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JC-HITSの歩み ~日本版HITS構想~

みなさん、こんにちは。
ジャパンケーブルキャスト株式会社(JCC)営業本部の中川です。
さて今回は、JCCの主力サービス『JC-HITS』の歩みについて紹介したいと思います。


日本版HITS構想

さて、そもそも「HITS」とはどういう意味でしょうか。
「HITS」とは「Headend In The Sky」の略で、映像信号等を人工衛星経由でケーブルテレビ事業者に送り、あたかもケーブルテレビ事業者の主設備(Headend)が空の上にあるかのような仕組みの事です。

1990年代後半、当時のアメリカでは、ケーブルテレビ事業者が受信したいチャンネルだけをまとめて取りに行く「Operator’s HITS」と、コンテンツに強い会社が送りたいチャンネルだけをまとめて送る「Supplier’s HITS」の二つの種類のHITSが主流でした。

そのような状況を見てきた、あるケーブルテレビ関係者と衛星会社の社員が、Operator側でもなくSupplier側でもない、中立的な「日本版HITS」の検討を始めました。

そして2000年、日本版HITS構想を実現すべく、日本を代表する2大メーカー、業界大手 MSO(※1)、衛星会社、衛星放送プラットフォーム事業者などが参画し、企画会社を設立しましたが、残念ながら設立わずかで解散してしまいました。

※1 MSO…複数のケーブルテレビ事業者を統括して運営している事業者の総称

JC-HITSサービス開始

ところが、HITSを諦めきれなかった人たちの思いは消えませんでした。
そして、日本版HITS事業を行う会社として2001年4月に1社目が設立され、2002年10月、2社目としてJCCが衛星会社の100%子会社として設立されます。

設立後、まずはどのようなサービスにするか検討しました。
衛星からの高効率なデータ伝送をベースとしつつ、ケーブルテレビ事業者、そして視聴者が喜んでくれるサービスである必要があります。
JCCでは以下の2つをポイントとしてサービスを作り上げました。

・CAS(※2)設備をASP(※3)型にし、設備投資や運用負荷を低減
・PPV(※4)方式でのヒットコンテンツ(付加価値)提供

※2 CAS…限定受信システム(Conditional Access System)。特定の条件を満たす人が放送を受信できるようにするシステム。
※3 ASP…Application Service Provider(アプリケーション サービス プロバイダ)の略。インターネット等のネットワークを通じて、アプリケーションソフトウェアや付随するサービスをユーザーに提供する仕組み。
※4 PPV…ペイ・パー・ビュー(Pay Per View)の略。テレビや動画配信サービスなどにおいて、有料コンテンツに料金を支払って視聴するサービス形態。

PPVサービス名称は「エラボ」、当時はたくさんの方にご利用いただきました

当時このコンセプトは非常に好評で、JCCの「JC-HITS」は、日本(J)のケーブルテレビ(C)事業者向けのHITS事業として、2004年4月順調なサービス開始を迎えることができました。

なお、最初に名称を「J-HITS」で商標登録をしようとしましたが、日本音楽であるJ-POPと誤解されるため、検討をしなおしたという裏話もあります。

会社の独立、そして「地域が輝く」お手伝いを

そんな中、親会社の衛星会社が衛星放送会社と合併することとなります。
合併により、ケーブルテレビ事業者は衛星放送プラットフォーム事業者と競合関係になるため、対策が必要でした。
そこで、衛星会社との良好な関係は維持しつつ、ケーブルテレビ事業者とより深く連携するため、2006年3月、JCCは親会社の衛星会社から独立することになりました。
これをきっかけに、JCCでは、多チャンネル配信はもちろんのこと、ケーブルテレビ事業者、そしてその先視聴者がさらに喜んでくれる事はなんだろう?と真剣に向き合い、地域に密着したネットワークとして地域密着度の高い情報提供に特化したチャンネルである、コミュニティチャンネル(コミチャン)との連携に力を入れることにしました。

