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格闘ゲームと生きるということ - 難病格闘ゲーマーのわたしがこの夏のEVO挑戦にこだわる理由

みなさん、こんにちは。Jeniと申します!

先日、毎年アメリカ・ラスベガスで開催されている世界最大の格闘ゲームイベント「EVO2024」の種目と会場が発表されましたね。今年はラスベガス・コンベンション・センターに新しくできたホールで3日間開催されるということで、どのような感じになるのかワクワクしております。

タイトルにある通りですが、私は今年のEVO2024に挑戦するため、行くための方法について長い間考えてきました。今日は皆さんにお伝えしたいことがあるので、このnote記事を書いています。少し長くなるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです…!

Jeni 畠山駿也(はたけやま・しゅんや)
株式会社ePARA所属 1994年、岩手県生まれ。
「デュシェンヌ型筋ジストロフィー症」の格闘ゲーマー。
持病の進行でコントローラーが握れなくなり一度ゲームを諦めるも、遊ぶことを諦めきれず、あごで操作する専用コントローラーを仲間と制作。eスポーツ大会に出場しながらゲームのアクセシビリティについて発信、eスポーツイベントのプロデュースを行っている。

ゲームの中でくらいは強くいたかった10代の経験

格闘ゲームと出会う前、私にとっての10代は、難病の進行により日常生活でできることが減っていく喪失の時期。そんななかで、努力すれば勝てる対戦ゲーム、ストリートファイターと出会い、夢中になりました。いつか出来なくなるなら、最初からやらない方が良いと決めつけ、色んなことに挑戦できずにいた私がストリートファイターⅣシリーズを始めたのは、現実で何もできない弱者なら、大好きな対戦ゲームの中でくらいは自分を認められるように強くなりたいというちっちゃなプライドからでした。

高校時代のJeni

目標を立てて練習をして苦手キャラの対策をして対戦するのは、現実の困難を工夫で乗り越える術を学ぶためのリハビリになりました。現実は単発ヒット確認や、0F目押しコンボがあるわけでもないので、私が想像していた現実の障害は工夫で解決できる問題ばかりということをゲームから学んだことを覚えています。

そんな格闘ゲームに没頭していた私の中で、ひとつの夢ができました。それは、いつか配信や動画で見ているような大会に参加し、誰かとオフラインで対戦したいという夢でした。

当時国内の格闘ゲームの大会といえば、ゲームセンターで予選が行われ、年に一度最強を決める全国大会の闘劇が日本国内で最も有名でした。持病の関係で筋力がなく、手でレバーを操作したり手のひらからはみ出るボタンたちを押すことができない関係上、ゲームセンターで遊ぶこともできない私にとって闘劇は憧れでした。

そんな経験から、ゲームセンターへの憧れは日増しに強くなっていき、筐体にコインを入れてゲームを遊ぶことはできなくても良いから、強い人が集まる東京のゲームセンターに行ってみたいと思うようになり、東京のゲーセンまで一人で旅をしたこともありました。 - ゲームに人生を狂わされた話

対戦の様子

この難病が身体を酷使すればするほど進行が進むことは分かっていながらも、当時の私には格闘ゲームを頑張ることしかできませんでした。日々コントローラーが握りにくくなる手のひらや、いつか行きたいじゃ夢は叶わないという現実も、どこかで分かってはいましたが、未来への焦りを目の前の好きなことにのめり込んで燃え尽きて遠ざけることしかできませんでした。

ノットデッド!

できなくなってからの人生のほうが思ったりも長く、あの頃から10年以上が経ちます。格闘ゲーム以外何もなかった私も、気が付けば社会人になっていました。

2020年にコロナが到来し、田舎で訪問介護を受けながら生活していた私は、自宅から出られない生活が約2年間続きました。不要不急を求められている中、ある日中学時代に通っていた特別支援学校から卒業後の進路についての講演会を依頼を受けることがありました。内容は、児童に本当にやりたいことを見つける手助けとして自分の今までの話をしてほしいというものでした。

高校卒業後の進路先がなく、卒業後無職になったこと。
焦りを格闘ゲームにぶつけて過ごしていたこと。
そんな自分が児童に何を伝えられるのかと頭を抱えます。

地元の感染者も増え、副校長に自分なんかの講演は不要不急ではないかとメールで伝えた時、これは不要不急ではなく児童にとって今一番に必要なことだと言われ、悩みながら準備をしたことを覚えています。

児童にやりたいことの見つけ方を伝える一方で、私は今の自分ですら本当にやりたいことが何なのか定まっていないことに気が付き、自分のこれからについて真剣に考えました。

本当にやりたいこと

  1. 自分自身が工夫をしながらゲームをプレイし、ゲームの素晴らしさを発信すること

  2. いつかで見返したかった過去の自分を、今の自分で勝負して見返すこと

自分にできることは、格闘ゲームと生きていくことなんだと思います。
たかだかゲームと思われる人もいるしれません。仕事が休みの日、何気なく対戦に誘ってくれた仲間にクソボコにされ、もっと強くなりたいと思えたから私は今も格闘ゲームをプレイしています。

今の私にとって一番やりたいことは、過去の夢に、今の自分で挑戦することでした。
それが、この記事のタイトルにある通り、一度諦めたEVOへ選手として出場するという夢に挑戦する理由になります。

EVO Japan 2023に参加した時の様子

昨年末カプコンの大会レギュレーションが変わり、身体的特徴を考慮したゲームデバイスのカスタマイズが認可されるようになりました。ゲームデバイスの工夫が許され、自分の思いどおりに操作ができる今、私はゲーム環境による障害を感じることはありません。オフラインで対戦ができる環境と、参加権利がある今が本当に特別で、この夏という一瞬のチャンスを私は二度と諦めたくはないです。

来年になって今ほどの身体のコンディションで格闘ゲームができているか、自分でも分からないということもあります。だからこそ今年の夏、1クレジットの格ゲー人生のすべてをぶつけてこようと決心しました。

今まで日本で自分のように人工呼吸器を付けながら海外のeスポーツ大会に参加したという事例はありません。でも、前例者がいないからできないってことでもないと思うんです。だからこそ今年頑張ってみたいと思っています。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
海外大会に挑戦するための現実的な課題は山積みですが、そのことについては次回のnoteで書きたいと思います。
今後も発信していくので、応援してくださる方はこの記事の拡散の協力SNSのフォローをどうかよろしくお願いいたします!

行くぞラスベガス!!!

Jeni 畠山駿也


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