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ホタルと枯れない花

「横恋慕(よこれんぼ)」は、既婚者や恋人のいる人に対して横合いから恋愛感情を持つこと。【Wikipediaより】


横恋慕という言葉を知った経緯は覚えていないが、多分30歳の頃なので2002〜3年のことだと思う。
ちょうどその頃、3度目の横恋慕をしていた。

普通は横恋慕なんて、そうそうしないものなのかもしれない。でも、不倫は横恋慕なのだとすれば、よくあることなのだろうか?
ぼくの場合は、既婚者ではなかったが、なんとなくお互いに親密になったところで、彼氏がいることを打ち明けられるというパターンだった。なので、最初っから横恋慕をするつもりなどなく、普通に恋愛関係になるかな?というところで横恋慕(浮気相手?)だと知ることになる。

最初は、大学に進学して横浜で生活を始めて半年くらい経った頃、バイト先のレンタルビデオ屋で一緒にバイトをしていた女の子と珍しく特に話しが合い、そのうち二人で遊びに行ったりするようになっていた。
しばらくして、彼がいることを打ち明けられた。ただ、あまり驚かなかった。なぜなら、その彼は同じバイト仲間だった。同じ空間にいればなんとなく気がついていたけれど、そのことをこちらから聞くようなことはなかったし、聞けるはずもなかった。いつかは、打ち明けられる日が来ることを知りながら、彼女の気が変わってぼくを選んでくれることを期待したりもしていた。しかし、何度も話しをしたが結局は彼の元へと戻っていった。
その後、ぼくが地元へ帰ってきてからも連絡は取り続けており、何度かはお互いが会いに行き来することもあった。それも30代になる頃には自然となくなっていった。

28〜9歳の頃、同じ会社の別拠点で働く女の子と仲良くなった。これは、その子の気持ちを汲み取れるほどの理解力がないのでわからないが、その子の方がかなり積極的にコンタクトを取ってきてくれた。
ぼくが配属されている拠点には、3〜4ヶ月くらい付き合って営業成績優秀な同僚へ乗り換えられた彼女がいたり、上司である女性社員に仕事が出来ない認定を受けていたため、ものすごく居心地の悪い思いをしていたのだが、その子のいる拠点へ用事があって行くと、笑顔で話しかけてきてくれるのでとても癒されていた。
しかし、その子にも彼氏がいたのだ。ぼくに興味を持ってくれる女の子は何故か彼氏がいるのだ。よくわからないが、ぼくには、ちょっと彼氏とうまくいっていない時なんかに相手にするのにちょうどいい雰囲気でも放っているのだろうか?
その子とも、ぼくがその会社を辞めてしばらくは連絡を取ったりしていたが、徐々にフェードアウトしていった。

そして、ハローワークの職業訓練でホームヘルパーの資格を取って、デイサービスに勤め始めた。3ヶ月遅れで同じヘルパー講座の1期後輩の女の子が入社してきた。行き帰りの地下鉄が同じでよく話をしながら一緒に通った。そして、徐々に二人の仲が接近し始めた。一緒に買い物へ行ったり、その子の地元へ遊びに行ったりしているうちに、その子の家へ行くようになった。ただ、家へ行くと言っても昼間の家族のいない時間だったり、夜になってからだったり。
夜は、もちろんその子の両親が家にいる。そこでその子から、庭をまわって両親の寝室の外で待っているように言われた。訳がわからないまま、物音を立てないようにそっと庭をまわって、両親の寝室だと教えられた部屋の窓の下で待っている。すると、窓が開き、その子が人差し指を唇に押し当てながら、入ってくるようにと手招きをする。ぼくは窓をよじ登って寝室へ入ると、そのまま部屋を出たところにある階段で2階へ連れて行かれる。そして、その子の部屋へ入っていった。
その子には、親姉妹も知っている、ヘルパー講座で一緒だった彼氏がいたのだった。

そんな、3度目の横恋慕をしていた頃に、なんとなくネットで「横恋慕」を検索してみた。その時にヒットしたのが、当時あった「hot express 」という音楽サイトでの、福岡出身の男女の音楽ユニット【Local Bus(ローカルバス)】のインタビューだった。「8 trees mountain」というミニアルバムの発売に際してのインタビューの中で、ヴォーカルの野見山睦未さんが収録曲『枯れない花』について答えている中にキーワードとして「横恋慕」が出てきた。
とても気になったのですぐにCDを購入して聴いてみた。そしたらとても切ない歌詞となんとも言えぬ浮遊感漂うサウンドに心を奪われた。

自分の経験とシンクロする歌詞。そして印象的なギターを弾いているのは、あの鈴木茂さん!イントロとアウトロに左右に挿入されている野見山さんのつぶやきの断片が、恋に悩む頭の中で渦巻く混乱をうまく表現している。歌メロに被さるコーラスもすごく考えられて重ねられていて気分を高揚させるし、永嶋圭司さんのアレンジも緻密で素晴らしい。何より、野見山さんとぼくの誕生日が同じという偶然!傷心していた時期に偶然巡り会えた一曲。今でも聴くとその時代を思い出す。


