見出し画像

総合的な探究の時間を創る(6)

4. 国研教育課程研究指定校事業「学びに向かう探究学習」総括と教員研修

おはようございます!毎週日曜日更新、「総合的な探究の時間を創る」第6回目となりました毎週、ご高覧いただきましてありがとうございます。とても励みになります!   

国研教育課程研究指定校事業「学びに向かう探究学習」全体の総括と教員集団にそれを可能とした教員研修について紹介していきます

形成的評価法の研究・開発では、1年次より探究学習の前後の変容を明らかにするために「東百舌鳥 Style マインドセットに関するアンケート」を実施し「生徒の変容」の分析を行いました

総合的な探究の時間を創る(5)掲載 「東百舌鳥 Style マインドセットアンケート」問30
総合的な探究の時間を創る(5)掲載 「東百舌鳥 Style マインドセットアンケート」問26
総合的な探究の時間を創る(5)掲載 「東百舌鳥 Style マインドセットアンケート」問17
総合的な探究の時間を創る(5)掲載 「東百舌鳥 Style マインドセットアンケート」問14

これらの結果より、協働して「探究学習」に取り組むことで「自己有用感」「主体性」が高まっていることが分かりました。が、元々の数値が低いことも学校教育としての大きな課題です。全教科教育活動・教科外教育活動を通じて、引き続き、検証を進めていきます

探究のプロセスを繰り返し設定したことによる「生徒の変容」の一例を紹介します。
A1.「さかい探究学習」では、内容を深めるというより、気の合うメンバーで楽しく進めることを中心に考えて実践した
A2.「北海道探究学習」では、修学旅行で、実際にKさん(漁業)に話を聞いてみると、気になることがたくさん出てきて、大阪に帰ってからもSNSを使って、取材を継続した。実践していくうちに、どんどん良いものになったから、内容ももっと良いものにしようと取材を続けた(総合的な探究の時間を創る(5)掲載 生徒プレゼン資料(2)
A3.「SDGs探究学習」では、早くからテーマを絞って、企業への取材ができた
としています
振り返り通り、「さかい探究学習」の成果物と「北海道探究学習」の成果物では、探究の質が明らかに異なります。Kさんに聞き取りを継続していくなかで、北海道の漁業の後継者問題をそのデータを基に認識し、その内容をグラフ化・整理をすることで、主体的・対話的で深い学びの実現に繋りました

各単元で実施している振り返りで、「自らの学びの意味付け」「価値付けによる自覚化」「他者との共有化」を促し、振り返りを通して、自分の人生や将来について考え、学んだことを自己のキャリア形成の方向性と関連付けさせています

さらに、学識経験者から、探究学習における主体性評価(「探究学習」を行ったことにより学ぶ意欲がどう伸びて、学力がどう培われていくのか、また、それを実証するためのエビデンスとして、生徒の変容をどう評価していくのか)に関する指導・助言を受け、研究を進めています。その際、「協調学習」との関連性についても研究を深めているところです

国研・研究協議会を受けて
令和2年2月5日の文部科学省での国研・研究協議会では、後期中等教育学校の関係者約 100 名が参加され、研究発表の後、4名1組でグループを作り、実践報告の内容を中心に各校の実情も踏まえて、KJ法を用いて「総合的な学習の時間」の取組みの成果と課題について協議、ワールドカフェ方式で、グループで協議した内容を模造紙で示しながら全体で共有しました。研究協議では、探究学習における「仮説」の設定の仕方や関連単元配列表の活用方法について闊達な議論が交わされ、引き続き、研究開発・実践を進め、その成果の公表に努めてまいります

令和2年2月5日 文部科学省での国研・研究協議会
令和2年2月5日 文部科学省での国研・研究協議会

関連単元配列表の活用とカリキュラムマネジメントの充実・教員研修について
 
総合的な探究の時間では、各教科・科目等で身に付けた資質・能力が存分に活用・発揮されることで、学習活動は深まりを見せ、大きな成果を上げます。そのためにも、各教科・科目等で身に付ける資質・能力について十分に把握し、総合的な探究の時間との関連を図るようにすることが必要となります
次の資料は「総合的な探究の時間」全体計画を、実施計画に落とし込むために整理したものです

GS(総合的な探究の時間)実施計画 論点整理

学校の教育目標と学習指導要領の目標を踏まえ、総合的な探究の時間の全体を通して、学校として育成をめざす資質・能力は①から⑧の力で、それを、さらに具体的なCompetenciesで表したのが次の表です

