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教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(5)

「総合的な探究の時間とカリキュラムポリシーについて」

おはようございます!
毎週日曜日更新、連続7回の第5回目となりました
毎週、ご高覧いただきましてありがとうございます。とても励みになります

今節では、「総合的な探究の時間」について話を進めます

高校においては、「総合的な学習の時間」の時代から継続して、3年生で真面目に取組ませるのか(受験勉強との絡み、単位数=授業時数を充分確保したい教科とのせめぎ合い、等)、誰が教案を作成するのか、担任が受け持つのか(HR+αと捉えられる担任の負担感)、そもそも進路学習・行事や修学旅行、学校行事、HR活動と、何でもかんでも教科目標に対して「不適切」な内容をも、「総合」に入れてしまっている現状があったのではないでしょうか

これは自省を込めて振り返りをしているものです
校長をしていた東百舌鳥高校で、平成30年度より2年間、国立教育政策研究所(以下、国研)「総合的な学習の時間」教育課程研究指定校事業 に取組みました
東百舌鳥高校では、さすがに「総合」に代えて「教科の授業」をすることはありませんでしたが、進路学習・行事や修学旅行、学校行事、HR活動と、「総合」に関連するだろうと推測で考えた内容を「総合」に入れてしまっていて、研究指定校1年目の秋に、文部科学省より 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官が学校訪問にみえられた際に、カリキュラム・シラバスをご覧になるや「不適切」と指導・助言を受けてしまいました(一刀両断に切って捨てられました)
国研研究指定校事業での学びが深まるにつれ、教科調査官の先生の、新学習指導要領、とりわけ「総合的な探究の時間」にかけられていた強い思いに理解が深まっていきます

平成29年度・30年度・31年度の国研「総合的な学習の時間」教育課程研究指定校事業で、教科調査官より作成とその活用を強く求められたのが(小中高全校種で)、「関連単元配列表(下図)」です

新学習指導要領では、教科・科目等横断的な「総合的な探究の時間」を教育課程の中核に位置付け、各教科・科目等との関わりを意識しながら、学校の教育活動全体で資質・能力を育成するカリキュラムマネジメントが求められています
「関連単元配列表」(Competency-based)の作成と活用は、カリキュラムマネジメントを図るうえでとても重要なツールであるとともに「思想」(教育観)なのです

「総合的な探究(学習)の時間」では、各教科・科目等で身に付けた資質・能力が存分に活用・発揮されることで、学習活動は深まりを見せ、大きな成果を上げます。そのためにも、各教科・科目等で身に付ける資質・能力について十分に把握し、「総合的な探究(学習)の時間」との関連を図るようにすることが必要です

「関連単元配列表」(Competency-based)は、「総合的な探究(学習)の時間」における単元と、各教科・科目等の単元を配置することに加え、相互を関連させることで、1 年 間の流れの中で各教科・科目等との関連を見通した年間指導計画(単元配列表)を作成したものです。特に、単元名や学習活動だけでなく、育成を目指す資質・能力が記され、それらが相互に関連することが示されれば、それぞれの学習活動は一層充実し、資質・能力が確かに育成されるのです

「関連単元配列表」(Competency-based)

東百舌鳥高校での実践では、各教科・科目における「関連単元配列表」(Competency-based)作成の過程で、ディプロマポリシー・カリキュラムポリシー・アドミッションポリシーの3つのポリシーが意識されるようになり、学習効果の最大化を図る新教育課程編成へと取組が進んでいきました。この取組は、箕高での「カリキュラムマネジメントで取組むディプロマポリシーの共有と実践」に発展的に繋がりました

箕高 学習指導室では、これまでのディプロマポリシーを踏まえたカリキュラムポリシーの策定にも、令和3度より取組み、ディプロマポリシーを14のCompetenciesに分類し、各教科が卒業時までにどのCompetenciesを身に付けさせたいのかを検討しました(下図)
この実践には、箕高「関連単元配列表」(Competency-based)を活用しています

ここから教科教育のポリシー(「Subject Policy」と呼んでいます)、カリキュラムポリシーの策定を進めていくのが今後の課題です

国研 教育課程研究指定校事業を経験して、

・高等学校の「総合的な探究の時間」は、小中学校の「総合的な学習の時間」との違いの明確化が求められていること(『自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決する』(新学習指導要領))、
・「探究」の質を上げること、
・「探究」がより自律的に行われていることに留意することを学びました
 
自己の生き方・在り方につながる課題を自ら設定し、その過程を大切にする、重視すること
高等学校ならではの各教科の専門性を強みに探究の質を上げていくこと
これらは、パフォーマンス課題の設定にも大いにヒントとなるはずです
 
