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真夏の愛の夢 愛国者学園物語33

 マイケルの打ち明け話に、ついに、ジェフたちの酒の酔いは何処かに飛んでしまった。彼らがその話に呆然としていると、我を忘れたようなマイケルが微笑んで、
「俺たちは何の話をしているんだっけ?」


紅一点が
「に、日本人は議論をしない、だったわよね?」
英国人教師が、
「なんで、こんなに話が飛んだんだ?」
ジェフがとぼけて、
「俺たちは日本を愛しているんだ! さあ、みんな乾杯だ!」
「この世で最も大切なもの、それは愛よ! ❤️」
「ピアフの愛の讃歌に乾杯!」
「新約聖書、コリントの信徒への手紙1の13章に乾杯だ」
「愛の国ジパングに!」

マイケルがジェフに向かって
「築地のウニに乾杯!」
ジェフはマイケルに
「美味いアナゴに乾杯!」

 みんなで乾杯を繰り返して、誰ともなく、KANの「愛は勝つ」の歌を唄い出し、みんなでサビの部分を絶唱したら、お隣さんにうるさいと言われたので、横田基地の中心で日本への愛を叫ぶ不思議で奇妙な日本文化講演会は、バカ話のつぶやき会に姿を変えた。

 この「真夏の愛の夢」は、懐かしい思い出である。この馬鹿話は、愛国者学園がデビューしたよりもはるかに前にしたものだ。それをマイケルが日記に書いたので、当時のふざけた雰囲気まで記録されていた。あれから何度も仲間たちは集まり、酒を飲んでは馬鹿話に興じた。そして硬軟あわせて、日本に関するありとあらゆる出来事や話題を「料理」しては楽しんだ。


 米人の英語教師で集会の紅一点はジェフと結婚したのに、彼女は寿司嫌い、生もの嫌いだった。だから彼女はジェフの好物、生ウニを見て、そんなものを食べるのはエイリアンだけよと言い張って、新郎をがっかりさせた。だが、やがてウニを混ぜたパスタソースを上手に作り、それでジェフを支配するようになった。肉を食べるためにこの世に生を受けたと自称する彼女はジェフに、自分の誕生日には、毎年、和牛のステーキを食べさせてちょうだい。もし私が死んでしまったら「仏壇」に和牛をお供えしてねと命令した。キリスト教徒の彼女なのに、どうして仏壇なのか?。どうやら、彼女はジェフのユーモア精神を引き継いだらしい。


 ジェフにとって、日本は予期せぬ驚きと妻とウニ、それにマイケルをもたらした国だった。だから、日本は忘れがたい。

続く

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