「お金か時間をかけないと説得力はでない」吉田豪とTAITAIが語るインタビューの「マイルール」

「神保町編集交差点」(主催:BLOGOS、企画:株式会社ツドイ)は、現場で奮闘する若き編集者の方々に、一線級の「編集術」を届けることを目的とした、月に一度の連続トークイベントです。このnoteでは、そのレポートを掲載させていただきます。

第2回は「インタビューの『マイルール』」をテーマに、紙とWebとで活躍するふたりのゲストが登壇しました。

ゲストのひとりは、言わずと知れたプロインタビュアー・吉田豪さん。さまざまな著名人が彼の手にかかると、他では言わないエピソードをほろりとこぼします。昨年では、かねてから吉田さん本人が熱望していた明石家さんまさんへのインタビューを実現させ、地上波では見せない「人間、明石家さんま。」の顔を引き出し話題となりました。

そしてもうひと方、語られるのは、多くのファンを持つWebメディア“電ファミ”こと「電ファミニコゲーマー」の編集長・TAITAIさん。取材のために作成したメモで、1950~2010年代までの漫画・ゲーム・小説や社会問題を網羅するなど、その入念な下準備と記事の作りこみはたびたび同業者を唸らせています。

そんなふたりに、インタビューでしていること、やらないと決めていることを伺い、現場で奮闘する編集者・ライターたちがそれぞれの役割について再考しました。

《登壇者のプロフィール》
吉田豪
プロインタビュアー。'70年東京都生まれ。『紙のプロレス』編集部などを経て多方面で執筆を始める。著書に『男気万字固め』『続 聞き出す力』等。テレビ、ラジオ、ネット、各種イベント出演でも活動。

TAITAI
編集者/ライター/ゲーマー「電ファミニコゲーマー」編集長。「ニコニコニュース」編集長、大百科ニュース社代表取締役社長。

司会・今井雄紀(編集者、株式会社ツドイ代表)

お金か時間、どちらかをかけないと説得力は出ない

吉田 今日のイベントでは役に立つ話をしたほうがいいんですか? 面白い話がいいんですか?

今井 面白い話を聞きたいですが、役に立つことも忘れないでいていただけると……(笑)。

吉田 了解です!

今井 今日は、下調べ・現場・原稿の順でお話を進めていきたいと思います。

まずは「下調べ」について。吉田豪さんはご著書『聞き出す力』のなかで語られていたり、TAITAIさんは打ち合わせでお話されたりしていましたが、おふたりともインタビュー前の下調べを入念にされている印象があります。

たとえば吉田さんはご著書のなかで「相手のブログを死ぬ気で読み込んでいる」と書いてらっしゃいますが。

吉田 それは、著書がない場合のことですね。本があれば本を読むし、過去のインタビュー記事やブログは時間があるかぎり目を通すし、 Twitterもギリギリまで見ます。

今井 TAITAIさんも「世にでているインタビュー記事や本人の発言は全部読む」とおっしゃっていましたね。

TAITAI はい、見つけられるかぎりで。

今井 おふたりのなかで、「よし、下調べが終わった!」という基準はどこに置かれているのかなと。吉田さんは、ブログはある限りすべて読まれるんですか? 何年分もさかのぼって?

吉田 単純にいうと“時間切れ”までですね。だから、満足はないんですよ。もう終わったから飲みに行こう! とか、そういうのはないです。

原稿料を考えて、物理的に下調べにかけられる時間っていうのがどうしてもあるんですよね。これ以上、時間をかけたら絶対に赤字になるなあっていう。

今井 ありますよね。

吉田 それが分かっていながら、でも赤字になるぐらいやったほうが面白くなる。これが難しいんですよ。ボクの持論に「お金をかけるか時間をかけるかしないと説得力がでない」っていうのがあって。たとえば、ある音楽誌でCDレビューの仕事を受けているんですけど、原稿料を言うと一本5000円なんですよ。

今井 おお……。

吉田 でも、それにかけてる資料代は、月に7〜8万円、下手すりゃ10万円。百枚ぐらいCDを買った中から厳選した十枚ぐらいを紹介していて、それをやらないと説得力はでないわけです。

それが結果として他の仕事に繋がっていくので、それ単体で赤字か黒字かで考えちゃいけないんですよね。ちゃんとやればその先があるから、ほぼ確実に。

今井 そのアクセルを踏むか踏まないかって、なにで判断されてるんですか。

吉田 うーん、だいたい踏んじゃいますよね(笑)。実際それで長く仕事が繋がってきたから。早い段階でコストを考えてセーブしちゃうと、たぶん勝負には勝てないです。

今井 TAITAIさんは、下調べ完了の基準ってありますか?

