発揮揚々

相撲で力士同士が見合っている時、行司は力士に向かって色々なことを言っているらしい。
「かまえて」、「見合わせて」、「油断なく見合って」、「まだまだ」などと声を掛け、制限時間になると「時間です。手をついて」、「待ったなし」と声を高める。
制限時間で行司が出す声はよく聞こえるので知っていたが、土俵上で力士がしゃがんで見合う度に、声を掛けてる事は知らなかった。ここで挙げた他にも、結構色々と言うらしい。
ひょっとしたら、こんなことも言っているのかもしれない。

・「高校卒業の時、あの子に告白しなかった事、本当に後悔してないか?」
高校生時代に告白できずに思いを残した力士の心を引き裂く。返す刀で、告白して振られた力士の心も引き裂く。

・「おい、お前ら。前から10列目に座っている娘、凄く可愛いいぞ」
力士は二人揃って客席を見てその娘を探し、気合いを入れる。いつもより力も入る。しかし、変に張り切ってマワシが落ちないように注意が必要だ。

・「おいおい、お前ら、何でちょんまげ結ってんだよ。おかしいだろ」
いや、まあ、考えてみると確かにおかしい気もする。しかし行司には言われたくない。

・「ネロとパトラッシュは、誰もいない大聖堂で静かに目を閉じるのだった」
フランダースの犬のラストだ。力士の目から流れ落ちる涙。涙で霞んで相手が見えない。お客さんも貰い涙。相撲どころではない。

今まで相撲の脇役としか思っていなかった行司の存在、本当の主役は行司なのかもしれない。

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