育てたい力(Competencies)

それらを、「資質・能力の三つの柱」である、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力」「学びに向かう力、人間性等」に整理していきました。「資質・能力の三つの柱」をそれぞれバランスよくふくらませながら、生徒たちが大きく成長していけるようにする役割が期待されており、各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら育成していく必要があります

令和元年7月18日の午後、教員研修を行い、GS(総合的な探究の時間及び総合的な学習の時間)研究委員会 川瀨 委員長より、視察させていただきました北海道教育大学附属札幌中学校さん、北海道立浦河高等学校さんの先行実践を学ばせていただき、その成果を先ず、教員全体で共有しました

令和元年7月18日 教員研修

次に、学校経営計画、【GS(総合的な探究の時間)実施計画 論点整理】、【育てたい力(Competencies)】を基に、本校の「ディプロマ・ポリシー」を、総合的な探究の時間「学習指導要領 第1の目標」に沿ったcompetenciesに整理し、各教科ごとに、総合的な探究の時間「全体計画」「実施計画」・教科書・シラバス等を基に「関連単元配列表」の作成に取り掛かりました

令和元年7月18日 教員研修

具体的には、「総合的な学習・探究の時間」の単元名・【育てたい力(Competencies)】より育成をめざす資質・能力を各月ごとにまとめた表をトータルプラン推進室・GS研究委員会で作成しました

Competency-based 関連単元配列表
「総合的な探究の時間」拡大

上掲「Competency-based 関連単元配列表」一番上の行がそれに当たります
研修では、各教科毎に、全学年で開講している科目の単元名を記入、その単元で育成をめざす資質・能力を【育てたい力(Competencies)】の「養う力」より選択し、夏期休業中に全科目について作成することとしました

2学期に入り、各教科毎に作成した関連単元配列表をまとめたものを、経営戦略会議・トータルプラン推進室で共有し、「総合的な探究の時間」と各教科・科目で、それぞれ育成したい資質・能力(Competencies)を結び付け、「関連単元配列表」を活用し、教科横断的な学びをどう創り出すのか議論を深めました。並行して各教科・コース会議でも議論を深めていきました
【育てたい力(Competencies)】の1から8を色分けして分かりやすく俯瞰できるように示しました(1:ピンク、2:緑、3:紫、4:黄、5:朱、6:青、7:若葉、8:橙)

「関連単元配列表」について、学識経験者として会議に入っていただいています本校情報科非常勤講師で、大阪府立大学・畿央大学・帝塚山学院大学 非常勤講師の 稲川 孝司 先生に指導・助言をいただきました

整理します。「関連単元配列表」は、総合的な探究の時間における単元と、各教科・科目等の単元を配置することに加え、相互を関連させることで、1 年 間の流れの中で各教科・科目等との関連を見通した年間指導計画(単元配列表)を作成したものです。特に、単元名や学習活動だけでなく、育成をめざす資質・能力が記され、それらが相互に関連することが示されれば、それぞれの学習活動は一層充実し、資質・能力が確かに育成されるのです

単元配列表1年.pdf 】 【 単元配列表2年.pdf 】 【 単元配列表3年.pdf

それぞれの学年で育成をめざす資質・能力に関しては、次の資料をもとに考察しています

GS(総合的な探求の時間)実施計画 論点整理.pdf】 【 育てたい力(Competencies).pdf

育成をめざす資質・能力で整理した「関連単元配列表」を作成したことで、総合的な探究の時間と各教科・科目等で育成される資質・能力の関連性を、教育課程のなかで俯瞰的に捉え、新教育課程に基づいた、組織的かつ計画的な教育活動の質の向上を図っていきました

さらに、各教科・コースにおける、育成をめざす資質・能力で整理した「関連単元配列表」作成の過程で、ディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーの3つのポリシーが意識されるようになり、カリキュラムマップの作成、学習効果の最大化を図る新教育課程編成へと取組が進んでいます

連載「総合的な探究の時間を創る」は今回で最終回となります

「総合的な探究の時間」の取り扱いにお困りの現場の先生方の何らかの手助けになれば幸甚です

次回は、私が大阪府立東百舌鳥高等学校・大阪府立箕面高等学校の校長職六年間で、先生方と協働して創ってきた教員研修にについて紹介していきます

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?