TAITAI ぼくもさっき吉田さんがおっしゃったように“時間切れ”っていうのがだいたいの要因なんですけど。できるだけつかみたいなと思っているのは、その人に対する“引っかかり”ですね。

なんでこの人はこんなことを言うんだろう? とか、なんでこういうことをしているんだろう? とか、なにか自分の中で引っかかる部分が見つかるかどうかは結構気にしています。

吉田 自分なりの切り口が欲しいわけですね。

今井 読んだ記事やブログはどこかに溜めておくんですか? 面白かった部分をWordにコピーしておくとか。

TAITAI それはやりますね。

吉田 ボクもやります。そして、読まれたら恥ずかしそうなブログがあったら、本人の目の前で朗読はよくします。

TAITAI あはは。ちょっとベテランの方だったら、若い頃のインタビュー記事を持っていくだけで「わー!」ってなりますよね。ネタとしては持っていきます。

今井 電ファミ編集部は取材前に読書会ならぬ「ゲーム会」をするという噂をお聞きしました。下調べとして、数時間みんなで同じゲームをなさるんですか?

TAITAI はい、『ゲームの企画書』っていう連載のときだけ特別に。休日、会社の会議室に集まって、ゲームで遊んでなんだかんだと話し合うとか。

ゲームの企画書
ゲーム史に名を残した名作ゲームのクリエイターの方々に、製作時のエピソードをお聞きして、まとめていく連載企画『ゲームの企画書』。クリエイターの目線や考え方を通しながら、ヒットする企画(ゲーム)とは何か?時代を超えて共通する普遍性とは何かを探っていきます。
出典:「電ファミニコゲーマー」

今井 電ファミの記事は全体的にとても贅沢な作り方をされていますよね。

TAITAI 吉田さんもおっしゃってましたが、いわゆる普通の商業インタビューのコストで考えると数倍じゃきかないですね。そういう世界です。

吉田 それは、ちゃんと回収できる媒体になってるってことなんですか?

TAITAI 回収というよりは、実験的な取り組みとしてやらせてもらっている感じです。本業というか、社内で兼務しているメインの仕事が他にあるので。お金はそっちで稼いでという形ですね。

吉田 『ニコニコニュース』とか?

TAITAI そうですそうです。だからこれ単体で黒にしろって言われると苦しいですね。なのでまあ言われないように、他の仕事も頑張りつつ……。

吉田 『ニコニコニュース』の文字起こしがひどい問題は、ボクも当事者としてしょっちゅうボヤいてますけどね(笑)。

TAITAI すいません、若手中心のチームでやってるものなので、粗いところがあるかもしれません。

事前質問リストを送る理由/送らない理由

今井 質問リストは、事前に取材先に送られますか?

吉田 絶対に送らないです。送ったことがない。

今井 それはなぜ?

吉田 イヤだから。

今井 あはは。

吉田 女優さんとかの場合は、チェックが厳しいから事前に質問を送ってほしいって言われたりするけど。だいたいいつも担当編集者に「適当に送っておいてください」って言って、当日は全然関係ないことを聞きます。

今井 それで問題になることはないですか?

吉田 いままで怒られたことはないですね。最終的に記事が面白くなれば許してもらえるはずだ! と。

TAITAI ぼくは送るほうですね。電ファミは専門誌的な要素が強いので、メーカーとのかね合いでどうしても事前に資料を求められます。チクチクつき刺すような質問も、その時点で正直に書いておきます。

吉田 事前チェックの段階でそういう質問も入れておくんですか? 現場でいきなり言うのではなく?

TAITAI はい。やっぱりゲームの紹介としてインタビューするっていう文脈があるので、記事が完成したあとからなにか言われることが多いんですよ。なので、それを封殺するために「こういう趣旨でこういう切り口でやりますよ」ってことをあらかじめ送っておく。向こう側に覚悟を持ってもらう意味で、全部事前に伝えますね。

今井 宣戦布告していく感じですね。吉田さんは奇襲でいくタイプ。

インタビューの教則本なんかを読むと、よく「質問リストは事前に送りましょう」って書いてあると思うんですけども。

吉田 インタビューの教則本って、あれ全然役に立たないですよ(笑)。仕事で何冊か読んだことありますけど。「取材のときは革靴を履いていこう!」とか、そんなことから言われなきゃいけないのか! っていう。ボクは短パンにサンダルとかでも行っちゃうので。

アイドルに会うときはライブTを

今井 インタビュー現場に入るとき、なにか気をつけていることはありますか? 吉田さんは「とにかく敵じゃないことを相手に伝える」とおっしゃっていたかと思います。

敵じゃないということをアピールするのに、たとえばどんな手があるんでしょう。

吉田 よくやるのが、相手のグッズを身につけること。最近では、市井紗耶香さんのインタビューをしたときに『プッチモニ』Tシャツを着ていって、現場に入った瞬間に「欲しいー‼︎」って言われて(笑)。

今井 そのために仕入れたんですか?

