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「CC BY-NC-ND」って何の呪文? オープンデータライセンスやクリエイティブ・コモンズまるわかり!

近年「データ」が私たちの社会を動かす重要な要素となってきました。この波に乗って、オープンデータの利用が急速に拡大しています。

オープンデータとは、簡単に言えば「誰でもアクセスして利用でき、ルールのもとで二次利用もできるデータ」のことです。ただ、オープンデータにも様々な種類があることをご存知でしょうか?
例えば、商用利用できるオープンデータもあれば、できないものもあります。加工が許されているものもあれば、加工できないものもあるのです。そういったオープンデータの利用ルールや条件を定めた「オープンデータライセンス」の基本を、一緒に学んでいきましょう。

オープンデータライセンスの種類

オープンデータの利用や配布を規制する枠組み「オープンデータライセンス」には、いくつかの種類があります。以下に、主要なオープンデータライセンスとその特性を挙げてみます。

パブリックドメイン

パブリックドメインのデータとは「誰のものでもなく自由に使える著作物や発明」です。ちょっと小難しく表現すると「知的財産権が放棄されている状態」をパブリックドメインと言います。パブリック・ドメインのデータは誰でも自由に、権利表記なしで使用できます。

例えば、著作権で保護される期間を過ぎた作品や、法律的に著作権の存在が認められないものなどが、パブリック・ドメインに含まれます。日本の国内法では、出願から20年以上が経過した特許、著作者の死後50年経過した著作物などが対象です。ただし国によって知的財産権が保護される期間は異なる点に注意が必要です。

クリエイティブ・コモンズ (CC)ライセンス

クリエイティブ・コモンズは、オープンデータのほか、音楽や写真、イラスト、映像、文章などあらゆる創作物にも適用できるライセンスです。以下に、いくつかの主要なCCライセンスとその特性を説明します。

■ CC0 (パブリックドメイン指定)

CC0は、データや作品の著作権や、著作隣接権などの関連する権利を放棄し、パブリックドメインに置くことを宣言するライセンスです。

利用者は一切の制約を受けず、権利表記なしで、データを自由に利用したり改変したりできます。

■「CC」の後ろにある「BY」「NC」「ND」「SA」って何?

クリエイティブ・コモンズライセンスには「BY(表示)」「NC(非営利)」「ND(改変禁止)」「SA(継承)」の4種類の条件が用意されており、データや創作物の作者はその4つから自分が設定したいものをひとつまたは複数個セレクトして付与します。いくつかの組み合わせを以下に記します。

【CC BY (表示)】
原作者のクレジット(原作者氏名、作品タイトルなど)を表記しさえすれば、自由に利用・改変できる
のがCC-BYライセンスです。
クリエイティブ・コモンズライセンスには1.0から4.0まで(2023/9/7現在)のバージョンがあり、バージョンによって利用者が表記すべき内容が異なります。表記内容については、クリエイティブ・コモンズの公式Wikiにて解説されています。

【CC BY-NC (表示 - 非営利)】
原作のクレジット表記
をした上で、「非営利目的であれば」データの利用・改変が可能なライセンス。つまり、CC-BY-NCが付与されたデータや作品は、営利目的での利用はできません。

【CC BY-ND (表示 - 改変禁止)】
CC BY-NDライセンスの付与されたデータは、原形のままでのみ利用が許可されます。データの改変はできません。また、クレジット表記も必要です。

【CC BY-SA (表示 - 継承)】
CC BY-SAライセンスは原作のクレジット表記をした上でデータの利用・改変が可能ですが、改変した新しい作品も「同じCC BY-SAライセンスを継承して公開すること」が求められます。

Open Database License (ODbL)

ODbLは、オープンナレッジ財団が提供する、データベースを自由に共有、改変、利用できるようにするための継承ライセンス契約です。ODbLは同財団が運営するOpen Data Commonsの一環として提供されています。ODbLはコピーレフトの原則に基づいており、データベースを利用する場合は同じライセンスを適用しなければなりません。

以下、Open Data Handbook “Open Database Licence”の記述を引用・翻訳いたします。

オープン・データベース・ライセンスは、著作権そのものだけでなく、「データベースの権利」(著作権を参照)もカバーする、データのためのオープンなライセンスを作ろうとする試みである。これは、データの再利用者に契約上の義務を課すことで成り立つ。残念ながら、契約法は著作権法とは根本的に異なる。著作権は著作物に本来備わっているものであり、その作品の下流の利用者を拘束するのに対し、契約は契約の当事者を拘束するだけであり、のちに再公開されたデータの再利用者には何の効力もないからだ。それにもかかわらず、ODbLは依然として有用であり、データに特化したオープンライセンスを作成する試みも他に行われている。

https://opendatahandbook.org/glossary/en/terms/odbl/(編集部による翻訳)

