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詩集

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記事一覧

空(くう)

何もないところから来て
何もないところへ向かう僕らは
ありとあらゆる可能性を信じて
何度も出会い
何度も別れて
真っ白いキャンバスが
だんだん汚れていく
想像していた世界が
音を立てて崩れていく
まるで迷路のように
メチャクチャにこんがらがった世界で
きみの声だけがまっすぐに届く
僕はその声を目指して
まっすぐに手を伸ばした

生きてていいの

《ねえ》

ん?なに?

《私さ、生きてていいの?》

いいよ

《ほんとに?》

うん

《でも、不安だよ》

きみが誰であろうと、なにをしようと、人の道を外そうが誰かに迷惑をかけようがきみはきみのままでいい

《うん》

だから、生きてていいんだよ。生きなよ

《わかった。ありがと》

さぁ、行っておいで。愛する人のところへ

《うん!》

Wonderful World

おれと一緒にいたらキミは不幸になる

あなたとだったら不幸になってもかまわない

じゃあ一緒に地獄に落ちてくれる?

あなたがそう望むなら

この世界はとても美しい

誰かと誰かが愛し合うのなら

ブリリアント

色々な顔を持つあなた
そのどれもが違う顔をしているけれど
どの顔も美しい

その顔のどれかひとつでも
ぼくのことを見てくれたらいいな
職人が磨いた宝石みたいに
裏も表もキラキラ輝いている

のぞみ

ただいまを言う相手がいなくなった
おかえりを言う相手もいなくなった
家の中がこんなに静かだなんて
こんな朝が来るなんて
あの時は思いもしなかった

何も考えない空白の日々
余白に寄り添う時間
わずかな希望と
小さなのぞみ

悲しみを煙に変えて
今日も夜空に吐き出している

造花は笑う

ぼくが君だと思っていたものは
ぼくが作った幻影だった
その黒くて美しい髪も
スラリと長い手足も
愛らしい唇も
ぼくが愛した幻だった
抱きしめたら棘が刺さって
地だらけの手を見てぼくは目が覚めた
最初から誰もいなかった
最初から愛はなかった
ただ、薔薇の花がクスクス笑っていた

あなたが好きよ
薔薇は言った
さようなら
ぼくは別れを告げた

行かなきゃ
ぼくを待ってる人がいる
どこの誰だか知らないけ

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いのり

元気にしてるかな?
困ってないかな?
悲しんでないかな?

その人のことを想い
注意を向ける

会うだけが恋愛ではないよね

酔いどれムーン

月はいつも酔っ払っているんだ

太陽の光を浴びるように飲んでさ

ギターを弾いたり、フルートを吹いたり

時には地球にいたずらをしたり

とにかく憎めないヤツさ

でも時々、調子に乗って飲みすぎて

気分が悪くなって隠れちまう

地球の連中はそれを新月と呼ぶのさ

詩人へ

おれが詩人を愛しているのは
きっとおれが詩人になれなかったせいだ
この素敵な世界を詩的な言葉でうめつくして
この悲しい世界を15文字で表現できる詩人になりたかった
対話と物語の境い目で生きるすべての詩人に幸あれ

ふたり

であい
わかれ
めぐる
いのち
きみに
ふれて
ことば
よりも
さきに
うごく
こころ
ハート
アート
ライフ
目と目
手と手
ふたり
いつか
ここで
またね。

クロワッサン

クロワッサン

焼きたての
やさしい香りに包まれて
今日はクロワッサンを食べよう
固いパンはいらない
やわらかい
黄金色の三日月
ベランダで
コーヒーを飲みながら
あのメロディーを口ずさむ

Stay With Me

ふと、あの人は無事だろうか
混沌と化した世界で
純粋な気持ちが芽生える
あなたがいない世界なんて
どうしようもなく虚無で
無意味で、灰色で
味気がない
あなたと手を繋いで森の中を歩きたい
ぼくはその温もりだけで
きっと永遠に生きていける

あさがお

まだ夏の暑さが残る早朝に
あなたは息をひきとった
会いに行けなったこと
後悔しながら空を見る
僕の身に起きた不幸
本当はあなたに話したかった
聞いてほしかった
でも言えなかった
あなたを脅かせたくなくて
最後まで気丈に生きたあなたは
周りに迷惑をかけまいと
体はボロボロのはずなのに
そんな風に90年も生きて

為せば成る、とあなたはよく言った
為さねば成らぬ、とあなたはよく言った
やらずに後悔す

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「あ」

ありがとう
愛してる
I love you
会いたい
あなた
「あ」から始まる
素敵な言葉