吉田 当然かなり前に買っていたやつです。前日に探しまくって発見して着込んで。本当は『プッチモニ』ベースボールシャツもあったけど、それは発掘できなかったんですよね……。

今井 そういうグッズはいつかインタビューで使おうと思って買っておくんですか?

吉田 ですね。いつか役に立ちそう、みたいなもの山ほど買っていて。それひとつで敵じゃないことが伝わるじゃないですか。下調べと同じくらい、どんな格好していくかに時間をかけてます。部屋の物が多すぎてひどいことになってるから、グッズを探しながら、なにをやってんだ……と自分でもよく思いますよ。

今井 TAITAIさんはどうです?

TAITAI ぼくはあんまりにこやかにやり取りできるタイプではないというか、基本堅いんですけど(笑)。ただ、とにかくあなたに興味がありますっていう態度は出しますね。どんな話に興味があるのかを最初に伝えて。

吉田 「あなたに会いたくて来ました」「あなたの話が聞きたいんです」っていう、それにつきますよね。それが言えない人には会うべきじゃない、ぐらいの。

今井 興味が持てない相手にどうしてもインタビューしなきゃいけないときってないんですか?

吉田 若いときはありました。そういうときは、ひたすら相手のことを調べて、好きになれそうな接点を探して。その一点突破です。

インタビューは現場も原稿も“つかみ”が命

今井 さきほど質問リストは事前に送らないという話をされましたが、吉田さんは当日、質問リストは手元に持ちますか?

吉田 最近は、iPhoneにメモしておいて、忘れたら見る程度です。基本はアドリブでどこまでできるか。昔、現場に質問リストを持っていったら、「それ見せて」って言われて、2/3くらい削られたことがあって。だからいまはもう手ぶらです。

今井 大まかな流れだけ決めて?

吉田 “つかみ”の部分だけ決めて、あとはいくつかマストな質問を用意するぐらいですね。

今井 “つかみ”といえば、「インタビュー記事の最初の三行がつまらなかったらもうダメだ」ともおっしゃっていましたよね。

吉田 それはコラムでもなんでもそうですよ。最初の三行で宣伝色が強い質問をしてたり、つまらないやり取りをしていたら、読む気がなくなります。“つかみ”を意識していない記事は、「これ以上読んでもたぶん面白くならないだろうな」って。

今井 ここで吉田さんの記事をいくつか紹介をしたいんですけども。たとえば、『エヴァンゲリオン』主題歌などを担当された作詞家・及川眠子さんのインタビューは、冒頭がこうなっています。

──Twitterでは微妙に交流ありますけど、こうして会うのは初めてですよね。ボクらふたりの共通点は、百田尚樹さんにブロックされてるっていうことなんですけど(笑)。
(出典:吉田豪インタビュー企画:作詞家・及川眠子「たかじんはワガママで気が弱いオッサンです」

吉田 ダハハハ! まあ、冒頭で読ませるのはこういうやつですよね。

今井 これ、現場でも最初からこの話題を?

吉田 もちろん。

今井 そこは嘘をつかないんですか?

吉田 つかないですね。

今井 あと、これも面白かったです。田代まさしさんにインタビューされたときなんですけど、

吉田「田代さんて実は、梶原一騎先生や長渕剛さんと同じ乙女座のA型なんですよね」
田代「はい。格闘技好きな人が多いのかな」
吉田「犯罪傾向もありそうです」
(出典:『人間コク宝』吉田豪、コアマガジン)

これも、実際にこの話題から話し始めたってことですよね。事前にこういう“つかみ”を相当練っていかれるんですか?

吉田 そうですね。相手が興味を持ちそうな時事ネタや、相手との関係性の説明みたいなものが多いです。

よくインタビュー記事で「リード文を書いてください」って言われるけど、ボクはいらないと思ってるし、欲しいならあなたが勝手に書いてくださいってスタンスなんですよ。代わりに、「どういう人で、どういう流れでインタビューにきました」っていう、リードの役割をするような発言を冒頭に入れていれば。

たぶんボクの原稿を見ると、どれもリード文はないか、もしくは編集者が書いています。

今井 なるほど。TAITAIさんは、質問リストを作って行かれるんですよね。さっきの話だと。

TAITAI もちろん作って持っていきますけど、その通りに聞くかというとあんまり聞かないです。聞き逃しをなくすためにあとで見直すぐらい。たぶん吉田さんと違うのは、ある程度インタビューの最初に「なにを解き明かしたいのか」を宣言することです。

吉田 最初にテーマの設定をするんですね。

TAITAI そうです。そしてやっと話し始める。そうすると相手が気を使って、話したい方向に向かってくれるので。

今井 最初に提示したテーマ自体を否定されることはないんですか?

