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愛国者学園物語3

( 以下は私の創作です )

 毎日8時半過ぎになると、愛国者学園の校門前には、近所のお年寄りたちが集まる。何のために? それは、8時50分に行われるある行事に参加するためだ。以前は、それを学園生だけで行なっていたが、それを見学する人が、特にお年寄りたちが集まるようになったので、彼らも一緒に行事に加わるようになった。

 8時45分、真剣な顔をした学生たちが校舎から出てきて整列する。
同49分、1分前のチャイムが鳴る。


 そして同50分、学生代表が声を張り上げ

「内宮遥拝( ないぐうようはい )」

と叫び、深々と礼をする。それが終わると行進をしながら校舎に入り、9時からの授業に備える。彼らは雨の日と休日以外は、毎日伊勢神宮に拝礼した。雨の日は各教室か体育館でそれを行ない、それが彼らの心に神道を刻みつけた。

 近所のお年寄りたちは、開学当初それを話題にするだけだった。それが朝の散歩のついでに、校門の外からそれを眺めるようになり、やがて彼らも門の外で拝礼するようになって、ついに門が開かれたのだ。外面だけは良い学園長は、近所のお年寄りなら身元も確かだから安全だと言って、彼らを受け入れた。


 お年寄りたちは、学園生たちから歓迎された。そして、孫のような彼らと一緒に拝礼し、勉強の邪魔をしてはいけないと、すぐに立ち去った。


 その話が近所に広まると、元気のなかったおばあさんがカートを押しながら、15分位以上もかけて学園に通い、子供たちと共に拝礼をし始めたこともあった。彼女はそれを始めてから元気を取り戻し、亡くなる3日前まで、学園に通い続けた。そのせいか学園生にも人気があり、お葬式には多くの学園生が参列し涙した。


続く



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