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頭のなかにある思考のエッセイ

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自分のなかにもやもやと浮かぶものの輪郭をとらえたくて綴る、文章の置き場所。主に自分のための言葉たち。
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2021年7月の記事一覧

夜を「好き/楽しい」で満たしてゆく

雨の22時、リビングのソファに沈み、手のひらの画面に浮かぶアプリのアイコンに、右手の人差し指で触れた瞬間に気づく。 ああ、夜はスマホを使わないことにしたんだった。 「寝る前の数時間は画面から離れよう」と決意しては、無意識にスマホを手に取る自分に気づき、「なんて意志が弱いんだろうか」と自分を蔑むことを繰り返す。そうしてスマホをサイドテーブルに置くと、また手持ち無沙汰な時間がわたしを包んだ。 自分のための時間をとりたいから、スマホはオフに。なるべく目を休めたいから、テレビや

わたしの修行

「他人によく見られたい」という気持ちが、ものすごく強かった。いや、今も、強い。 その思考の源はおそらく「そのままの自分では認めてもらえない」というもので、それゆえにわたしは長らくの間、必死に格好をつけて、手柄を上げて、自分をよく見せようと躍起になっていた。 でも、このやり方には限界があった。 だからわたしは今、新しい「やり方」を身につける修行をしているのだと思う。 *** 突然だけど、先週の『関ジャム』を観た人はいるだろうか。 「急に何?」と思うだろうけど、先週の放

必要とされたかった「自分」

今から数年前の、ある夏の日。 副業のような気持ちで始めた「文章を書くこと」が、いつしか本業として大きな軸となり、だいぶ軌道に乗ってきた。 最初は自分から提案をして獲得していた仕事も、今では企業のほうから依頼がくるぐらいには、安定してきている。 次から次へとやってくる依頼、頻繁に光るスマホのメール通知。わたしの返事を待っている人が、こんなにたくさんいる。仕事を依頼してくれる人が、これだけいる。収入も、ようやく人並みになった。 でも。 なぜだか、自分の中の渇いた部分は、あま

ゆっくりの価値

「ゆっくりしゃべる人だなあ」 それが第一印象だった。 会社員時代、隣の席に座る10歳年上の女の先輩と仲の良い、別の部署の女性。 わたしと先輩は経理部に所属していたから、その人の所属部署で発生した経費の書類などを提出しにきていたのだと思う。 隣の席の先輩は、頭の回転が速く、仕事も話し方もテキパキとした人だった。わたしは先輩のことをとても慕っていたので、先輩が自分を疎ましく思わないよう、なるべくテキパキ話すようにしていた。 だから、普段スピーディな先輩と、スロウなしゃべり