昔インドネシアの推しのバンドのCDを日本で出した話 ーDISCUSに関するあれこれー(3)

2001年のDiscus

米国ツアーののち、Discusは時を経ずして再び海外でのイベントに招聘されます。2001年3月のメキシコで開催されたBaja Prog、OrmeやSolarisと言ったバンドも出演したこのイベント、Discusに対しては大きな反響があったようです。


また国内のプログシーンもにわかに盛り上がりつつありました。Andy Juliasのリーダーシップのもと、アンダーグラウンドで活躍していた同傾向のバンドが集結、インドネシア初のプログレ・フェスが9月に開催されたのはRockindさんのこちら詳しく記載されています。
またDiscus自身もメジャー級の出演するライヴに呼ばれるなど、一般的な知名度も少しづつ上がっていきました。

↑2001年6月、ジャカルタ、アンチョールでのライヴ
KrakatauやMelly Goeslawも出演した大規模なイベントで演奏時間は約1時間。上り調子のバンドの様子がうかがえます。特に終盤のNoniのヴォーカルは圧巻。メジャーなイベント故か、聴衆受けを狙いで?3.のようなクロンチョンのカバーも演奏。因みに撮影はRockindさん。私のエンコードがまずくて、一部映像がドロップしている箇所ありますが何卒ご容赦。セットリストは以下。
1.Contrast(Gambang Suling)
2.Fantasia Gamelantronique
3.Jali Jali
4.Anne



2ndアルバムのデモCDと販売元の決定

私自身はとえいば、出張のたびに時間を確保して、RockindさんやAndy Juliasに会いに行き、同地の情報を得たり、日本のバンドの音源を持っていたり、といった形で交流を続けていました。そして同年の12月、Andy Juliasから1枚のCD-Rを手渡されます。

「Discusの2ndアルバムのデモなんだけど、日本のレーベルに紹介してみてくれないか?」

このAndy Juliasの言葉に、正直当てがあるのか不安でしたが「何とかする」旨答え、取り敢えずは日本に持ち帰りました。因みにこの時点では海外は勿論の事、インドネシア国内でも発売元は決まっていません。

帰国後、自宅で聴いてみたデモ音源の印象は、1stに比較しより「プログレ然」としており「結構いい感じ」。オープニングの曲は特にユニークで、エスノ系のサウンドとジャズワルツ、スピードメタル等が程よいバランスで配置された長尺曲。皆様ご存知"System Manipulation”です。ただボーカルはNonieではなくIwan Hasan本人が全編担当しており、多少不安定な印象は否めないものでしたが。
他には既知のANNEや、アルバムには納められなかったVan Halen風の曲等。ただこの時点では、興味深くはあったものの傑作を予感させるほどの強い印象があったわけではなく、前述のように「結構いい感じ」というのが正直な印象でした。

さてこのデモ音源をどこに持ち込もうか考えあぐねつつ、職務多忙にかまけ約3か月が経過したある日。某所のプログレ・オフ会でこれをかけたところ、オフ会の主催者である「久野さん」が興味を示してくれたのです。
初期の美狂乱にキーボード奏者として参加されていた久野さんはノベルティーグッズの製造販売会社を経営しながら、自社でも音系素材の自主レーベル「GOHAN RECORDS」を興そうとされており、丁度良いタイミングでした。

Gohan Recordsからはこんな作品も。「ベルばら」のドラマCD、曲は全て久野さん担当。参加声優陣には子安武人、三木眞一郎等々。
https://twitter.com/kyte_n/status/1051479683995320321

同日の夕刻、Andy Juliasにメールを送信すると、すぐに返信があり、文面からは喜びが伝わってきました。ぜひとも前に進めてほしいと。
交渉の役割はここからAndy Juliasに代わり、ベーシストKiki Calohが担当となります。Kikiは企業の法務担当もしており、契約面でも何らかのサポートは得られそうで、まさに適役。
そして正式リリースに至るまでの約1年3か月、契約や納品方法に至るまで、様々なやり取りを彼と行いました。またCDのライナーノーツをも担当することになり、各曲の解説やバンドの詳細な来歴などもこの過程で聞いています。

画像1
当時の遣り取りの一部、レジュメ最終版。流石にメールは見当たらず・・・



完成音源の到着と「事件」

2003年初頭、漸くバンド側から最終版がGOHAN RECORDSに送られてきました。私自身も音源を受領したその日は午前様だったにもかかわらず、一旦聞き始めると止まらなくなり、夜も明けそうな時間帯になるまで全編通しで3回リプレイ。
強いインパクトを持つその内容は、デモ音源の「結構いい感じ」どころではなく、想像をはるかに超える完成度。まさに「ブっ飛び」でした。
さほど時をたがわずして、ジャケットイメージの最終案が到着、その感謝欄にはRockindさんと私の名も記されており、非常に感激しました。

さてリリースへ向けた準備が着々と進む中、ちょっとした事件が起こりました。現地法人のスタッフの一人は偶然にもドラマーHayunajiの学生時代からの友人でDiscusの事も時々話していたのですが、彼からこんなメールが届いたのです。

「尻が言ってたDiscusのCD、こちらでも発売するらしいよ。なんなら注文しとく?」

・・・・ちょっと待った。この時点でバンド側がインドネシアでの発売レーベルを決めた、という話は聞いていません。またメールには印刷作業中と思われる前述のカバーイメージの断片もいくつか写っています。・・・どうも胡散臭い。スタッフ君にはすぐ疑念を旨伝え、同時にベーシストKikiにもすぐに連絡をしました。
案の定、バンド側には無許可の非正規盤の作成途上だったようです。幸いこの「海賊盤」が市場に出回ることは阻止され、事なきを得たのですが、印刷会社の内部の者の犯行なのか、はたまた別の誰かが絡んでいるのか・・・・・。結局詳細については聴くこともなく、真相はわかりません。
ただ件のメールの送り先がが偶然にもバンドの友人で且つ自分にとっても知人だった為に、危機回避につながったわけで、その意味では幸運だったといえるでしょう。

そして2003年6月。


(続く)


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