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日本はすでにファシズム国家なのか   愛国者学園物語38

 日本警察に奉職し、法の番人として生きてきた根津はこのような状況に深く失望していた。根津はそういう祖国が嫌だった。愛国心は大切だと思うが、それは自発的に育てるものであり、政府が強要するものではない。そう彼は考えていた。

 ファシズムとはなんだろう。根津が考えるに、
「特定指導者を過大に賞賛すること」
「特定政党だけが肥大する政府」
「政府や社会が、国民に過度の愛国心を強要する」
「特定人種を賛美し、それに属さない人種を迫害する」
「祖国防衛の任務には過大な規模の軍事力を持つ国」
「徴兵制による国民皆兵(かいへい)社会」
「侵略戦争と、それによる外国の支配を肯定する」
「警察や司法が肥大化する」
「全体主義的な政治と社会」
「自分たちとは異なる人種や文化を認めないような、排外主義」
「国家緊急権を乱用できる憲法と政治」
など、だろうか。


 これらは条件の多くは、今の日本に当てはまるではないか。

 そしてこのファシズムは世界平和の脅威になるかもしれない。だから、世界は日本のファシズムを阻止するという名目で、戦争を仕掛けてくる可能性も充分あるのだ。

 現に、中国、北朝鮮、ロシアの日本周辺国は軍事力を強化していた。そしてその理由を、日本社会の過激化と軍事大国化を阻止するため、自分たちの自衛のためだとした。

 これが売り言葉と買い言葉になり、日本人至上主義者たちは、政府に日本は核武装して近隣諸国の脅威から偉大な日本を守るべきだ、と圧力をかけた。彼らは具体的な国名を出して、@@を核攻撃せよと公然と述べ、それを支持する政治家たちもいた。


 今や日本と日本近隣諸国の軍拡は当たり前になり、対日戦争の噂も珍しくはなくなった。その前哨戦なのか、今、国際社会とネット社会には日本を危険視するフェイクニュースが無数に流され、それらが日本に対する不信感を煽っていた。

 だから、この次は何が起きるのか? 愛する日本を外国の攻撃から守るために、情報機関代表の自分は何をすべきだろう。日本の情報機関長官・根津透の苦悩は深かった。


 クリスチャンの彼は、新約聖書の一節を思い出した。
コリントの信徒への手紙一の13章だ。有名なこの章の

「愛は寛容にして慈悲あり」

の部分である。今の日本社会に、あるいは日本人至上主義者たちに「愛と寛容と慈悲」があるのだろうか。
他者の存在を認める愛。
自分とは異質な存在を受け入れる寛容。
それに究極的な愛としての慈悲。
根津に言わせれば、日本人至上主義者たちには愛も寛容も慈悲もない。自分たちとは異なる人々や文化の存在を侮辱し、見下し、日本から追い出せ、@せと言うからだ。

 平成の次の時代、日本社会を壊したのは、外国ではなく、明らかに日本人自身だ。日本人至上主義者たちの横暴と、それを見逃した人々の罪は重い。私たちの日本はどうなってしまうのか。

 見た目は民主主義国家であっても、政府がさらに強い権力を振う国家に成り果てるのか。政府は改憲で国家緊急権(緊急事態条項)を手に入れたから憲法を停止することも可能になった。それもかつてナチスが乱用していたのと同じことだ。そして、日本人至上主義がさらに加熱するのか。わが祖国は、神道を強要し、天皇を絶対的に賛美させ、愛国心を示さないと非国民扱いする、そんな社会になりかけている。

 日本が危険な存在になることを止めるために、自分は何をすべきか。
根津は愛する祖国日本について考えるとき、いつもこの結論に達し、神の許しと加護を求めるために祈るのだった。


続く


大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。