2007年5月、まず、コミチャン向けにASP型データ放送サービス『JC-data』を開始しました。
コミチャンではデータ放送の常時表示が可能であることから、コミチャンをつければ天気、ニュース、行政情報等の情報を簡単に確認ができ、かつ災害時にも効果的に活用いただけます。
開始当時、まずは日常的にデータ放送を見てもらうということが重要だったため、視聴者が楽しめるコンテンツをJCCが独自に調達し、JC-dataを採用いたただいたケーブルテレビ事業者へ無料で提供を行うことにしました。
当時どのようなことを意識して行ってきたかは、『JC-data』の歩みについても記事にまとめておりますので、ぜひあわせてご覧ください。

ぜひご覧ください。


続いて2009年4月、全国のコミチャン統合チャンネルとして『チャンネル700』を開始します。

名称から受ける先入観をなくし、皆が使いやすいようにという思いから名称が決まりました。

24時間コミチャンでの利用が可能なこのチャンネルは、無料で提供している多チャンネルの一つですが、今までケーブルテレビエリア内でのみ配信していた番組を、全国のコミチャンにつなげるツールとしての役割も持っています。
各ケーブルテレビ事業者が配信しているコミチャンを通して、全国の花火やお祭りを見られるようになったことは本当に嬉しかったです。

現在でも全国の花火・お祭りを中継し、ご好評いただいています!

その他、ケーブルテレビ事業者が利益をだすビジネスモデル検討のため、コミチャン専門の広告代理事業「ケーブルADコネクション」などの立ち上げを行いました。
2008年のリーマンショックを受け、撤退してしまいましたが、この活動はケーブルテレビ事業者、コミチャンの素晴らしさとともに歩めた第一歩になったと感じています。

JC-HOGへ ~HD配信と地上への移行~

一方、その間『JC-HITS』はどうだったでしょうか。
2009年8月、JCCでは念願のHDサービスの提供を機に、衛星に代わり光ファイバー網を利用し、地上光回線により放送サービスを配信する形態である、HOG(Headend On the Ground)伝送を開始します。
名称は日本版HITS構想開始当時の思いを引き継ぎ、同じ名称であるJC-HITSを継続しました。
当時はまだ光ファイバー網が高価であり、繋がっていない地域もあったため、通信キャリア会社各社やケーブルテレビ事業者、行政の通信網をお借りして、相互接続するのに技術部門が四苦八苦していたのを思い出します。

そして、皆さまからの多大なご協力のお陰で2011年4月、『JC-HITS』を衛星配信サービスから光回線による地上配信サービスへ完全移行することができました。
これにより、天候等に左右されない安定した多チャンネル配信サービスの提供が可能になりました。

その後、JCCでは通信キャリア系の会社との資本業務提携を行い、インターネットサービスの提供、IP放送の検討・実証実験などを実施。
2017年には株式会社ブロードバンドタワー(BBT)の子会社となり、近年ではJC-HITSのACAS対応・4K対応を完了し、現在に至ります。

おわりに

この業界は、若者のテレビ離れ、OTT(※5)の台頭による多チャンネル放送の苦戦、ACAS方式(※6)・4K対応のための負担増等、厳しい状況にあるの
は間違いありません。

※5 OTT…Over The Topの略。インターネット回線を通じてコンテンツを配信するストリーミングサービスを指す。
※6 ACAS…新4K/8K衛星放送(4K/8K放送)で使われるCAS方式。

しかし、ケーブルテレビ事業者には、コミチャンを核とした地域住民との深い絆があり、インターネットの提供も含めた双方向環境も提供できます。
JCCはJC-HITSでの多チャンネル配信はもちろんですが、コミチャンとの連携、またグループ力を活かしたインターネットバックボーンの提供、IP放送、OTT連携など、まだまだやれることがたくさんあると感じています。
今後も皆様と歩みを止めず走っていきたいと思いますので、ご支援のほど、よろしくお願いします。


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