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蕾は催花雨を越えて

「地方から地方に乗り継ぎなく行けるとはね。ラッキーガール」

途切れたアナウンスの隙間にお父さんがゆったり笑う。お母さんは搭乗券の皺を手のひらで熨してくれている。首から下げたキッズケータイがポヨンと鳴った。

「うそぉ、おじいちゃんもう向こうの空港に着いたって。わたしまだ出発してないのに」

「十歳が一人で来るんだもの。居ても立ってもいられないのよ」

ミントを一粒口に入れ、お土産と宿題でゴツゴツに角ばった水玉のリュックにしまう。検査場に並ぶ大人の列は小慣れた動きで流れていく。静岡行きは、一日一便。

去年初めて家族で帰省した時は飛行機を使わなかった。覚えているのは一号線の途中飛び込んできた、フロントガラスいっぱいの富士の青。

「じゃあ、お父さんお母さん行ってきます」

世界をやんわり包み込む雨空から、本日快晴と聞く空へ。

おじいちゃんおばあちゃん、待っていてね。一時間とちょっとで着いちゃうんだって。

すぐに会えるね。



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