TAITAI ああ、なくはないですね。相手も突然言われるので解釈しきれないことはあると思います。でも、やりとりしていくうちに「なるほど、こういうことを聞きたいんだな」って伝わっていくので、最初に否定されるかどうかはそんなに気にしないですね。

聞きたい話がうまく聞き出せないときは「あえて黙る」「話題を変える」

今井 インタビュー中によく困るなあと思うのが、聞きたいことをうまく聞けないこと。宣伝内容しか話してくれなかったり、どこかで聞いたことのあるような話しかしてくれなかったり、本人が気持ちいいことをずっと語られてしまったり……。そういうときはどう対処されるのかなと。

吉田さんは著書の中で、すでに知っている話をされたらひたすら笑顔で「その話、僕も大好きなんです」と言って、相手に他の話をするよう誘導すると発言されていますが。

吉田 それはよく使います。「それ、いい話ですよねえ!」って、先にオチを言っちゃったりとか。

今井 ははは(笑)。それはやっぱりちゃんと話題をずらしてくれるものなんですか?

吉田 ええ。トークイベントでもたまにやりますね。ネットで話題になっているようなことをここで話してもしょうがないじゃんって。裏ネタを知っているならともかく。であればオチを先に言ったり、「知ってる知ってる。次いこ!」って圧をかけます。

今井 圧をかけるという話でいうと、吉田さんは相手が答えづらそうなときに「あえて黙る」とか。

吉田 ああ、はい。やりますね。相手が答えづらそうにしていたら、つい「じゃあ次の質問……」ってなりがちですけど、そうじゃなくてこっちも黙ってみようかなみたいな。黙れば逃げられるというものではない!

今井 我慢比べみたいなことになるわけですね。TAITAIさんは黙るっていう手は使います?

TAITAI いや、あまり黙ったりはしないですね。どちらかというと話題を変えます。一度違う話題をふって、会話の節目をみてまた聞きたかった質問に強引に戻すとか。

素人が読んでも伝わり、マニアが読んでもおもしろいものを

今井 逆にインタビュー中「絶対に聞かない」と決めていることはありますか? 

吉田 「あなたにとって〇〇とは?」は聞かないし、「読者に向けてメッセージをお願いします」も聞かないし。「この作品の見どころは?」も絶対聞かない。テレビの30秒くらいの尺で使うような質問はしないです。

今井 朝の情報番組で挟まれる、30秒程度の宣伝コメントのようなものですね。

吉田 その短さで伝えるようなことをボクのインタビューでやってもしょうがないから。

今井 他にもあります? 定型句みたいなの以外で。

吉田 なんだろうなあ。なるべくどうでもいい話をするっていうのは心がけていますね。あまり他では聞かれていないような内容を。作品の話はそんなにしないで、その人を掘り下げます。

TAITAI “そもそも”的な質問はされるんですか? たとえば、俳優さんに「そもそもどうして俳優をやっているんですか」とか。

吉田 そういう“経緯”は、逆にどう端折っていくかを考えます。その人を知らない人が読んだら面白い記事にしたいけど、マニアが読んでも面白いものにしたいので。

だから資料を集めるのって、その人自身のデータが欲しいというよりは、他の人が何を聞いてるかを集めていることのほうが多いんですよね。この質問は毎回されてるなとか、 これを聞かれるとなんかピリッとしているなとか、そのデータを集めています。

TAITAI  そうすると気になるんですけど、 現場では他のインタビューを前提でぼくらは話すじゃないですか。でも記事にするときは、その前提を知らない読者が対象だから、ちゃんと前提部分も補足して記事にしなきゃいけない。そこらへんってどうしてます? 

吉田 思い切ってごっそり削るくらいの感じですね。ここは言わなくてもわかるよねえ? ぐらいの。

TAITAI ははは(笑)。割り切っているんですね。

ぼくは記事にするときはその記事単体で完結するようにしたいんですよ。知名度がそこまでない人を取材することも多いので、客観的にみて「この人はどういう人でどう面白いのか」っていうのを伝える必要があります。それは盛り込んだり追記したりっていうのは心がけていますね。

吉田 ゲームだと記事にするときに宣伝の絡みがあると思うんですけど、宣伝臭が出ないようにするとかは念頭におきますか?

TAITAI そうですね。まあただ電ファミは、わりと最初から宣伝じゃない話を聞きにいっちゃってます。宣伝っぽくならない内容の記事を、発売日直前などのタイミングだけ合わせて作って、アクセスが最大化するようにしていますね。

吉田 そういうときはノーギャラで取材してるんですか?

