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「在留資格のない子どもたちも大人になったら必ず収容される。それを考えると頭がおかしくなりそうだ。」ー改めて、収容問題を考える。

東京入国管理局で長期収容されていたクルド人男性、チョラク・メメットさん(38)が6月17日、約17カ月ぶりに仮放免となり、入管に迎えに来た家族と再会した。(出典:BuzzFeed 記事 2019.6.17)



ほんとうにほんとうにほんとうに辛かった17ヶ月。

メメットさん、仮放免おめでとう。
おめでとうなんて変だけれど、本当におめでとう。

まずは仮放免されたこと、よかった。
面会のたびにガラスの向こうで痩せてゆく姿は見ていられなかった。


身体も心も限界でボロボロだったから、子どもたちと奥さんと、ゆっくり時間を過ごしてほしいなと思う。

「お父さんが帰ってくるって聞いたときは泣いたよ」(上記記事より)
「帰ってきたら一緒にゲームをしたりして遊びたいです。ディズニーランドに行ったことがないから、一緒に行きたいな」(上記記事より)


日々私たちが向き合う難民問題は、とても政治的で人間的で外交問題で人権問題だ。人間が地球に存在する以上、その故郷で「普通」に暮らせなくなる人が必ず存在する。紛争や自然災害や迫害や思想、テロや治安の悪化、性的志向や宗教。理由は様々だ。もう選択肢がなくて最後の手段で国を出る人もいれば、もっとよい未来を目指して国を出る人もいる。移民と難民の境目はどんどんぼやけてくる。


例えば、わたしがクルド人で、トルコに生まれていて、日に日に自分たちらしく生きることができなくなり、ついに身の危険を感じるようになったとしたら、どんな行動をとっただろうか。


この永遠の課題に、人として、国として、どう向き合うのかを、どんなバランスをとってゆくのかを、この「仮放免」の立場の人たちの存在が問うてくる。

「いてもいい、強制送還はしない、でも働いてはいけないし、保険も入れないし、在留資格も与えない。僕だって人間なんだ。虫以下だ。」


一緒にシェアハウスで暮らしたアンゴラ人が、目に涙を溜めながらそう話してくれた日を思い出す。明るく優しくユーモアに溢れる20代の青年だった。

在留資格のない外国人(非正規滞在の外国人)は難民申請中であろうと、母国に帰国するまでの収容が原則となっている。しかし、体調の悪化や収容長期化などの情状を酌量し、保証人と保証金が用意できれば、暫定的に収容を解かれることがある。これが仮放免だ。

難民申請中の人の中には、日本に逃れてきたその日に空港で難民申請をし、そのまま収容されて何年も経つ人もいる。それが現行の制度だったとしても、なぜ自分が収容されているのか理解できていない人もたくさんいる。

「在留資格のない子どもたちも大人になったら必ず収容される。それを考えると頭がおかしくなりそうだ。」

と、以前メメットさんがアクリル板越しの面会の時にこぼしていた。
彼らの収容の経験は一度ではない。
家族や親戚が順番に収容されるのを見てきている。

多くの意見がある。多くの声がある。多くの立場が絡み合う。


あえて線を引くならば「受け入れる側の国家」と「庇護を求める難民」だし、「国家の安全保障を守る義務と責任が正義だと思う人々」と「誰しも持っているはずの人としての生きる権利を切望する人、そしてそれを正義だと考え応援する人々」だろうか。


誰がなにを望み、今の現状があるのか?
誰がなにを恐れて、今の政策があるのか?


答えのない問いや感情、意見があふれている。
きっとあと何年たっても正解はない。
でも、なかった声にしたくない。
彼らはなにと闘っているのか。
わたしは何がひっかかっているのか。
21世紀を生きるわたしたちは、
きっともっといい仕組みを作れるはずだ。


◎参考
14カ月収容され、命の危機にあるクルド人男性。救急搬送を拒否した入国管理局の対応を問う」(2019.3.13 Forbes Japan)

◎参考
「『難民をエンジニア人材に育てる』就労“伴走”NPOが始めた日本初のプロジェクト。楽天らも強力支援」(2019.6.19 BUSINESS INSIDER)


ここでいただいたサポートは、入国管理局に収容されている方々に面会で会いに行くときの交通費に使わせていただきます。ありがとうございます。