『枯れない花』 Local Bus

夢から醒めない・・・ひとりで
下る坂道 散る花に
「関係ない、関係ない」頭振ってても・・・消えない

分かってよ君が好きなんだ
最初はただの友だちでも
風に吹かれて好きになって
分かってる・・・横恋慕・・・でも好きなんだ

朝まで待てない・・・今は
待てど暮らせど答えない いつでも
会えるのなら
夢なら醒めてしまえば
君とはただの友だちだ
「関係ないよ・・・」切なくて・・・苦しい

いつまでこのままでいるんだ
失って後悔はしたくない
誰か傷つけていいさ
君がいるなら最高の気分
なぜだ?早く気付いてよ
顔を見るたび相談しないで
たとえ仲間を捨てても
嘘だ!僕なんで!?最低の気分

体に毒?
もしも天気みたいにまた
君の気持ちが変われば
もしも明日に希望があるなら
これでいいさ

分かってよ君が好きなんだ
今は苦しくても会いたい
君にあうたび好きになってく
わかってる・・・横恋慕・・・でも好きなんだ

夢から醒めない

作詞作曲:野見山睦未 
「8 trees mountain」収録
BMGファンハウス BVCR-18029 2003年6月4日発売
℗ 2003 BMG FUNHOUSE, INC.


もう一曲忘れられない曲がある。
中山忍さんの『ホタル』だ。
同世代の方なら知っている方もいらっしゃると思うが、中山美穂さんの妹で、現在でもドラマなどお芝居で活躍されている女優さんだ。
当時は、中山美穂さんの妹ということでデビューされ、知名度はお姉さんには及ばなかったが、CBS/SONYではかなりプッシュされていたアイドルだった。
しかし、歌の方は「お世辞にも上手とは言えない」と言った表現では足りないほど下手だった。現在のように、音程もクリック一つで修正できる時代ではないので、CDにも外した音程のまま記録される(しかし、か細い声で歌われる彼女の歌は、プロフェッショナルな歌手が歌うよりも、もっと身近に感じられるそんな歌で、何よりも素晴らしい楽曲に恵まれ、一生懸命に歌う彼女の健気な姿はとても好感が持てるものでした。そんな中山忍さんとは同学年で、ちょうど大学受験の時期に彼女が大学のAO入試で合格したとの記事を読み、おそらくA大学だと推測できたのでぼくもA大学を受験しようと願書まで提出したことは内緒🤫)。
そんな中山忍さんの歌唱力を逆転の発想で、「歌わせない」ことで誕生したのがこの『ホタル』という曲だった。1990年当時、TMネットワークでブレイクしていた小室哲哉氏が作曲、作詞は翌年フジテレビの大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』で脚本を手がける前の坂元裕二氏。この素晴らしい組み合わせで生まれたのが、ポエトリーリーディングの名曲『ホタル』(ちなみにアルバムではこの『ホタル』の次に、男性側からの視点で描かれたアンサーソング『僕がむかえにいくよ』が同じ坂元裕二氏と小室哲哉氏の作詞・作曲で収録されている)。
この曲は、歌詞カードに詞は記載されていない。なので、中山忍さん演じる女の子の独白を集中して聴き取る。男の子の横恋慕、女の子は二股みたいな関係。とても切ない。


『ホタル』 中山忍

昨日の夜 窓の外に
蛍が飛んでるのを見た
ちょっとでも目を逸らしたりすると
見失ってしまいそうな
そんな すごく 小さい 小さい蛍
ずいぶん長い間見てたんだけど
朝になって 空の色が薄くなってくると
いつの間にか見えなくなって
明るいところでは見えないものがあるね
そんなふうにいろんなこと考えてて
できるだけ悲しくない別れ方とか

だから… 今まで彼がいること黙ってたのも
いけないことだってわかってたけど
言えなかったから
壊したくないものがあるって思ってたから
ごめんなさい 好きになんかならなきゃよかったね

好き 好きだけど… 彼とは別れられない
片思いのままにしておけばよかったんだよね
でも 放っておけなかった 

ねえ 知ってる?
忘れることと 忘れないこと どっちが難しいのかな?
これからいろんなことがあって
それでもまだこれからがあるなんて
それでもまだ一つ一つ積み重ねていくなんて

誰が教えてくれるのかな
忘れてもいいことと忘れちゃいけないことの境界線
初めて会った時よりも2度目に会えた時の気持ちは?
私が持っているレコード あなたも全部持ってた時のことは?
キスした時 地面から10㎝浮かんでた踵のことは?
一番落ち込んでいる時 掛かってきた電話のベルの音は?
風邪引いて行けなかった2枚のチケットの行き先は?
みんな みんな

ねえ 心に入り切れなくなった思い出はどこにいくの?

終わるけど 終わるんだけど
あの日たった一言で始まった恋なら
今日たった一言で終わる恋を信じてもいいと思う

あっ 泣きそう 
どうしよう 泣きそう どうしよう
こんなに近くで人の涙見たの初めて

昨日は今日になって
今日は明日になって
いつまでこんなふうにしてられるのかな
こんなふうにしてどんなふうになっていくのかな

今日さよならした私
やっぱり上手に生きていくのって難しい
だから私 嬉しい時に泣いて 悲しい時に笑う そんな人になる
ほんの0.3秒のキスが永遠なら もう怖いことは何もない
もう2度と会えなくても

作詞:坂元裕二 作曲:小室哲哉
「箱入り娘〜このままじゃいられないわ〜」収録
CBS/SONY  CSCL 1481 1990年8月1日発売
℗ 1990 CBS/Sony Group Inc.
©1990 CBS/Sony Group Inc.

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