TAITAI ノーギャラでやる場合ももちろんあります。告知だけだとなかなか読まれないから、それやるぐらいだったらちゃんと面白い話をしましょうよって。お金をもらっても変に宣伝っぽくしないですし、そこは取材先も分かったうえでお願いしてくれるので。

今井 『ゲームの企画書』では最長7〜8時間インタビューされたこともあったそうですね。

TAITAI 話が盛り上がって自然とそうなったんですよね。ゲームの告知の場合は向こうが好意的なことが多いので、ぼくがもっと話を聞きたいと思ったら付き合ってくださるんですよ。それは非常にありがたいです。

オフレコだけど面白い話、記事にする? しない?

今井 ゲームなどの宣伝となると「これはオフレコなんです」みたいな話も多いんじゃないですか? たとえば、本人はオフレコだと思ってる、でも聞き手としては別に記事にしてもいいんじゃないかっていう話を聞いたときには、それをいったん記事にしちゃいますか?

TAITAI しちゃうタイプですね。現場ではとにかく面白い話をして盛り上がって。相手が「喋りすぎちゃったかな……」と思うようなことも、いい原稿にして送りつけて、「まあいっか」と思わせると。

吉田 ボクは、聞いたその場で説得ですね。「絶対載せたほうがいいですよ、めちゃくちゃ面白いですよ!」みたいな(笑)。

今井 でも、このネタはもう本当にオフレコだっていうときは話を止めます? インタビュー時間は限られているし、記事にできない話を聞いても意味ないといえばないじゃないですか……?

吉田 注意することはたまにありますね。「そんなの書けるわけないじゃないですか!」って(笑)。で、それ込みで書く。

TAITAI ぼくはついそのまま聞いちゃいます。楽しいから。

吉田 まあでもだいたいね、現場で笑えるようなことはたぶん読者も笑えるし、記事にしてもプラスになりますよ。明らかな犯罪行為とか、なにか問題が出そうなこと以外はだいたいOKにしてます。「まあ時効ですからね!」って背中を押して。

今井 そうすると相手はガーッと喋ってくれるわけですね。

吉田 そうです。なので「セーフですよ!」って言い切ります。

緊迫感のあるインタビューは、そのままドキュメンタリーに

今井 吉田さんって、いまでこそ『情熱大陸』に出られたり、この人のインタビューは本物だっていう世間の目があったりするじゃないですか。

吉田 あるんですかねえ。

今井 そうなる前と後で、やりにくくなったとかあります?

吉田 うーん、やりにくくなりそうだと思ったら意外と逆でしたね。「そんな人が来るんだったらちゃんと話さないと」みたいな。舐められて全然話そうとしてくれないようなケースは減りました。

今井 よく話されてると思うんですけど、樹木希林さんの話は恐ろしいですよね….…。

吉田さんの本の帯に“本人よりも本人に詳しいインタビュアー”と書かれているのを読んだ希林さんが、インタビューの最初に「あんた私より私に詳しいらしいわね」って。

吉田 ええ。「今日はインタビューを楽しみにしてます。知らない話を聞けると思ってねえ」って。1〜2時間過ぎたぐらいで「まだ私の知らないエピソードが出てこないんですけど?」というかわいがりを受けましてね(笑)。まあでも、あれはあの人を取材すれば誰もが経験するやつだと思うんですよ。

今井 そうなんですか?

吉田 いろんな人が経験していたことを、そのままドキュメンタリーっぽく記事にしたのが、ボクが最初だったっていうだけだと思うんです。みんな同じようにかわいがられても、 記事上では盛り上がってるふうにするんでしょう。ボクはそれを一切しなかった。

今井 なるほど。

吉田 自分だけが辛い思いをするのは嫌じゃないですか(笑)。読んでる人も一緒に胃が痛くなってほしいなあと。

今井 TAITAIさんはスタジオジブリの鈴木敏夫さん『週刊少年ジャンプ』の名編集長・鳥嶋和彦さんなど、厳しそうなイメージのある方々にもインタビューをされてますが、いかがでしたか?

TAITAI うーん、もうなすがままですよ。鳥嶋さんのときは取材中にダメ出しをいただきました。「日本語の使い方がなってない!」とか。

今井 おお……。

TAITAI ひたすらダメ出しされるみたいなのが2時間ぐらい続いて。ただ、それも含めてやっぱりやりとりは面白いわけで。

今井 テンションが下がったりはしない?

TAITAI ぼくは下がらないですね。むしろ上がるかもしれない。「なにくそ!」と(笑)。

今井 TAITAIさんはそういうピリピリした空気を記事にはされないんですか?

TAITAI そこそこはしますよ。ただ相手が良く見えなくなるのは嫌なので、削ることもあります。

今井 インタビュー中にメモはとられますか?

