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ラジオドラマ #3 『渋谷から始まる』

作・Jidak

登場人物
 武田 建成(けんせい)(けんぴょん)(25歳)
 武田 マキ(マキ)(32歳) 

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   SE カフェのざわめき

マキ 「いやぁ、すごいわね、渋谷。あれ、あのすごいの、スクランブルスクエアっていうのね。全然景色違うから、前と。あ、ごめんね、建成、オフィスの近くまで来てもらって。平日の昼間、よく時間とれたね、あ、リモートとか?」
建成 「あ、うん、まあ、そんなところ。それよりマキ姉、何年ぶり? イギリスに行ったの、俺が大学卒業する時だったから…」
マキ 「3年、だね。かなか帰れなくてね。おお、このカフェ、スクランブル交差点が見下ろせるんだね! 人多すぎでしょ。あれ? 少し痩せた? 弟よ」
建成 「え、そうかな…」
マキ 「どうなの、仕事は? 確か、IT系だったわよね。ハードでしょ、あの業界」
建成 「あ、うん。でも、ま、なんとか、ね」

建成(M) 「ロンドンでエリート街道まっしぐらの姉には絶対言えない、今の俺の本当の仕事」

建成 「マキ姉こそ大変だよね。海外で一人で生きていくって、俺には無理。ほんと尊敬する」

   SE 靴音、近づく

客 「あれ? けんぴょんさん、ですよね?」
建成 「あ、はぁ…」
客 「あ、嬉しい! この間の「レモンバトル4」の実況、めっちゃ楽しかったです! 続編も期待してます! じゃ」

   SE 靴音、遠ざかる

マキ 「え、今のは? ケンピョン? 何?」
建成 「あ、あの、実はさ、今、俺ユーチューバーやってて…」
マキ 「へ? ユーチューバー…? って、建成、仕事は?」
建成 「やめた、1年前に。で、その前からずっとやってたゲーム実況一本で食っていこうかと思って」
マキ 「会社、やめたの? そう… あ、ケンピョンって」
建成 「俺のチャンネルの名前。この間テレビに出たから顔バレもしてる。あ、でも本気なんだよ、俺。登録者数も20万人超えてて、って言ってもなんのことだがわかんないだろうけど」
マキ 「ユーチューバ―… ケンピョン…」

建成(M)「やば… 何か考え込んでるし。かなり重い空気になっちゃったよ。言うんじゃなかった…」

建成 「(おそるおそる)あの… マキ姉?」
マキ 「あ、ごめん。いや、どう話そうかなって考えてて。私さ、ロンドンでネコ飼ってる話したよね?」
建成 「あ、うん。茶トラだっけ?」
マキ 「そ、キキちゃん。でさ、今ロンドンで茶トラがブームになってて」
建成 「ふーん、で?」 
マキ 「でね、‘キキ&マッキー’って動画チャンネルが人気急上昇でさ」
建成 「キキ&マッキー… えっ! マキ姉!? マキ姉もユーチューバーってこと? え、真面目一直線のマキ姉が…」
マキ 「うちに遊びにきた同僚がおもしろ半分にキキの動画あげちゃってさ、それがものすごく評判がよくてね、そこから。まだ半年ぐらいかな、始めて。それにほら、私はあれだから、仕事しながらだから」
建成 「なんだよ。そうだよ、俺はガチだよ。魂削って作ってるよ」
マキ 「(笑って)大げさ。でも、見つけたんだね、やりたいこと。建成。ということなら… いろいろ教えてください、先輩」
建成 「怖い怖い怖い 切り替え早っ」
マキ 「(思いついたように大声で)あ!」
建成 「え、ちょ、なんだよ…」
マキ 「姉弟チャンネルを作るのとかどう? よくない?」
建成 「えーーー 」
マキ 「英訳もしてあげられるし」
建成 「マジで? そうか… ということは、俺、世界狙えるってこと?」
マキ 「(笑って)バカだねー」
建成 「あ、俺、あれ教えられるよ、うまいライティングの当て方」
マキ 「マジで? 今、ちょうど困ってたのよ。そこ、分かれ道よね、クオリティの!」
建成 「(笑って)似たもの同士だっつの」

二人で笑う

   M


(終わり)

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