見出し画像

とても素敵な、わけがないだろ

白い珊瑚の亡骸のような、祖母だった、祖母を形成していたそれをみて、にんげんの正体はこんなものなのかと思うことしかできませんでした。ミニストップがない所為でハロハロが食べられない県の片隅で執り行われた葬式は、春なのに恐ろしいほど寒くて、手にしていた数珠が気持ち悪くて、わたしだけ泣いていなくて、わたしはただ作法を学ばなければということばかり考えて母を真似て焼香をしました。
去年の春の話です。

がんばろうと焦ります、学校に行っていないことはアイデンティティでもなんでもなくてただ罪悪感だけが背中に貼られていって死にそうになるけれどそんなこと言っていられないです。焦りに焦って、バイトに応募してしまいました。いくつか落ちる中で考えたのは、帰ってこない履歴書の行方と、みんなの出来ることが出来ない自分に対する劣等感と、久しぶりに感じた置いて行かれている感覚です。しにたい
採用はされたけれど、研修で落とされてしまうかもしれないし、向いていないですよと言われることも怖いですし、ぼくは精神病でそれはバレてはいけないことのような気がして後ろめたいし、色々既にだめです。
がんばりたいと思っているというよりもがんばらないと、と思っているのにその場に立たせてもらえないこともまた苦しいなと感じたりの毎日でした。



それぞれの季節の印象が中学の頃から変わらないこと、席替えをしたけれど学校に行っていない所為で何も分からないこと、埃を被っていく使われないわたしのロッカー、夏が死んでいく所為で誕生日の秋が近付いてくること、死んでからやさしくされる祖母は今何を考えているのかと日々思考すること、何も憶えていない祖父はしあわせかどうかとか、色々、考えて、しまう
あの子はスカートが短いからしあわせそう、スタバに入れる人はしあわせだとか、ほんとうは見た目だけじゃなにもわからないね
自分を好きになれって言われても自分のことを好きな自分って気持ち悪いじゃん、ほんとうに自分が好きなら自分のことしか考えずに今すぐ自殺する、強風で手からこぼれ落ちたいちごみるくのパックを追いかけて快速電車へ六月と七月の狭間に飛び込んできれいに、赤い血を出して汚く黒く散る
とても素敵な人生でした、って、そんなわけないだろ

あなたの六月はとても素敵な六月でしたか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?