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なぜ若者は位置情報共有アプリにどハマりしているのか?その心理を紐解いていく

現代の若者にとって、位置情報共有機能はコミュニケーションツールの1つ。テクノロジーの発展とともに、人々のコミュニケーションの取り方や価値観は大きく変化してきました。

その象徴とも言えたのが、今年の2月にサービスを終了した位置情報共有アプリの「Zenly」でしょう。

この「位置情報共有機能」に対して、「相手の行動を監視する機能」という印象がある人もいれば、「便利な機能」という印象がある人も居たりと、各個人で様々な印象があるかと思います。

今回はテクノロジーの発展で変わる人々のコミュニケーションの取り方から、若者はなぜ位置情報共有したがるのか、また位置情報共有アプリの代表的な存在であった「Zenly」がサービスを終了したことで続々と誕生し需要が高まる代替アプリについてお話ししていきます。


コミュニケーション手法の変化

リアルタイムのコミュニケーション手段は、技術の進化や社会のニーズとともに変化してきました。

電話
長い間、個人・ビジネス問わずリアルタイムのコミュニケーションとして「電話」が主流でした。それまで距離の離れた相手とは手紙や郵便などタイムラグの生じるコミュニケーションしかできませんでしたが、電話の誕生により、距離の離れた相手ともリアルタイムのコミュニケーションが可能とななりました。

メール
インターネットの普及とともに、「メール」が主要なコミュニケーション手段となりました。リアルタイム性を持ちながら、時間や場所に制約を受けずにやり取りできるため、電話よりも柔軟性があり、電話からメールへのシフトが進んでいきます。

チャット
スマートフォンの普及や、グローバルなコミュニケーションの需要増加に伴い、「チャット」が急速に普及し、テキストベースの文章で会話や情報共有が行われるようになりました。

ここで、メールとチャットは似ている気もしますが、チャットがより迅速なコミュニケーションを行えるため、現代社会のニーズと合致し普及しているようです。チャットの特徴は以下の通りです。
相手がオンラインであれば即座にメッセージを受け取れるため、メールよりもリアルタイム性がある
複数の人々とリアルタイムのやり取りが簡単で、短い文書でのやり取りがメインのため直感的なコミュニケーションが可能
スマートフォンなどのモバイルデバイスでの利用がしやすく、カジュアルなコミュニケーションが可能

モノよりもコトに価値を感じる時代に

若い世代は、生まれた時から豊富なモノ・サービスに囲まれた環境があり、比較的物欲の少ない世代と言われています。だからこそ、「モノ」よりも体験や経験といった「コト」に価値を感じ、何かを「所有」するのではなく、他人と「共有」をする消費行動を好むと言われています

また、スマートフォンの普及とともにSNSやチャットが普及し、距離が離れている相手とも「リアルタイム=瞬時接続」でのやり取りが当たり前になっている現在、「位置情報共有=常時接続」の要素が加わることで、よりリアルタイム性のあるコミュニケーションが取れるため、位置情報共有機能がコミュニケーションの大事な一部となってきているのです。

位置情報共有の立ち位置の変遷

冒頭でも触れた、「位置情報共有=監視」のようなイメージもテクノロジーの発展とともに変化しつつあります。以下が位置情報共有の立ち位置の変遷です。

プライバシー重視の時代
自身の位置情報を保護し、他人と共有することには慎重でした。位置情報の共有行為はプライバシーの侵害とみなされることもありました。

利便性重視の傾向
位置情報を利用したアプリやサービスが増え、位置情報共有が「利便性の向上」につながるとの認識が広まります

ソーシャルコミュニケーション
ソーシャルメディアの普及により自発的に位置情報を共有することも増えます。位置情報を通じて自身の活動や経験を共有することで「社会的な繋がりの一形態」として受け入れられるようになりました

安全・緊急時の利用
災害や緊急事態が発生した際に、位置情報提供により救助や支援活動効率的に行われることが広まり、緊急時利用の価値が高まりました。

個々の選択とコントロール
個々のプライバシーとセキュリティに対する関心が高まり、ユーザー自身でアプリやサービスのプライバシー設定をコントロールできるようになりました。

世代で違う「位置情報共有」における価値観

位置情報を共有することは利便性があることで、社会との繋がりや価値のあるものだという認識は全世代で広まりつつあります。しかし、それぞれの世代が過ごした時代の背景も大きく価値観に影響し、一定の先入観や抵抗感が拭えないのも現状です。以下は、年代別にまとめた位置情報共有に対する価値観・イメージです。

ベビーブーマー世代(1946年〜1964年生まれ)
第2次世界大戦後の出生率の上昇した時期に生まれた世代を指し、ITはまだまだ発展途上で、電話が最速のコミュニケーションツールの時代です。
プライバシーとセキュリティを重視し、位置情報共有には慎重でした。

X世代(1965年〜1980年生まれ)
バブル世代、団塊ジュニア世代、就職氷河期世代とも呼び、ある程度の経済力がついた時期にインターネットやスマホなどの通信環境が整い始め、アナログからデジタルへの変化を経験した世代です。
生まれた時からデジタルやIT機器に囲まれていたわけではないため「デジタルイミグラント(Digital immigrant=デジタル移民)」とも呼ばれています。便利さや効率性を重視しつつ、個人の自由とプライバシーのバランスを求め、適切な制限や選択肢を重要視する世代であるため、位置情報共有については使い方によっては便利で役立つと考えました。

ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)
別名Y世代とも呼び、この世代はインターネットの普及が飛躍的に進んだ時代に育った最初の世代です。小さい頃から身近にパソコンや携帯があるため、従来の世代に比べてITリテラシーが高い。
位置情報共有をソーシャルメディアやコミュニケーションの一環として活用し、交流や新しい出会いを楽しみます。

Z世代(1997年〜2012年生まれ)
生まれた頃からインターネットに囲まれて育ち、スマートフォンやソーシャルメディアが一般化している中で成長してきた世代です。コミュニケーションの中心にSNSがあり、リアルタイムな情報共有やコミュニティ活動に慣れ親しんでいる世代です。
距離の離れている相手とも位置情報共有する事は当たり前で、交流の一部と捉えながらも、位置情報共有=常時接続することでの安心感を得るという心理的な側面もあります。

人気だったZenly(ゼンリー)とは?その魅力と理由

コミュニケーションの重要な機能として、そのポジションを明確に示したのは、当時大人気位置情報共有アプリだった「Zenly」ではないでしょうか?

2015年にフランスのZenly社によって開発され、同じアプリを入れている家族や友人同士でGPSを介して居場所を共有できるアプリとして、日本でも10代を中心とした若者に人気を博していました。

2017年に米Snap社がZenly社を買収し、2019年にはApple Storeの「ソーシャルネットワーキング」のカテゴリー内で3位を記録するほど人気だったアプリでしたが、運営会社のSnap社が経営不振に陥り、約20%の人員削減の発表と共に2022年9月1日にサービス提供終了を発表し、2023年2月3日にサービス提供を終了しました。

Zenlyを使っていた人の利用目的の代表例は以下の通りです。

  • 待ち合わせに便利

  • 相手の様子を見てから誘う

  • 繋がっていることが嬉しい

  • 家族と繋がって安心(子どもの居場所把握)

  • スマホを無くしてもすぐ探せる

確かに、待ち合わせや友人を遊びに誘う際、本人に聞かずともアプリ上で確認できるのは、便利かも知れません。また、どこにいても家族や友人といった誰かと繋がっている安心感を持てる点も、利用理由の一つでした。
ただこの安心感という点は若者特有の感覚かもしれません。この感覚については、過去に書いたこちらの記事を見ていただきたいです!

位置情報共有なしには戻れない、代替サービスへ高まる需要

Zenlyが終了するという発表から、ユーザーたちは代替サービスへ大移動を始めます。Zenlyのサービス終了を受けてリリースされたり急速に人気の出たサービスを3つ挙げます。

Snapchat
Snap Inc. が開発・運営しているSnapchatは2011年にサービス開始し、アクティブユーザーが6億人を超えています。
特にZ世代からの支持が厚いサービス「マップ」「チャット」「カメラ(AR)」「ストーリー(ソーシャル)」「スポットライト」の5つを主な機能としており、Zenlyを買収した際にSnapchatには「Snap Map」というZenly同様の機能が盛り込まれました。日本国内ではカメラアプリとして利用する人も多いです。

NauNau
NauNauは日本の現役大学生兼スタートアップ社長が個人的な趣味で開発を始めたサービスで、2022年10月にサービス開始し、約3ヶ月で270万ダウンロードという驚異的な数字を叩き出しました。
Zenlyがサービス終了を発表した翌月にサービス開始したことにより、代替アプリを探していたZenlyユーザーに発見され、効率的にユーザーを獲得できたと予想できます。
また、NauNauには「歩数・カロリー計算」機能が備わっており、位置情報共有だけではなく、別角度から新しいアプローチが出来たことにより、より多くのユーザーを獲得できたと言えます。

Jagat
2023年3月にシンガポールのチームが開発したJagatは、ダイレクトメッセージやビデオチャットでJagat上の友人と近況を確認したり、プライベートコミュニティを構築したりすることができるリアルタイム共有アプリです。
「Zenlyの代わりに、Jagatはあなたのそばに永遠に!」キャッチコピーが付いており、毎週アップデートを重ねながら、パフォーマンスの最適化やユーザーからのニーズに応えています。

この他にも様々なサービスが誕生し、代替アプリがリリース直後からすごい勢いでダウンロードされたことから、やはり位置情報共有の需要はこれからも継続すると予測できます。

今後の位置情報共有の展望

今後の他のテクノロジーとのコラボレーションで、さらなるサービス内容の充実も実現するかもしれません。いくつか例を挙げていきます。

個人化とローカリゼーションの強化
ユーザーの好みに合わせたコンテンツや体験を提供、また位置情報活かしてユーザーの近くにあるお店や、開催されるイベントなどのローカル情報にも焦点を当て、より地域密着したサービス提供が期待できます。

AIとの統合
AI技術を使って、ユーザーの行動や好みを分析し、より適切な情報やおすすめを提供できるようになります。また、AIを活用してリアルタイムのトラフィック情報や天候情報を提供することも可能になります。

ユーザー体験の向上
ユーザーの利便性と体験を向上させるために、AR技術を活用した拡張現実のナビゲーションや、リアルタイムのグループ位置共有機能などといった様々な機能やインタラクションが開発される可能性があります。

プライバシーとセキュリティへの取り組み強化
ユーザーの位置情報は非常に個人的な情報であり、そのセキュリティとプライバシーの保護は重要です。今後、位置情報共有アプリはさらなるセキュリティ強化やプライバシーオプションの提供に注力することが期待されています。

これからも「位置情報共有」はコミュニケーションの必要機能として存在感を示し、継続した需要があると予想されます。
また、テクノロジーの進化とともに、人々のコミュニケーション手法や価値観も変化していくため、その中で需要をいち早くキャッチしサービス展開ができれば、自分たちが社会のスタンダードを作れるかもしれません。

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