吉田 全然とらない。話に集中していたいんですよね。

TAITAI ぼくはちょこちょことりますね。その場でなにか引っかかったことや疑問に思ったことを書き留めておきます。

今井 録音したテープの文字起こしは人に任せてます?

吉田 任せてます。たまに業者にお願いするとびっくりするんですよ! ひどくて。

専門用語が分かんないのはしょうがないけど、いらないところは完全再現していて。「えっと」とか「あのー」までそのまま。そこは端折っていいじゃん! みたいな。

TAITAI でも口頭だと正確な表現じゃなかったりするじゃないですか。そこもある程度整えてもらいますか?

吉田 ある程度、ですね。TAITAIさんは業者に任せてます? それとも若手?

TAITAI 若手ですね。育成をかねて。

吉田 若手の文字起こしって、正直下手じゃないですか。たぶん、『ニコニコニュース』はその弊害だと思うんですけど。

TAITAI (苦笑)。ただ、若手だとどこを削っていいかもわからないと思うので、一回すべて文字に起こさせないと怖いなあと。教育をかねて任せる場合は、ちゃんと読める状態まで直してもらいます。音で聞こえたままではなく、文として成り立つように。それがそのまま載るわけじゃないですが、構成の一歩手前、二歩手前くらいの段階にはしてもらいますね。

「短い記事のほうが読まれる」のウソ

今井 取材までのお話だけでなく、今日はインタビュー原稿の作り方というところまでお話を聞いていきたいなと思います。

吉田さんは書き出しの三行で読者の心をつかめばリード文はいらないという話をされましたが、TAITAIさんの原稿はリード文をとても丁寧に書かれている印象があります。そのあたりはどう思われましたか?

TAITAI  いや、なるほどなあと思いましたね。最初の“つかみ”が重要っていうのは特にネットではより顕著になってきていて。ぼくはライターがあげてきた原稿は、時間がなくても見出しとリード文は徹底的に見ます。

見出しが悪かったらそもそもクリックされないし、冒頭の何行かがつまらなかったらその先は読まれないので、そこはもっと当たり前に気をつけていいんじゃないかなとは思いますね。

吉田 わかります。四コマ漫画のような起承転結の流れを考えてない人って多いじゃないですか。“つかみ”と“オチは重要ですよね。見出しに関しては、ボクは編集部に任せていますけど。

今井 あ、そうなんですか。タイトルは……?

吉田 タイトルも一切関与していないですね。単行本のタイトルもほぼ自分でつけてないですよ。

今井 それは意外です。記事が出て、もっといいタイトルがあったんじゃないのって思うことはないんですか?

吉田 ありますね。ありますけど、基本はボクの仕事じゃないと思っているので。あまりにひどいときは、これはないよって言いますけど。

以前、空手家のインタビュー本を出したときに、編集部がタイトルを『空手バカ一代』(原作 - 梶原一騎、画 - つのだじろうによる同名の少年漫画が存在する)にしてきて、「そのままなのはさすがにアウトだから、せめて★ぐらい入れて!」って冗談で言ったら、本当に『空手★バカ一代』になってたんですよ(笑)。「もうそれでいいよ」って、それぐらい気にしてないですね。

今井 (笑)。TAITAIさんはリード文はもちろん、キャプションや注釈がすごく丁寧ですよね。 電ファミの記事って、分からない単語が出てきても絶対に説明されていて。

鈴木さんの記事でも、「宮崎駿とは」っていう脚注が500文字くらい……。あのレベルでやるのってどういう基準を置かれているのかなって思ったんですよ。

TAITAI どっちかというと、電ファミの場合はやりすぎって一度怒ったことがあります(笑)。 費用対効果が本当に悪すぎるんで。なので最近は1年前に比べると結構減っているはずです。

でも、インタビューで難しい単語を使ったり言い回しをしたりする人いるじゃないですか。それってどう書き換えてます?

吉田 基本、書き換えはしないですね。

TAITAI  書き換えないことで「小難しい人だなあ」みたいな味がでる場合もあるんですけど、 読者を置いてけぼりにしちゃいませんか。

吉田 だいたい僕は自分の発言で説明ですよね。脚注じゃなく、ボクの発言の中で「こういうことですよね?」って、現場でもなるべく説明を入れるようにしています。

TAITAI それは原稿をイメージして言っておくってことですか?

吉田 そうです。イベントでもだいたい難しそうな言葉がでたときは、同じように脚注を入れる感覚で横から補足するようにしてるんですよね。

今井 逆に、発言をしていないことっていうのは絶対に書かないんですか?

