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神奈川新聞記者の情報漏洩事件で考える「意見交換」と「漏洩」の境界線は?

神奈川新聞記者が親族に情報漏洩

神奈川新聞記者が会社に寄せられた情報を親族へ漏洩するという事案が発生しました。一体、どんな情報漏洩なのか。政府を揺るがす機密情報? ロシアや中国との秘密交渉、それともインサイダー情報とか。

そんなダイナミックな話ではありません(笑)。同紙記者が会社に寄せられた情報を家族に伝えていたのです。それもすごーくチープな内容で。

5月29日に発表された神奈川新聞のニュースリリース「読者からの情報の漏えいについて」から引用します。

弊社統合編集局の30代記者が、読者から寄せられた情報を第三者に漏らす事案が発生しました。概要や経緯について、発表いたします。記者は4月下旬、別の記者が過去に紙面で紹介した飲食店に関して読者から寄せられた指摘を、当該店を経営する家族に伝えました。その指摘を知った家族がSNSで関連する投稿をし、投稿を見た読者から情報漏えいを指摘されて問題が判明しました。

時系列でこのようにまとめられていました。

<経過>
3月下旬   神奈川新聞社の紙面で飲食店を紹介
4月26日  同店に関する指摘が読者から寄せられ、その情報に接した記者が指摘内容を同店経営者である家族に伝えた
同日  同店経営者は指摘に関連した投稿をSNSで発信
4月28日  投稿を目にした読者が本社に連絡
5月2日  記者に事実確認し情報漏えいを認める

3月に神奈川新聞で紹介された飲食店は同紙30代記者の家族が経営。同店に関する指摘が会社に寄せられそれを知った記者が家族に伝える。経営者(家族)は指摘されたことについてSNSに投稿し、これを見た読者が同紙本社に連絡。記者が情報漏洩を認めたという流れ。

トラブル内容がアットホームすぎて…。自治会の回覧板レベルの話でなんともです。

Twitterではより記者名、店舗名も明かされており、Googleの口コミをめぐるトラブルでした。余力があればお店側にも事情を聞いてみたいです。

騒動を受けて白々しい談話

◆取締役統合編集局長 秋山理砂の話
 日々、紙面やウェブサイトを通じて読者から情報提供を呼び掛けていますが、寄せられた情報は神奈川新聞の言論、報道のみに利用し、第三者への漏えいは決して認められません。適正な情報の取り扱いを厳守するよう記者教育を徹底してまいります。関係者と読者の皆さんに深くお詫び申し上げます。

会社側は情報漏洩を受けて記者教育を徹底といいますが、まあテンプレですね。

メディアが業務で知りえた情報を外部に漏らすのは言語道断、と言いたいですが正直なところこの程度の事態は常態化しているのではないでしょうか。

で、以前から気になっていたことがあるんですね。それは大手メディア記者と政治、行政、警察、司法関係者、各種団体、こういった取材対象との距離感なんですね。

記者が取材対象から情報をもらう、逆に記者側から情報を提供して、さらに情報を引き出す。これはありえることだと思います。

この場合、その報道機関だけが知りえた情報を取材対象に漏らすのは「漏洩」なのか、あるいは「意見交換」なのでしょうか。

死刑廃止集会で弁護士がポロリと

例えば死刑が執行されると東京早稲田の奉仕園という施設で死刑廃止集会が行われるんです。

その際、主催者の弁護士が状況を説明します。こんな風でした。

「前日に朝日新聞の記者から情報が入ったが、私もすでに聞いていた」

死刑廃止派はすごいもので活動家は前日に執行の情報が入るのです。死刑廃止の弁護士の情報源ですね。情報源というかお仲間なんですが。

ここで問題なのが朝日新聞の記者が業務上で知りえた死刑情報を外部に伝えていることです。これってバッチリ「情報漏洩」ではないでしょうか。

ただ死刑を考える報道の中で弁護士との「情報交換」「意見交換」と説明すれば問題ないでしょう。っていうか会社側も問題視するはずもないですしね。

死刑問題も然り、特に人権問題を取材していますと、マスコミの記者と活動家の距離感がすごく密で、それはもう一種の「運動体」化しているんですよ。だからたかが飲食店の口コミぐらい屁のツッパリにもならんです。

今回の神奈川新聞の情報漏洩問題は公益性もなく、社会的に実害がある内容ではありませんでした。しかしそれはたまたま、の話。

マスコミ記者が活動家ともはや一蓮托生になっている今、報道機関の「情報漏洩」に対してより厳しくみるべきだと思います。


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