カササギときらきら

「カササギと天の川の話がありますよね___」

「羊と鋼の森」の作中で主人公・外村は唐突にそう語り始める。七夕の夜、織姫と彦星が逢瀬するには天の川を渡る橋が必要だった。困る2人の前に現れた幾羽ものカササギは翼を広げ、2人を助けたという。外村はピアニストとピアノを繋ぐ調律という仕事を「カササギを1羽1羽集めてくるようなこと」と例えた。自らにできること、その意味や使命と向き合い外村がまた1歩進むのが印象的な場面だ。その例えも甘美なるものながら、私は夜空を舞うカササギを思い浮かべた。愛し合う2人のために翼を広げる鳥。紺碧の空に紛れる翼は、星の僅かな光を受けて煌めいている。

私がカササギという鳥を覚えたのは、遠い昔読んだファンタジー小説の中だ。フクロウたちの暮らす大木に、ひょうきんな行商人のカササギが登場した。その大きくて深い黒の体は光を受けて緑や黄色に鈍く艶めく。ツートンカラーに分かれた白はややくすんでいるようにも見えるが、彼は軽快に笑う。カササギはキラキラしたものを集めるのが好きなのさ、と装飾品を揺らす彼は、たしかマグという名だったような気がする。実際にカラスの仲間であるカササギは光り物を集める習性から「宝石泥棒」だなんて呼ばれるそうだ。

実のところ、その姿を目にしたことは無いのだけれど私はこの2つのイメージからカササギのことが好きになってしまった。カササギはわかりやすく美しい鳥ではないだろう。インコやオウムのように華やかで目を引く色も、小鳥のような囀りも持ち合わせていない。それでも誰かに翼を貸すような優しさとか、自分の使命を全うする気高さとか。美しくあろうとする強さ、みたいな物が勝手な想像だとしても感ぜられるのだ。

私は自分が自分らしく在ること、についてはことのほか悩んできた方だと思う。幼い頃からたくさんのレースとかフリルとかリボンが好きだった。カジュアルな流行り物ばかり着る姉や母の前で、そのスタイルは否定されたし、周囲の視線が辛いこともあった。つい最近だって、後輩に私のファッションスタイルを否定されて落ち込んでいた。そんな中でふと大好きなYouTuberの歌う言葉を思い出し、カラス__カササギに思いを馳せたのだった。


美しい羽根を着飾るカラスのように、傍から見ればちぐはぐかもしれない切実さが、生まれつき美しい貴族の富より、胸を打つ時もあると思いたい。

「美しく生きる or die」

毎日を美しく生きよう。私の思うままに、美しく。
でなければ、死のう。


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