さらに、国研 教育課程研究指定校事業では、形成的評価「東百舌鳥Styleマインドセットアンケート」を用いて、「グローバルマインドセット」「グロース・マインドセット」の観点で、「生徒の変容」を測りました
探究学習の前後で、「自分は人のために役立つことができる人間だと思う」の肯定的評価が10ポイント上がりました(有意水準5%で両側検定(対応のあるt検定)で有意)
ここから、「学びに向かう探究学習」に取組む過程で、協働して「探究学習」に取組むことで、「自己有用感」「主体性」が高まると言う新たな仮説が設定できました

形成的評価「東百舌鳥Styleマインドセットアンケート」を基に箕高でもマインドセットアンケートを作成しています。地歴公民科の授業で形成的評価のツールとして活用してもらっています

参考までに、「MINOH Style マインドセットに関するアンケート ver.1」PDFファイルを添付しておきます

最後に、冒頭に触れた「修学旅行」や「進路学習・行事」が「不適切」とならないためにはどのような観点が必要かについて述べます
進路学習・行事のここを押さえていれば、3年時の「総合的な探究の時間」企画・立案も苦にならないと考えます

ポイントは「探究の過程に位置付ける」こと

学習指導要領・解説から抜粋・整理します

「修学旅行と関連を図る場合」

1 その土地に行かなければ解決し得ない学習課題を生徒自らが設定していること
2 現地の学習活動の計画を生徒が立てること、その上で、現地ではインタビューや調査等の機会を設けるなど生徒の自主的な学習活動を保障すること
3 事後は、解決できた部分をまとめ、解決できなかった部分を別の手段で追究する学習活動を行うこと
一連の学習活動が探究となることで、総合的な探究の時間と特別活動とを関連させて実施することが考えられる

探究の過程に適切に位置付けるとは
1 設定した探究課題に迫り、課題の解決につながる体験活動であること
 予想を立てた上で検証する体験活動を行ったり、体験活動を通して実感的に理解した上で課題を再設定したりする
探究課題の解決に向かう学習の過程に適切に位置付けることが欠かせない
2 生徒が主体的に取り組むことのできる体験活動であること
生徒の興味・関心に応じた体験活動であること

「総合的な探究の時間と進路実現」

人間としての在り方を真摯に希求することを基底に据えながら、自分の個性の伸長や自己実現などとの関連から、進学や就職などに関わる個人としての生き方や現代社会の諸課題に関わる社会の一員としての生き方などについて考えることが大切である。このように自己の在り方生き方を考えることは、社会とのつながりを求める高校生にとっては欠かすことのできない重要な学習である
自己の希望する進路について、近隣の大学・専門学校等を訪問したり、関係施設・機関等で就業体験をしたりするなどして、当該進路について調査し、さらに他の生徒とそれぞれの希望する進路に関して調査した内容について意見交換するなどして、理解を深めていくことが考えられる。こうした学習では、友達も含め様々な人との関わりを通じて、自己の将来や就職に対する目標が明らかになり、大きく成長していくことが期待できる。

職業や自己の進路に関する学習を行う際には、探究に取り組むことを通して、自己を理解し、将来の在り方生き方を考えるなどの学習活動が行われるようにすること

職業や自己の進路に関する学習とは
1 単なる大学調べや講話を聴くことだけではなく、生徒が自己の在り方生き方を自己の進路と結び付けて具体的、現実的なものとして考える学習
2 自己の進路を力強く着実に切り拓ひらいていこうとするための資質・能力の育成に資する学習
3 働くことや職業を自分との関わりで考えることや、自己の将来を展望しようとすることは、自
己の在り方生き方を考えることに直接つながる重要な学習

その際、課題の解決や探究活動を通して行うことが欠かせない

生徒が自ら職業や自己の進路に関わる課題を設定し、自らの力で解決に取り組み、その結果として生徒一人一人が自己の在り方生き方を真剣に考える学習活動が展開されることが求められる

例えば、就業体験活動や大学・企業等の訪問などを探究の過程に位置付ける場合においても、事前に様々な職業や研究領域などを調べ、そこから生徒が見付けた課題について、体験する職場や訪問する大学・企業等を探すことなどが考えられる。
さらに、体験活動や訪問先においても、そこで働く人と直接関わったり、目的と照らし合わせて考えたりすることなども大切になる。また、体験や訪問を終えた後も、単に感想を発表するだけでなく、課題や目 的に照らして何を考えたのか、さらにどのような課題が生まれてきたのかなどについて、レポートや論文にまとめたり発表したりして、さらに探究が連続することが重要である

東百舌鳥高校における「総合的な学習(探究)の時間」研究指定校事業の成果と課題については、全国に発信してきたつもりですが、改めて、noteの誌面を借りて発信していく機会を持ちたいと思っています

次回連載6回目は、箕高で三年間取組んできたことの成果(エビデンス)に触れながら、
仮説『カリキュラムマネジメントで、ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくことは、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に繋がる』についてのまとめに入っていきます

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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