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職場の意味 「居場所」の感覚が力に ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.08)

ご依頼を受けて、ちょこちょこ書いていたもののアーカイブをこちらでしておくことにしました。今日は日経産業新聞の5回目です。一昨年の暮れくらいから、6~7名でリレー連載のようなものを書いてます。2カ月に1回くらい担当がまわってきます。各内容は広い意味でHRに関係があれば何でもOK。今回は居場所と持ち場についてです。PLACEとSPACEの話でもあり、星の王子様の話でもあります。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.08)
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職場の意味 「居場所」の感覚が力に
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オフィス以外で業務を行う「テレワーク」に取り組む企業が増えているようです。介護等の制約のある社員への配慮のほか、集中して業務に取り組む環境の確保や創造的に業務に取り組む機会の創出など、その狙いは様々です。

国も2020年の東京五輪・パラリンピック開催時の交通集中の緩和施策などとしてテレワークに着目しています。今年は開会式が開催される7月24日の週を「テレワーク・デイズ」と名付け、1000を超える企業・団体を巻き込む推進運動を展開しました。

シェアオフィス、テレビ会議システム、チャットシステム、セキュリティシステムなどテレワークを支える仕組みづくりの周辺には、新たなビジネスチャンスも生まれています。

未来にはどこでも仕事ができる世界が広がっているかにみえます。物理的なオフィスは不要になり、「会社」というものがバーチャルなつながりに変わるという見立ても成り立ちます。しかし、これとはちょっと違う流れも進行中です。

それはオフィス改革です。四角四面なオフィスレイアウトを見直し、ゆらぎと遊び感のあるオフィスが出現しています。社員同士の交流を促進し、一人ひとりの集中度を高め、結果として創造性と生産性を高めていこうという動きです。オフィスは不要になるのか、より大切になっていくのか。

ここで「職場」という言葉について考えてみましょう。私達が日々働く「職場」のことです。この「職場」の「場」という言葉には、2つの側面があります。1つは「Space」。つまり、単なる物理的な空間としての「場」です。そしてもう1つが「Place」です。単なる物理的な空間を超えた概念としての「場」です。

「星の王子様」の話をご存知でしょうか。地球にただ1人降り立った王子は、砂漠で一匹のキツネと出会います。最初は世界中に数え切れないほどいる単なる一匹に過ぎませんでしたが、王子が飼いならすことにより、そのキツネは王子にとってかけがえのない存在になります。

これと同じようなことが「職場」にもいえるのではないかと思います。単なる空間としての「Space」であった「職場」が、1人ひとりの社員にとって世界で1つの大切な「Place」になるのです。私達が働く「場」には、ただの空間以上の何かがあります。それは主に働く仲間からくるものでしょう。

自分の職場が「Space」から「Place」に変わると、そこは自分にとっての大切な「居場所」になります。人が「居場所」を持つことは大切です。人はしつかりとした「居場所」を持つことにより、自己肯定感と自己効力感を持つことができるようになります。この2つは働くうえでも生きていくうえでも、とても大切なものです。

「退職する理由は特にないんだけど、残る理由がもうないから退職する」という若手が世の中では少なくないと聞きます。本当の「居場所」感を持つことは、「残る理由」をもつことにもつながるでしょう。

職場を「Space」ではなく「Place」にする。単なる空間ではなく、自分にとって大切な働く場にする、テレワークの推進と並行して、職場の重要性も同時に問われているるように感じています。


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