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モノローグ台本 『ショージだよ!』

作・Jidak

    SE バーのざわつき

ごめん、マスター、じゃ、ビールもらおうかな。
なんかいつもより混んでるね、今日。ま、週末だもんね。
つか、遅いな、ショーイチ。

    LINEの着信音

あ、ショーイチだ。
「会社出る時つかまってさ。悪い、今から出る」だって。
まったく…。
あ、マスター、ショーイチちょっと遅れるみたい。ごめんね、
席、大丈夫? よかったー!
(ラインを入力)「平気。マスターに相手してもらってる」と…

    グラスを置く音

ぷはーっ。お疲れ、私。マスターも、乾杯! 
ん? ね、珍しいよね、ショーイチが遅れるの。いつも先に来てるもんね。
やっぱ転勤が控えてるから、引継ぎやら何やら大変なんじゃないかな。
え? あ、そうそう、春からアメリカだもん。ニューヨーク。すごい出世よね。

    氷の音

は? やだ違うから。
全然そんなんじゃなくて、ただの幼なじみだし。
だって私もうすぐ結婚するし、ショーイチもこの間連れてきてたでしょ、彼女。
え? そう、彰二、宮田彰二だよ。
ん? ああ、私が’ショーイチ’って呼んでるから? 
(笑って)マスター。それさ、もっと前に、いつだっけ、2年ぐらい前からだよね、うちら来てるの。
なのに、今聞く? タイミング。

あのね、あいつめっちゃ楽しいのよ。
小6の時だったかな、友達とゲームソフトを買ってもらうとかって話してたの。そしたらショーイチが来てさ、「俺もう持ってるし! 全クリしたし!」ってドヤ顔で言ったのよ。
でもそのゲーム、まだ発売前だったの。ウケるでしょ。
あとね、私がディズニーシーに行ったって話したら、
「俺なんかディズニーAもBも行ったことあるし!」って。
ディズニーAってなんだよ、でしょ。どういうマウント? でしょ、まったく、「こいつ、マジ、小学1年生レベル!」って思ったの。
だから3年前に同窓会で再会した時に、つい「あ、ショーイチ!」って呼んじゃって、「彰二だよっ」ってボケツッコミみたいになって、それが定着しちゃって。

あの頃と、あいつ全然変わってなくてさ、ほんと、楽しすぎるよ。

    LINEの着信音

あ、ショーイチだ。お、もうすぐ着くって。
あ、マスター、あれある? IPAのこの間お勧めって言ってた… そう、ラグニタス! たぶんショーイチそれを飲みたいって言うはずだからさ。

え? いいのって何が? 
気持ち? 
私の? 


(小さい声で)隠せないね、マスターには… 
(吹っ切れたように)いいの。こういうのもありじゃん。そう思うことにしたの」

    ドアが開く音

あ、ショーイチ! こっち! お疲れ!

(終わり)

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