23日

はじめに

デンマークは、女性の労働参加率は約70%と男性同様高く、働く母親の割合は82%となっている。またOECD(経済協力開発機構)の調査でワークライフバランスが2位となる等、女性が子育てをしながら働きやすい国として知られている。しかし、実際にデンマーク人女性の声を取り上げた研究は少なく、彼女たちが実際の働きやすさについてどのように感じているのかはわからない。本研究ではデンマークの大企業に勤める5人の働く母親へのインタビューを通じて、「デンマークで働く母親はどのようなワークスタイルを実現しているのか」について調査をする。特にフレキシブルワーク、個人の自律的キャリア形成とデンマーク社会の関係性に着目し、分析することで働きやすさを生み出しているデンマーク社会の特徴を導き出す。この調査結果は現在女性活躍を推進している日本の大企業が、今後どのように多様な働き方を受容し、女性の働きやすさを支援できるのかについて示唆を与えるものとして位置付けられる。

1.現状

1.1 デンマーク人女性の社会進出
デンマークは女性の社会進出が進んでいる国として知られている。OECDの調査によると2018年時点で、デンマークでは女性の労働市場参加率が72.5%と、男性の参加率78.0%とあまり変わらず、女性の労働市場参加率が高いといえる*¹。またワークライフバランスについてもOECDのランキングで2位*²となっており、余暇の時間がとりやすいといわれている。働きやすい国として知られるデンマークの労働市場における女性進出のターニングポイントは1960年代にある。デンマークでは60年代に戦後の労働力不足があったことにより、労働力確保のニーズが高まり、女性の就業率が上昇した。その当時女性は、男性と比べ低賃金や労働環境の処遇において不平等があったが、デンマーク人女性が声をあげ、女性の権利獲得にむけて女性解放運動を起こした。70年代には「レッドストッキング**」運動に代表されるように運動が活発化した。その結果もあり、同一労働同一賃金や平等待遇法等が施行されるなど、性別にかかわらず、職場において同じ権利が与えられるように環境が整えられてきた。そして1980年代には、デイケア施設の増加や育児後の女性の仕事復帰等、社会整備が進み、女性が子育てをしながら働き続けられる仕組みがつくられてきた。このようにデンマークでは女性が声を上げてきたことが、社会制度に次第に反映され、デンマークの今日の働きやすさにつながってきた。

OECD *²OECD *³安岡,2014 
**「レッドストッキング」運動とは、 7-80年代に繰り広げられた女性解放運動のこと。

1.2働く母親を支援する仕組み
女性が子育てと仕事を両立できる仕組みとして、保育施設や育児休暇制度等の充実した子育て制度や父親のサポートが挙げられることが多いが、本論では特にフレキシブルワークと保育施設の2点に注目したい。

■フレキシブルワーク
デンマークでは労働者自らが働く時間を選択できる、フレキシブルタイムの導入が進んでおり、43%の人が「フレキシブルワーク」を行い、時間や場所にとらわれない働き方を実現しているといわれている。このような柔軟な働き方を可能にしている理由は、従業員同士の高い信頼関係にあるといわれている。デンマークの職場において従業員は役職に関係なく、自由に意見を発信することができる。例えば重要な会議においても、一人一人の意見が意思決定に反映されやすい。デンマークの職場は結果主義であるといわれ、仕事におけるプロセスよりも成果物が重要視される。したがって、各個人がタスクを遂行するという条件を満たせば、いつ・どこで仕事をするのかということは個人に任せられるため、デンマークで働く人は働く環境を比較的自由に選びやすい。家で仕事をすることも、16時頃早めに帰宅することも許容されるのである。このように柔軟な働き方を利用できることが子供を持つ母親の働きやすさにつながっていると言われている。

保育施設
デンマークでは主に自治体が保育施設や幼稚園を運営しており、多くの働く母親はこれらの施設を利用している。特にデンマーク人女性は他の北欧諸国と比較しても育児休暇後早い段階から子供を保育園に預けているといわれている。デンマーク統計局によると約68%の子供が生後12ヶ月から18ヶ月の際に、保育施設に預けられ、3歳になるとほとんどの子供が幼稚園に通うことが当たり前であることが明らかになっている。以上のことからデンマーク人女性は早い段階から子供を保育園に預け、仕事と両立させていることがわかる。

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北欧研究所(Japanordic)

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