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ボディメイク vs パフォーマンスアップ

トレーニングの目的は、一般的にどのように捉えられているだろうか。
アスリートであれば、パフォーマンスの向上。
そうでなければボディメイクや健康というのが一般的だと思う。
目的が異なれば、手段も変わる。
両者は本来明確に分類されなければならない。
しかし、この部分への認知はまだかなり不十分な段階にあると感じる。


手段の変化の根拠になるのは、両者の前提条件である。

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■ウェイトトレーニングにおける違い

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重いウェイトを用いたトレーニングを例にとってみよう。
アスリートにとってのトレーニングは、間違いなく競技力を高めて試合でより良い結果を得るためであり、高める対象は競技スキルのベースになる”動き”である。
いくら筋力が高まって重いウェイトを持ち上げられても、パフォーマンスが高まらなければトレーニングは意味を成さない。
”重いウェイト”は、競技動作の向上のための『手段』でなければならないし、それが競技動作に繋がっていると論理的に説明できる必要がある。


競技動作に繋がっている:
ファクターが強化されればパフォーマンスが向上するという根拠を、競技の運動構造・バイオメカニクスなどの観点から説明がつくこと


対してボディメイクの場合は、動きよりも主に外見に重点が置かれる傾向にある。
そのため、そのトレーニングの負荷が動きにどのような影響を及ぼすかは考慮する必要がない。
外見的に変化を起こしたい部位にどのように刺激を加えるかが重要な課題となる。
トレーニングの負荷によってもっとも外見的に変化が生じやすい組織は筋肉であり、ゆえに筋肉がメインターゲットとなっている。
特にインナーマッスルと呼ばれる深部の筋群は、外見にはあまり直接的な影響を与えないため、ボディメイクを目的とした『手段』の体系ではあまり重視されてこなかった。
逆に深部筋群は精緻な動きや重心操作において非常に重要な役割を担うため、パフォーマンスアップ目的の手段としては非常に重要なファクターである。


パフォーマンスアップ:
インナーマッスル、アウターマッスルともに重要。
インナーとアウターのバランスや発揮タイミングなどもトレーニング対象に入る。
ボディメイク:
主にアウターマッスルが対象。負荷を与えると引き締まったり膨張したりするため外見に直接的・効率的に影響を与えられる。
インナーマッスルは重要視されにくい。



■時間要因

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また、時間というファクターにおいても両者には違いが存在する。
ここでの時間とは、効果を得るまでに要する期間という意味である。
アスリートにとっては、トレーニングは常に時間との戦いと言える。
次の試合、次の大会、今シーズン、決められた枠組みの中で必ず結果という成果を出さなければならない。
たとえ課題を克服するための期間であっても、試合があれば結果を出し続けることを求められる。

ボディメイクの場合は、もちろん外見を仕事にしている人にとってはアスリートと同様、時間的な条件はシビアなものとなるが、一般的には時間的な縛りは緩い。
外的な要因で”結果”を要求されるケースは少ないと言える。



■両者が混同されている現状

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目的が異なれば前提条件が異なる。
前提条件が異なれば手段も異なる。
だから手段はそういう前提条件を十分に考慮されて然るべきである。
しかし、現状はそうはなっていない。

パフォーマンスアップのためのものと、ボディメイクのためのものが混同されている。
ボディメイクトレーニングの指導者がアスリートにトレーニング指導をする場面を見たことがあるかもしれないが、明らかにボディメイク用のトレーニングをアスリートがやってしまっていたりしている。


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同じタイトル(例えば体幹トレーニング)であっても、目的・前提条件を踏まえてその方法を変えなければならない。
特にパフォーマンスアップすなわち”動き”を向上させる場合は、ボディメイク用トレーニングの中でもアウターマッスル系をやることでパフォーマンスが低下することまで起こり得るので注意が必要である。




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全てはパフォーマンスアップのために。




中野 崇 @nakanobodysync

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1980年生まれ
フィジカルコーチ・スポーツトレーナー・理学療法士
JARTA 代表
株式会社JARTA international 代表取締役
イタリアAPFトレーナー協会講師
イタリアプロラグビーFiammeOroコーチ
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う。
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/

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