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前法務大臣の斎藤健さんとお話してきました。日本と移民、日本と難民について。


前法務大臣の斎藤健さんとお話してきました。私の周りには難民や移民、外国人のイシューに関わる友人や知人がたくさんいるので、斎藤さんのことをメディアで見ていた皆さんも多いと思います。入管法改正案可決の際の大臣であり、法案をめぐっては、国会で激しい議論が繰り広げられました。

今回のご縁は、先月の田原カフェ。

田原総一郎さんと、カフェの運営代表「たなしょー」こと田中 渉悟くんがお繋ぎしてくれたご縁に改めて感謝です。



入管法改正、在留資格、非正規滞在、技能実習・特定技能、「移民」という用語をめぐっての謎の扱い、外国人労働者については産業界からの要請と保守からのバリア??など、これからの日本のカタチについて、短い時間だったけど、斎藤さんから見えている景色を、たくさん聞かせていただきました。

そしてずっと気になっていたし、今日も伺ったけれど、やっぱり腹落ちしないのが、「日本は移民の課題とどう付き合っていくのか」の大きなビジョンがこの国には抜け落ちていることについて。

どこの省庁も担当してないし、在留資格を出すにしろ、規定をつくるにせよ、その方向でいいのか否かは、日本が、日本人とされる人以外の存在とどう付き合ってゆくのかの大きな方向性がないと整合性もなくなるし、同じ方向を向いて様々な省庁が協力することも難しい。斎藤さんは「うーん、とはいえやっぱり法務省かな…」という話をされていました。

改正入管法については、課題ももちろんあるが、これまでの入管法がパーフェクトだったかといえば、全くそんなことはない中で、制度の不備によって、中には難民認定申請という制度を悪用・濫用する人たちがいることに対して何かしらの策はどこかで打たないと、これからの日本が、安心して外国人と共に暮らしてゆくことができなくなる、現場も逼迫して立ち行かなくなる、何かしらの手を打たないといけない、後回しにはできないという入管が抱える課題が出発点だった。

ただ、難民性のある人々を、適切に難民認定できる状態まで辿り着いておらず、認定のプロセスが不透明という指摘もずっとある日本で、「政府が難民認定しない人は難民じゃありません」なんてそんな単純な話ではなかったことが再度明らかになった。

難民認定を審査する審査官には、経験や知識、申請者本人を面談して、足りない情報を補いながら難民該当性と照らし合わせて判断してゆく高いスキルが求められる。これが、いまの日本の審査官には伴っていないとの指摘もある。入管法の議論中に、びっくりする事実も出てきた。

それぞれに、それぞれの仕事があり、それぞれの景色と立場がある。

ただ、”みんな違うもんね〜”では、済まされないのは、そうだとしても絶対に守られなきゃならないのが「人権」で、立場を越えた人たちが、ここに立ち返るのは想像を越えて簡単なことではない。

斉藤さんはこんな話もされていた。

今回、とにかくルールを守らない(望む望まないに限らず、非正規滞在状態になってしまった場合も)人たちには、帰っていただくという方針を貫いた入管法だったけれど、1990年代からのあまり厳しくなかった時期もあった。ゆえに、在留資格がない人もなんとなくいられる状態があった。子どもたちも生まれたが、在留資格がない。それは、本人たちのせいではない。そうなってる子たちが200人。これが、入管行政の不備・入管法の不備で生じたことであるならば、制度と制度の狭間に落ちてしまった子たちは、入管の責任でどうにかする必要がある。

そして入管法成立後、8月、齋藤さんは、意思をもって、上記のような子どもたちのうち、一定の条件を満たす場合は在留資格を出すと発言された(全員ではない)。発表後、あらゆる方面から反発があった記憶がある。

---「そんなの、今回だけの特別措置といってもなし崩しになるだろう。生んだもん勝ちになる。やるべきではない。」
---「なぜ、日本で生まれた子たちだけなんですか?子どもたちの間に線を引くのはおかしい」。

日本ではじめてとも言える一斉アムネスティー。
生まれてこのかた、在留資格がなく未来を描くことができずにいた子どもたちにとって、初めて未来が見えた瞬間だった。かなりのギリギリを攻めた発言と決定であったと察する。
ヤフコメやTwitterは荒れたが、その過程や意義はあまり伝わってなかった気がする。あれから4ヶ月経つ。ずっと気になっていたあれは、どうなってるかというと、消えてしまったわけではないということがわかった。本当によかった。

今回の法改正が施行されるのは2024年6月。
難民認定を3回却下される難民申請者の中で、本当は難民性がある人が命の危険のある国に送還されてしまうことのないように、当事者たちに関わる人間はウォッチしてかなきゃならない。(ちょっとマニアックになってしまうけど、「二重の推定」に引っ掛かる人たちも)

産業界/経済界からも、外国人材の戦略的誘致の意向は大きい。コロナも収拾がついたグローバル化の中で、在留外国人がこれまでより減っていくなんてことにはならない。これからの日本における、外国人との共生社会を作るには、制度の不備を正さなくてはという部分は理解しつつ(それがどの国でも出入国行政のお仕事)、やはり、そもそも先進国で飛び抜けて低い難民認定率をどうしてゆくのか、難民認定されても”社会統合プログラム”が十分でなく路頭に迷う人たちがいる状態に予算をかけられるのか、制度を厳格にしたら、本来絶対帰してはならない人を帰してしまったなんてことにならないように、党内の賛成派も反対派も、国民の賛成派も反対派もいるなかで、どこを落としどころにできるのかが問われてると再認識した。

そして、「日本は移民の問題とどう向き合ってゆくのか」という国家ビジョンについて。

どの省庁もやらないしやれないなら、外国人受け入れに関する検討体制の整備と外国人に係る諸問題を総合的に企画・立案し、必要な調整や管轄を行う「外国人庁」や、「外国人基本法(多文化共生基本法)」が、やっぱり必要だろう。これは、経団連が2004年に出した提言にも出てくる。(20年も前…)
世界情勢は変化してる。日本も変わってきている。私たちは、よりよい未来を作るため、まだまだ議論を重ねながら変化できるはずだ。


🗣️斎藤さん、人として非常に誠実な方でした。
答弁したことを守ってゆく姿勢だけでなく、丁寧に丁寧に応えてくださったことからも感じました。彼だけでなく、テレビや記事を通して相手を知るのは、本当に一部分であることを理解した上で、それぞれが直面する葛藤や置かれた状態への想像力も働かせてゆけるようになりたいと強く思います。



私が活動するNPO法人WELgeeは、紛争や迫害、命の危機などから日本に逃れてきた難民の背景を持つ方々と、日本社会や日本企業を繋げる活動をしています。

難民問題は、国連やNGO、弁護士など専門的な組織や人たちが関わる難しい問題だというふうに捉えられる場面も多いですが、実は、民間企業をはじめとした社会の様々なアクターが関われる、そして課題解決の一端を担いながら新しい価値創造もできる、そんな事例が生まれてきています。

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