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宅配ピザしばらく

ポストを開けて、宅配ピザやマンションのチラシ等雑多なゴミを始末し、あー、スッキリ!と蓋を閉めようとした時、それは控えめに底に張り付いていました。馴染みのない筆跡だったので、はてと裏返す。宛名からいつもお揃いの服を着ていた幼い双子が脳裏に浮かびます。
部屋へ戻るなり封筒をビリビリ破き、彼女の言葉に飛びつこうとするも、なぜか手が動きません。あまりに甘酸っぱい時空です。僕はしばらく待ちました。水のおもてに広がる記憶の波紋はくぐもった響きを奏で、風鈴の音と混ざり合いました。小さく深呼吸してから封筒を天井へ近づけ、透かしてから丁寧に封を切ります。

便りの2ページ目にさしかかったところで目が釘付けに…。小学校から中学校に上がり、2年生になる直前の引越しを経てからも、暫くのあいだ焦がれていた恋が、その名前が、まだ僕の生活をくすぐるなんて!

小学3年の夏一度だけ隣の席になった僥倖は、いまだに僕の仕合せです。

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