吉田 はい。基本的には。ただ、読みやすくするための文章の前後の入れ替えはいくらでもします。 「ちょっとさっきの話の補足ですけど」って、後から聞くこともあるので。

TAITAI 相手が口下手な方だと、こういうことが言いたいんだよねって整えて書くことはありますよね。

吉田 ものすごく細かく相手の言ったことを再現しちゃう人っているじゃないですか。だから、文章がつながらない部分をカッコで補足する人とか。

もちろん相手が言おうとしていないことは書いちゃいけないけど、読みやすく書き直すのはいくらでもしていいと思います。なんでそこを完全再現しようとしてんだろう? と思うようなインタビュー記事はよくありますよね。 あれ、読みづらくてしょうがない……。

今井 吉田さんはさきほど“オチ”という言葉を使われましたが、記事の最後はどう意識されてますか?

吉田 現場でこのままだとオチがないなあと思って、ずるずると取材時間を引っ張ることはあります。イベントでもなんでもそうですよね、最後にドカンと笑いが起きないとこのイベント締めらんないな、みたいな。そこは司会の腕もありますよね。

今井 司会の腕……。

吉田 ダハハハ! プレッシャーをかけたわけじゃないですよ? でも、「じゃあそろそろ時間なので今日の感想を」みたいな締め方をするのはすごく嫌で。

今井 TAITAIさんは締めの部分でなにか意識されていることはありますか?

TAITAI なにか印象的な終わり方をすることには結構こだわりを持っています。それが笑いなのか感傷的に終わるのか、どんな形であれ印象深くなるように。電ファミの記事はものすごく長いので、一読しただけではなかなか内容を理解しきれないんですね。

なので、締めの部分で「要はこういう話で、こういうところがすごくて、こう面白かったよね」っていう確認を読者に対してする。その役割として、締めというのは意識しています。

今井 それはSNSでの拡散を意識して?

TAITAI 拡散というよりは読了感ですかね。 それが結果的には拡散に繋がるんですけど、「いいものを読んだなー」とか「そうそう、自分もそう思ってたんだ」っていう気持ちを持ってもらえるようにと。そんな感覚です。

今井 おふたりともWebの中では記事が長いほうですよね。一般的には、短い方が読まれると言われていますが、どう思われます?

吉田 短ければ読まれるみたいな発想って本当に意味がわからなくて。紙媒体ならわかりますよ、ページ数に限りがあるから。でもネットの武器は、長い文章でも載せられることじゃないですか。ちゃんと中身があるものだったら、長いほうが喜んでくれる層って絶対いるし、想像以上に多いんですよ。よく「ちょっと長いから2000字ぐらい削っておきました」とか言われることがあるんですけど……。意味がわからない。

TAITAI ぼくも長いことでデメリットを感じたことはないです。長いインタビュー記事でよくあるのが、5回くらいに更新日を分けちゃうやつ。ぼくはむしろあっちのほうがデメリット多いと思っていて。本当に面白いものだったら、ドカンと置いて最後まで読ませるほうが満足度も高いし、実際読まれるんだろうなっていう。そこは確信を持ってます。

吉田 ネットの感想を見ると、「長いけど面白い」とか「長いけど読んじゃった」みたいな意見がたくさんありますよね。長いと読まれないっていう思い込みがあまりにも強すぎる。

ボクはインタビューって完全にリズムだと思ってるんですよ。朗読してみて、いかにリズミカルに読めるか。それが成立してればどんなに長くても、読むだろうなって。

TAITAI テンポ感を意識してる方って少ないですよね。そもそも読むことそのものが気持ちよくないと長文は進まない。実はここが一番肝だと思うんですけど、あまり言語化されていないというか。

今井 もしおふたりの後輩が「もっと文章のテンポをよくしたいんです」って言ったら、まずなにをしろっていますか?

吉田 やっぱり書いた文章を朗読することなのかなあ。あと、面白いと思う文章を読んでみて、違いを感じてみることなんですかね。勝新太郎さんや梶原一騎さんがボクが思う美文家なんですけど、やっぱりリズムがいいんですよね。すごく流れるように読ませる。たまに読むと、「うわー、これは勝てない」と思って。

ボクはそんな美しい文章を書けるタイプじゃないんで、せめて読みやすいインタビューやコラムを書くことは心がけてます。

TAITAI ぼくは編集者としてチェックするときに、 「引っかかる」って評をよく入れるんですけど。

今井 「引っかかる」というコメントだけを書くんですか?

