Jessica

映画とオオカミが好き『RE-FAURÉ feat.Prefuse73』 | 『RE-D…

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映画とオオカミが好き『RE-FAURÉ feat.Prefuse73』 | 『RE-DEBUSSY feat.Hauschka』9月13日 | https://ngatari.com

最近の記事

豊岡演劇祭2020 中堀海都+平田オリザ 室内オペラ『零(ゼロ)』

豊岡演劇祭2020 中堀海都+平田オリザ 室内オペラ『零(ゼロ)』に出演します。 https://ttf2020-106.peatix.com/ https://toyooka-theaterfestival.jp/about/ 平田さんの切迫した作品世界、難解で鋭利だけれど、どこか温かみのある中堀さんの楽曲。 美しく細かい粒子で出来たような、それでいてこの世相を雄弁に語るようなオペラ、遠出は難しいけれど、遠慮がちに告知します。 ---------------- 中堀海

    • ある種致命的な欠陥とは

      僕の尊敬する詩人、平出隆は「日本にいながら、なぜ自分がこの土地において、この国語において、ある種致命的な欠落を抱えつづけるか、ということを、僕は考えないでいられなくなっていた。」と綴っています。 そのセンテンスが脳に浸透すると、時計の針が止まり、エアコンから流れる生温い風は突然重力を持ち、その固い物体のような時間は僕の身体にのめり込んできました。「物を書くこと」を知らないのだということを知りました。しかし、物書きでなかったことにショックを受けたというよりは、今自分が何かの袋

      • 消費税とチャッピー

        潜む闇は、一見澄んで見える水の底に沈殿しています。かき混ぜると本性が露呈されるのです。 「本当に誠実であれば起こり得なかった事」への執着に足場がもたつき、焦点の定まらぬ景色に取り残され、持て余した思考回路は当然あらぬ落し穴へと落下しました。 梯子がないので助けを呼ぶべきですが、心当たりのある気まずさに声が出ません。人間としての責任を考えます。 お気に入りの公園に行こうと電車に揺られていたのですが、目的地に着く前に慣れ親しんだ街、経堂で気が変わり、下車。 快晴のすずらん通りは

        • ビビ

          気分転換にマクドナルドに行ったら、食べ盛りの青年二人組が乱暴に隣の席に着席。呟きや独り言にしては少し大きめの空腹宣言。彼等のテーブルには勿論ビッグマックがセットされています。どうせせかせか齧り付くのだろうと白けた眼差しで盗み見していました。しかし、バーガーの逃げぬ内にと急かし気味ではあるもののきちんと「いただきます!」の一言を発した2人。早口に済ませるあたり、彼等の習慣的な食べ物への感謝が垣間見え、とても好感が持てました。

        豊岡演劇祭2020 中堀海都+平田オリザ 室内オペラ『零(ゼロ)』

          リズムの騎士

          プレゼントに、ご馳走に、大皿にこぼれそうな手づくりケーキ。 欲しかったものが手に入った充足感や、美味しいものだけで満腹になれた満足感は、日にちが経つほどに柔らかな幸福感へと転じていきました。 そして贈り物を見る度にその造形にではなく、それを選んでくれた人の表徴を眺め、護られた者のように感じ、心は強い騎士になるようでした。 年が明け、家族が集う昼の団欒の為だけに帰郷。三が日は過ぎていたのでテーブルにお正月はありません。 慎ましく、薄塩味の卵焼き、目刺、山菜のお味噌汁に白飯をこ

          リズムの騎士

          つままれた朝と

          午前4時、朝の始まりを予感させるように鴉の声が響いたので、カーテンを開け、まだ霞む空を眺めました。 突然コールが鳴り、液晶画面に浮かび上がった名前に、驚きと、喜びと、懐かしさからすぐさま電話に出たのは2週間前のこと。今日は特別な友人のひとりであり、尊敬するピアニストが家に遊びに来てくれます。約束は昼だというのに「ワイン持参しますね」と彼らしさは健在。記憶の箱を開け紡ぎあったり、日々の生活を交換し合ったり、そんなささやかな時間を過ごせるなんて嬉しい。 もうひとつ愉快な出来事

          つままれた朝と

          四つ目の黒犬、ポチョ

          かつて愛媛の山奥に、一軒家がありました。庭には小さな滝と池があり、そこでは曾おじいちゃんの大切にしている水彩模様の鯉達が優雅に泳いでいました。 その傍らに僕の大切にしていた小鳥達のお墓がひっそりと並び、記憶の中の裏庭ではいつも木々は生い茂り、それらは夜になるとなぜだか背丈が伸びて、恐ろしくなるのでした。 客人を招く為の家だったのか、家族で暮らすには広すぎて、隙間風も無いのに寒々しかったのを覚えています。そこで僕と弟は、靴のサイズが18cmだった頃の短い期間二人暮しをしてい

