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頭のなかにある思考のエッセイ

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自分のなかにもやもやと浮かぶものの輪郭をとらえたくて綴る、文章の置き場所。主に自分のための言葉たち。
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2022年4月の記事一覧

自分を、日々を、愛したいのなら

再会した瞬間に「ああ、やっぱり」と、目を細める。 ふわっと鼻を掠めるシトラスの香り、頭を撫でたときのふんわりした手触り。 「今のわたしには釣り合わないから」と手放したのは、わたしの方だったのに。あのあと、どんなに他の出逢いを繰り返しても、満たされなかった。 そうして元の鞘に戻り、「ああ、やっぱり、好きだ」と思ったのだ。 ……艶っぽいことを想像した人もいるかもしれないのだけど、これはわたしと、わたしのお気に入りのシャンプーの話だ(すみません)。 昨年わたしは「これだ」

NOと言える手渡し方

「人に対して頼んだり誘ったりするとき、なるべく相手が断りやすいように伝える」 というのを、ずっと意識してる。大先輩がそうしているのを見て以来、マネしていることだ。 ただ、「断りやすいように」って、とっっっても難しい。 *** 先日、こんなことがあった。 地元の友達に久しぶりに会いたくて、「実家に帰るタイミングでお茶でもどうですか」と声をかけた。 「でもまあ、その日は休日だから子ども達の都合もあるだろうし、難しければまた改めて」と付け加える。相手が断る道を残すためだ

自分を良く見せようとして

「上手くいくだろうか」「がっかりさせてしまわないだろうか」 そんな心配が、頭をぐるぐると駆け巡る。 掌にたっぷりと汗をかき、心臓は暴れ、胃のあたりはしくしく痛い。 昨年6月、じぶんジカン初主催のオンラインワークショップ直前の自分の様子だ。 人前で話すことが、本当に苦手で。 大勢の前はもちろんだけれど、2人以上の前で自分の話しをすることですら苦手なのだから、だいぶ重症だと思う。 話し始めてしまえば緊張は和らいでいくのだけど、今後こうしてイベントを開催するたびに心臓が暴れ

野次馬心で探らない

「人間関係において、何か意識していることはありますか?」と聞かれたら、真っ先に「野次馬心で人を探らないことです」と答えると思う。 野次馬。自分とは直接関係のないことに、興味本位で群がること。 わたしがここで言う(というか勝手に命名した)ところの(「野次馬心」とは、相手と自分の関係を築く上で必要のない情報なのに、自分勝手な興味で覗こうとする気持ちのことだ。 例えば、相手の収入の話。 わたしはこれまで「気になる」と思ったことが何度もある。他人の収入がどれくらいなのか、気にな

なんでもないものを、特別にする魔法

なんだか、どんよりとした一日。 仕事を終えて、夕飯の買い物をして、家へ帰る。すごく忙しいわけではないのに、わたしも夫も疲労感を背負ってぐったりしている。 湿った曇り空のせいか、低気圧のせいか、それとも花粉のせいか。あれこれ理由を考えてみても、だる重な身体の解決策にはならない。 気持ちが暗いし、身体も重い。しかしこれから夕飯をつくらねばならない。 どよどよと淀んだ空気が今にも部屋を埋め尽くしそうになったとき、ぱっと閃いてくるりと振り返り、夫に向かってこう言った。 「ね

自分の物語を、もっと。

海岸沿い。江の島をぼんやりと視界の隅におさめながら、ペダルを漕ぐ。 花冷えの今日は、頬を撫でる潮風がキリッと冷たい。冬と春の狭間のある日。風で運ばれてきた砂に車輪を取られないよう、わたしは必死でハンドルを握った。 今日は波がいいのか、サーフボードを抱えた人がわたしの自転車の前方をたびたび横切り、海へと吸い込まれていく。 今日は少し遠出をして、自転車で15分。江の島にほど近いカフェへ。オープンテラスがあり、店内は2階建の吹き抜けで、広々と心地よい場所だ。 普段文章を書く