TAITAI はい。読んで、「ん?」って引っかかるときがあるんですよ。言い回しが分かりづらいとか、難しい単語があるとか。

引っかかる箇所が多い文章っていうのは気持ちよく読み進められないので、そうならないように言い回しを変えたり、長い文章を区切って合いの手を入れて読みやすくしたり。そういうテクニックを駆使しながら、どういう理由で修正したかを説明するようにしてますね。

ニュースバリューよりも、「本音」

今井 では、ここからは質疑応答にまいりたいと思います。会場でなにかおふたりに聞きたいことがある方は、ぜひ質問していただければ。

質問者① そのジャンルの中では有名人だけどお茶の間では知名度が高くないような方をインタビューするとき、どんなふうに記事を仕上げますか? 一般的にはこのネタはウケがいいけれど、ファンにとっては聞き飽きたような話だろうなってことが、取材していると多々あって……。

吉田 ボクがアイドル取材をするときに大事にしているのが、「いかに刺激的か」なんですよね。よく他のアイドルインタビューを読んでいてモヤモヤするのが、完全にファンクラブの会報みたいになってることなんですよ。外にまったく届かないようなことをひたすら拾っていくような記事って、ファンしか読まない。ボクがしょっちゅう使うのは、「ぶっちゃけ、アイドルの収入で食べれてますか?」とかですね。

今井 ははは(笑)。

吉田 みんなそれは知りたいじゃないですか。ファンじゃなくても知りたいし、マニアも知りたいし、向こうも「どこまで言っていいかはわかんないけど話したくはある」っていう内容で。マニアもそうじゃない人も知りたい話を、どう入れていくかなんですよ。とにかくファンクラブの会報パターンを避けることです。

TAITAI インタビューは「本音を語ってもらえるかどうか」が全てだと思います。本音であれば、世間にとって大きな話題じゃなくても面白い。鳥嶋さんが言うところの「作家には、描きたいものじゃなく描けるものを描かせるべき」って話と同じですよね。つまり、その人の中にあるものを引き出すことが大事なんです。

質問者② 記事を書くとき、「インタビューを終えて」みたいなひと言を記事の締めに付け加えてほしいと言われることがたまにあって。ぼくはあまり好きではないのですが、おふたりはどういうふうに捉えてますか?

吉田 ボクはほぼ書いたことがないですね。阿川佐和子さんの連載にはそれがありますけど、阿川さんの場合はインタビュー後記が記事の答え合わせになることもあるから、ちょっと面白いんですよ。現場がピリピリしていたっぽいことのヒントが書いてあったりとか(笑)。でも、そういうのは何かあったときしか書けないですよね。

TAITAI ぼくは結構書くタイプですね。さっき言ったように、長い文章を改めて理解してもらうためという目的を持って書くことが多いです。ただ、なんていうんでしょう……ライターさんが書いてくれるあとがきって意味のない話が多いですよね……。

吉田 たぶんライターじゃなくて、編集者が書くものなんじゃないですかね。

質問者③ ある企画を「紙」と「Web」のどちらで出そうか迷ったとき、どういう違いを持って使い分けますか?

吉田 「紙」だと、基本炎上はしにくいですよね。批判したいがためにわざわざお金を払うっていう人はあまりいないので。だから、炎上してもいい覚悟で炎上しそうなものを「Web」で出すのはありだけど、わかる人にだけわかってほしいんだったら「紙」のほうがいいんでしょうね。

TAITAI 発行部数が読まれる人数の限界である「紙」に比べて、「Web」は炎上であれなんであれ、面白い記事であればファンを越えて読まれる可能性があります。

一方で、Web記事の炎上“あるある”で言うと、クラスタAに向けた記事がクラスタBに届いて批判されることです。だれが読んでも刺されないように補助線を張るのは、Webメディアの編集としては基本スキルだと思います。

吉田 デリケートな話題を扱って、たくさん読まれたけど全然問題にならなかったときのやった感!ってありますよね(笑)。

最近だと『怒髪天』の増子さんが暴力の話をするインタビューをやったけど、もういまの時代なら叩かれてもしょうがないような内容だったのに、 何もなかったんですよ。批判ゼロで。

今井 それはなんでそうなったと思われますか?

吉田 読後感ですよね。本当にバカ話になっていたのと、ここを載せたら引かれるだろうなっていうポイントだけは削ってたことですかね。野生の勘がうまいこときいて。

今井 なるほど。ありがとうございます。

今井 はい、じゃあそろそろ……。以上をもちまして、イベントは終了になります。

吉田 締め、大丈夫ですかそれで?

今井 いや、正直、質疑応答の間ずっと今日どう締めようかを考えてて……。

吉田 それじゃだめなんですよ! 今日のオチは簡単! 最後に、「あなたにとってインタビューとは?」って聞けばよかったんです。

会場 (爆笑)。

今井 べ、勉強しますっ! 以上「インタビューの『マイルール』」吉田豪さんとTAITAIさんでした! ありがとうございました!

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①神保町編集交差点第3回のチケット、絶賛発売中です。詳細は下記リンク先をご覧ください。

「Maybe!」編集長 小林由佳×「AM」編集長 金井茉利絵 「『私ならぜったい読む』をつくるために」

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ライティング:チャン・ワタシ
撮影:飯本貴子
編集:今井雄紀株式会社ツドイ

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