          四つ目の黒犬、ポチョ

          鮮明

          皆が寝静まる真夜中。道路沿いに面したワンルームで、猫の額ほどのベランダに出た僕はうずくまり、ただ肌寒い風にあたっていました。 叔母の大切な犬が数日前に死んでしまったことを知り、とてもショックを受けていたからです。思い出は手のひらに収まるほど少なかったにも関わらず抉られました。 シェパードは普通、飼い主やその家族にしか懐かないものです。けれども、初めて会った腕白な時期と、もう一度は既に介護犬となっていた彼に会った時に許された気持ちがした事を鮮明に思い出しました。どんなに自分に

          亀と流儀

          先日、目黒区のお祭りに出掛けました。矢庭に広がる屋台の連なりに御輿を見に来た事もあっさり忘れ、金魚の前にしゃがみ込みます。亀掬いなるものまであり、一瞬飼ってみようかなと思い、少年や売り子のお手本を観察。売り子は難なく掬うのに対し、少年らは寸分の余地もなく「ポイ」をダメにしている。そして、「掬えた亀、持って帰らない場合1000円で買い取ります。」との張り紙。高度な技術が要求されるであろうことが明白である以上財布の紐を緩める訳にはいかない。。手応えのない博打に手を出すより確実性を

          亀と流儀

          白と青

          白い、白い朝。散らかったままのテーブルに、昨夜の楽しくデタラメな時間を見つめていました。しかし真っさらな朝というのは、短い客です。うっかり家事に時間を割いて、お待たせ!と戻っても時すでに遅しです。 僕は逸り心で青々とした書物の中へと戻っていきました。…あえかな回想録は、斜めにかしいだ夏草が生い茂る青春期に差し掛かり、姉弟の親密な耳打ちが僕の頭にさざ波を立てます。若さは無尽蔵な太陽光線のごとく。 本はさしあたりおしまいにしてカフェオレを温めました。そう、もう一度思い出してみ

          白と青

          宅配ピザしばらく

          ポストを開けて、宅配ピザやマンションのチラシ等雑多なゴミを始末し、あー、スッキリ!と蓋を閉めようとした時、それは控えめに底に張り付いていました。馴染みのない筆跡だったので、はてと裏返す。宛名からいつもお揃いの服を着ていた幼い双子が脳裏に浮かびます。 部屋へ戻るなり封筒をビリビリ破き、彼女の言葉に飛びつこうとするも、なぜか手が動きません。あまりに甘酸っぱい時空です。僕はしばらく待ちました。水のおもてに広がる記憶の波紋はくぐもった響きを奏で、風鈴の音と混ざり合いました。小さく深呼

          宅配ピザしばらく

          植物と

          ヴォーゲルは人間の中で子供がいちばん「偏見がない」ことを知っていたので、子供たちに植物と相互に影響し合う方法を教えはじめた。子供たちにまず葉にさわり、葉の温度・かたさ・手ざわりを詳しく話してくれるよう頼む。つぎに、葉を曲げさせてその弾力に気づかせ、葉の上側と下側をそっとさすって愛撫させる。そして生徒たちが自分で感じる感覚を喜んでヴォーゲルに述べれば、彼は子供たちに葉から手を離して、葉から出ている力もしくはエネルギーのようなものを感じるようにしてごらん、と頼む。すると、子供たち

          植物と

          西瓜万端

          競い合う蝉の鳴き声が洗濯日和だと告げるので、ベッドカヴァーを引き剥がし、洗濯機のスイッチを入れました。と、大きなカナブンがベランダに迷い込んできました。悪戯心が働いた僕はそのギラギラした光沢の虫を掴み、観察します。つまんだ指に絡みつく四肢は非常に威勢良くこの危機に立ち向かう。 幼少期に父がお土産だと言って捕まえてきたカブト虫を思い出しました。父は量販店で適当に選んできたであろう小さな虫籠に、冷蔵庫で冷やしてあった西瓜を入れて準備万端!とカブト虫を投げ込みました。しかし小さな

          西瓜万端

          漂流するポール

          小雨をふくんだ突風が、折りたたみ傘をお椀の形にする天候は久々の事。ぐずつく空はそんなに嫌いではなく、自分の心が湖の底にあるような日にはむしろ心地よく感じます。 心に寄り添うのは天気だけにとどまらず、先日本屋でたまたま見つけたポール・オースターの新作もまた僕を、このひそやかな生活を、そっと慰めてくれます。明日がどんな日になるのかは神のみぞ知るです。毎日新しい事を覚えるような、瑞々しい女学生のような生活は素敵です。出来ればそうありたい。けれど、淡々と日課をこなす事も、その行為を

          漂流するポール