ETALAB ライセンス 

ETALAB(エタラブ)は2011年に発足したフランス政府直下のオープンデータ利用推進組織です。法的・人的・商業的な側面からフランス国内のオープンデータの利活用を促進することを目指し、「etalab-2.0」ライセンスを提供しています。このライセンスは出典の明記を条件として情報の複製・改変・配布・商用利用を認めています。

またこのライセンスは出典の明記を最低限の条件とする無償ライセンスと互換性を持ち、特にバージョン1.0の時点ではオープン・ガバメント・ライセンス(OGL)、CC-BY、オープンナレッジ財団の「オープン・データ・コモンズ・アトリビューション(ODC-BY)」との互換性を持っていました。

出典:https://www.etalab.gouv.fr/wp-content/uploads/2018/11/open-licence.pdf
https://www2.vled.or.jp/archives/vled/odpc-archive/committee/docs/20130315_s3_datagov.pdf

オープンデータライセンス活用のメリット

オープンデータライセンスが活用され、オープンデータが積極的に公開されることには多くのメリットがあります。データへのアクセスと利用の門戸を開くことで、イノベーションと透明性が促されるからです。以下に、いくつかの主要なメリットを詳しく説明します。

透明性と信頼性の向上

オープンデータライセンスは、データのソースを明確にすることで、そのデータの透明性と信頼性を向上させます。

これは公共政策や研究プロジェクトにおいては、特に重要なメリットになります。

イノベーションとコラボレーションの促進

誰もがアクセスできるオープンデータはその利用ハードルが低いため、新しいビジネスモデルやサービス・プロダクトの開発に活用しやすく、結果としてイノベーションを生みやすいのが特長です。

また、異なる組織やコミュニティが協力してデータを利用したソリューションを共同開発しやすい、つまりコラボレーションが促進されることも、オープンデータのメリットです。

教育や研究への利用

オープンデータは、教育・学術研究領域の進歩を助けます。研究者や学生は、オープンデータライセンスのもとで公開されているデータセットにアクセスすることで、研究の素材や教育リソースを自由に活用できるためです。

また、研究結果にオープンデータが用いられている場合、ほかの研究者による研究内容の検証も容易になり、学術的透明性や再現性も向上します。もちろん、高価なデータセットの購入やサブスクリプションコストを削減できるというメリットもあります。

行政および公共部門の効率向上

オープンデータを活用することで、行政や公共部門はリソースの配分を最適化しやすくなり、サービス提供の効率を向上させることが可能です。

また、行政側がオープンデータを公開することで政策や計画が可視化され、市民が政府や自治体の計画に参加しやすくなり、より効果的な公共サービスの開発につながるというメリットもあります。

オープンデータライセンスの注意点

データのライセンスを選ぶ際には、さまざまな点を考慮する必要があります。

目的の明確化

データの使用目的を明確に理解することは、適切なライセンスの選定に不可欠です。たとえば「クリエイティブ・コモンズライセンス」をデータに適用する場合、研究・教育目的の使用を想定しているか、商用利用目的の使用を想定しているかどうかなどで、選択するべきライセンスが変わってきます。

互換性

選択するライセンスが他のライセンスと互換性があるかどうかを確認します。これは、異なるライセンスのデータを組み合わせるプロジェクトにおいて特に重要です。データベースをオープンデータとして公開する場合には、保有するデータに単一のライセンスが付与されているのか、それとも異なるライセンスの付与された複数のデータがあるのか等を確認し、適切な表示を行わなければなりません。

コミュニティとの協力

可能な限り広範なコミュニティと協力することを検討し、できるだけ広い範囲の権利を再利用者に保証するライセンスを選ぶことを推奨します。これは、データの利用と再利用を促進し、データエコシステムを構築するのに役立つからです。

オープンデータライセンスの活用事例

一般財団法人さっぽろ産業振興財団が2017年に設立した「札幌市ICT活用プラットフォーム DATA-SMART CITY SAPPORO」は、官民によるオープンデータの利活用を推進するべくデータカタログの作成やデータ可視化による課題の立案、そしてオープンデータを利用したハッカソン等に取り組んでいます。

「DATA-SMART CITY SAPPORO」上のデータはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとで提供されており、表示されているライセンスの条項に従ってデータを再利用することを促しています。

まとめ

データライセンスは、データの使用や共有を規定する重要なツールです。オープンデータの利用においても、各データのライセンスの種類とその特性を理解しておくことが、最大限有効活用につながるでしょう。

弊社が運営するデータマーケットプレイス「JDEX」では、現在8種類のオープンデータライセンスをご用意しており、お好きなライセンスでオープンデータを公開していただけます。

弊社も「CC BY-NC-ND 4.0」オープンデータ「新型コロナウイルス感染症ファクトシートver.4」を公開しているので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

https://www.jdex.jp/members/products/data-offerings/37f9faf2945c48f69f2f5d17eaccda9f/view

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