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花の還るところ(40句)

近作40句です。
仮名遣、文語/口語等、意図があってしています。

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 花の還るところ

          丸田洋渡


白色の鷲がここから居なくなる

蝶にあるたましいと同じ構造

花薺まはりあやふき喩の平衡

子どもと大人にぶつかられる日

如月菜あやまるときの手は横に

遡ること多くなりねこやなぎ

妹がいる表側春の陸

片栗の花やおんぶに足動かす

記憶とは濡れやまぬもの黄水仙

映画のなかは死にやすく紫木蓮

鳥雲に深慮はあおき湯のごとし


改装のなかの彫刻春の雹

朧夜の水にかさなる動名詞

鐘朧また同じ木がいくつかある

翻訳の木の中にいて春の波

木と僕を分けるものから考える

雪柳火は飛ぶように裏返る

観潮は鳥居くぐっているように

月古りてゆく春の高鳴るテニス

海にまつわる本を辿ってつばくらめ

魚から海を剥奪して捌く

長調を聞くまでは曇っていた

桜ふるバドミントンは夕方まで

首逸れて並ぶ自転車さくらの木

飛行機が桜に入りゆっくり出る

アネモネや計って容れる米二合


友の死や影まで光るチューリップ

添へる人抛る人ゐて花の葬

少年が花のうしろにばかりいる

風長く花は昨日を咲いている

残したきものの冷たさ鳥曇

降りやまぬ夜の予知やまなしの花

突きぬけて光は曇る金盞花

清明や鳥語の盛りあがるところ

祭から町が終わっていた

断章に差しかかり山査子の花

崖にきて思いおこす一つの文章

丘に来てまるごと泛かびくる答

歌は歌る歌の歌ひ歌る歌

花は、還る

 

 

2019/04/20.

 

(おしらせ)

 僕が短歌で参加しているところで、これからもネプリを出していく予定ですのでぜひ良ければ印刷等よろしくおねがいします。俳句も短歌も全力で頑張っています。

・第三滑走路(https://twitter.com/3kassoro?s=09)

 ここよりも遠いところへ行くために昨日のことをひそひそ花す

 あらゆる文章をもってしても私から零れゆくものたちはもう/「めくるめく花」(第三滑走路5号)


・山梨学生短歌会(https://twitter.com/nashitan_y?s=09)

 天丼のボタンを押せば小春日の鶫のように券の降りくる

 君といる日向の日々をいとおしむ愛とは日曜日と日曜日/「日曜日と日曜日」(な紙vol.2)

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