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竹島ケーキを食べよう 愛国者学園物語17

 この学校の教育には、風変わりなものもあった。愛国者ケーキが給食に出てくるのである。

 例えば、2月22日は竹島の日だ。国民の大多数はその存在すら知らないようだが、この愛国者学園では、そういう記念日に様々な行事を行っては、子供たちの心にそれを叩き込んだ。

 とは言っても、竹島を不法占拠している韓国を罵倒するような、過激なスローガンを叫んだりはしない。そのかわりに、竹島の形を模したケーキを作ってみんなで食べることになっていた。

 それは子供たちにお菓子を食べさせたいという、学園教師たちの優しい気持ちの表れではない。学園の教育や各種活動を、何でもかんでも戦争や愛国心に結びつけるという戦争肯定の結晶だったけれども、子供たちは食欲最優先だった。


 愛国者学園の卒業生たちは、竹島ケーキだけでなく、北方領土ケーキ、それに尖閣諸島ケーキの味を忘れることはなかった。

 彼らは同窓会だけでなく、個人的なつながりを大事にしていたから集まると、必ずと言って良いほどケーキの話をした。それも、それらの島々をめぐる政治問題や、教師たちが叩き込んだ知識を語るのではなく、その味についてだ。

「尖閣諸島ケーキはあまり美味くなかった」
「いや、竹島ケーキの方がひどいよ」
「あたしはどっちでもいい」

 家庭科の時間、ある女子が作った択捉(えとろふ)ケーキは、彼女が材料の量を間違えたせいで、醜く膨らんでしまい、その出来上がりを見た彼女はべそをかいた。しかし、クラスで一番太っていたある男子がそれをあっという間に平らげたので、彼女は泣くのをやめた。その後、二人は結婚して仲良く暮らしているそうだ。


(写真は都内で、1月末に撮影)


続く


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