09:ファシリテーターとしての教員を養成するデンマークの教員養成方法ver1

文責:段畑実生(Mio Dambata)
2019年2月03日

1.はじめに

日本では2020年に教育改革が行われる。2020年の教育改革では、今までの知識や技能の習得から、学んだことを自分で「考え」、「表現し」、「判断していくこと」が求められる教育になる。一方通行だった授業は、グループワークや調査学習などを通して、生徒自身が主体的に参加する授業や学習へ変化し、そのため教員には新しくファシリテーターとしての役割が求められることになる。しかし、教員の卵である現在の学生は、旧来型の教育を受けてきており、新しい学びの方法を体感していない。経験のない者が教えることは困難であることを鑑みると、少なくとも教員養成過程において新しい教育方法を体感させることが不可欠である。では、経験のない者にどのように教育方法を学習させるのか。
本研究はファシリテーターとしての教員養成を実施するデンマーク、中でも伝統的な教員養成学校であるオレロップフリーレアスコーレ(The free teacher school Ollerup、Den frie Lærerskole Ollerup)に注目し、オレロップフリーレアスコーレでの教員養成方法について調査する。具体的には、授業視察やインタビュー・アンケート調査を通して、具体的な授業方法やマインドセットなどの可視化されていないコツにまで踏み込み調査を行う。本研究はデンマークにおける教員養成方法を調査することで、これから大きな変化を迎える日本の教育現場において、「教える側である指導者をどのように育成していくべきか」への示唆を与えるものと位置付けられる。

1.1研究背景と目的
日本では2020年に教育改革が行われる。文部科学省の「これからの学校の目指す方向」には、「生きる力の育成を基本とし、知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、子供たちが、自ら学び、自ら考える教育への転換を目指す。」とある。それに伴い教員の在り方にも変化が求められる。教員は知識や技術を教えるだけでなく、「それをどのように活かすのか」また、単に問題の答えを提示するだけでなく、「その答えをどう導くのか」といった視点が重要になる。したがって、教員は「生徒に答えを教える」というよりも、「生徒を答えに導く」ファシリテーターとしての役割が期待されることになる。しかし、現在の日本の教員養成の方法では生徒にそのような力をつけさせるのは難しいと考えられる。なぜなら、教育実習を除いては座学中心の授業が多く、また、プログラムを受講する世代は、改革前の暗記型学習を体験した世代であり、自らが体験していないためである。さらに、伏木(2009、116:2-7)は以下のように述べている。「日本の教員養成課程における教育方法には、他者と協同して取り組む課題グループワークを基本とするプロジェクト学習等があまり採用されていない実情を再認識することができる。受験体制にどっぷり浸かって個人競争を勝ち抜いてきた大学生に、子どもたち同士が学び合う学習によって獲得する 「学力」や、異質な者同士の交流により育まれる人間的な能力について真に理解させるためには、彼ら自身にそうした学び方を経験させることが必須であると考える。 」また、OECDが2013年に実施した国際教員指導環境調査(Teaching and Learning International Survey)によると、日本は「生徒の主体的な学びの引き出しに自信を持つ教員の割合」が他34の参加国における平均に比べ、突出して低い結果となった(図1参照)。

図1 :The OECD Teaching and Learning International Survey (TALIS) 2013 Results より筆者作成

●勉強ができると自信を待たせる
 Average_85.8
 Denmark_99.0
 Japan_17.6
●学習の価値を見出す手助け
 Average_80.7
 Denmark_96.6
 Japan_26.0
●生徒に対し良い質問ができる
 Average_87.4
 Denmark_96.3
 Japan_42.8
●関心を示さない生徒への動機付け
 Average_70.0
 Denmark_82.5
 Japan_21.9
●批判的思考を促す
 Average_80.3
 Denmark_92.8
 Japan_15.6

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