どうやったら観たことも聞いたこともないものが売れるのかって命題

【毎週火曜更新・時間堂、年商1億プロジェクト27】時間堂プロデューサー大森晴香です、ごきげんよう。花散らしの冷たい風の火曜日でしたねぇ。今日は時間堂シリーズ発掘02『ゾーヤ・ペーリツのアパート』で縦横無尽に活躍してくれるであろう素敵な若者たちと秘密の会合を開きました。いやー頼もしいっす。ひとりでは到底できないことがチームならできるんじゃないかって明るい未来を見ましたよ。全貌はまたの機会にお披露目したいと思います。

さて。

なんと!fringe watchで先週の記事「チケット予約の波を前倒すための考察」にお返事をいただきましたよ!そしてお蔭様でこのnoteめっちゃ読んでいただいてる。スキとかシェアとかふぁぼとかたくさんいただきました。嬉しい。

いきなり余談ですが、「制作者で発信する人って珍しいですよね」的なことを今年に入ってから3人?4人?くらいの方から言われて、そうかもしれませんねぇ、なんてぼんやり返していたんですけども。荻野さんもですけど、発信力のある制作畑の先輩はいらっしゃいます。キャラメルボックスの加藤昌史さんのように書籍出版されてる方もいらっしゃいますし。福岡でお世話になったFPAPの高崎大志さんのブログも、示唆に富んでて読み応え満点です。あーでも私みたいな若手から中堅で「現在進行形でもがいてますなう」な制作者の発言は少ないかもしれませんね。私が知らないだけかな。

さてさて。本題に戻ろう。

もはやオンラインコーチングとなりつつある荻野先輩との往復書簡ですが、今回は時間堂プロデューサー・大森晴香氏の「チケット予約の波を前倒すための考察」にコメントしてみる(すぐに使えるアイデア3点付き)という、なんとお土産付きのスペシャルレスポンスでした。制作のみんな、主催者のみんな、今すぐ自分の計画に組み込むんだ。

そして考えた。なんでこんなに演劇はセールスが難しいと思われてるんだろうか、と。

それは演劇が、製品がさきにあって目で見たり手に取ったりしてから選べる「モノ」じゃなくて、体験に対して先払いする「コト」だからだ、というのがたぶんひとつの答えなんだろう。

自分にとっておもしろいかどうか、チケット代と観劇に要した時間に見合う価値があったかどうか、観終わるまでわからないから買いにくいんだという説。「観てもらえばわかってもらえるのに…」というやつだ。この点に異論はないけどこの点を論破する仮説を考えたい、という発想で深掘ってみます。

「完成形を知らないもの」ゆえの難しさと対峙するときに味方になってくれるものはなにか

上記のモノ・コト論を別の言い方で説明すると、完成形を誰も知らない状態で売る、てことかな、と思っている。たとえ再演でも、今回がどんなクオリティで初日を迎えるかなんて誰もわからない。出演者や演出が変わってることもしばしば。したがって、自分も観たことのないものを売っている、のである。

この、「完成形をわからない時期に宣伝して購買を促進する」というビジネスモデルは実はそう珍しくはない。かくいう私、まったく同じ悩みに前職でさんざんぶち当たっていた(前職は経営コンサルの営業です)。

コンサルティングを実施して期待される効果が出るかどうかなんて、やってみないとわからない。研修を実施して望むような社員が育つかなんて、やってみないとわからない。自分の受けたことのないセミナーの意義をまるで受けてきたかのように熱弁して売る、というような経験の積み重ね。

そのときの私を支えたのは、「商品理解」「お客さんからの信用」だったように思う。

なんだかわからないからこそ、関連書籍にあたり、体験者の話を聞き、過去の類似商品を調べ、セールストークの裏付けを少しでも増すための活動をする。それと、同じくらい「大森晴香」と「その会社」を信用してもらう。このひとが言うんだったら、この会社が勧めるんだったら、買う価値あるんじゃない?と思ってもらえるかどうか。精神論みたいだけど、それまでの実績とか築いてきたものがあれば、買ってもらえる確率はあがる。

翻って、演劇は?制作者にできることは?


観てもらえばわかるんだったら、観てもらえばいいじゃないの

もうひとつの仮説として、その公演そのものは観せられなくても、近いものを体験してもらう、という方法がある。たとえば、荻野さんは「超先行予約販売」をご提案くださっています。

次回公演の超先行販売を終演後のロビーでやってみる(第0波をさらに前倒し)
《中略》観客は終演後の余韻に浸っているので、意外に売れます。会場・日時・金額さえ決まっていれば、可能でしょう。《中略》支援会員制度までは難しいが、コアなファンを囲い込む場合に有効です。

つまり、公演こそが、最高の公演プロモーションになるという仮説。これ、実は時間堂の場合、毎月チャンスがあります。レパートリーシアターです。

以前は、「おもしろかった!また観に行くね!」と言われても「今回はどうしても予定が合わなかったよ…次こそ行くよ!」と言われても、どっちにしても「ありがとう!次が決まったら連絡するね!」とか「次回は来年だよ!お楽しみに!」というスパンで話をしていて、余韻どころの騒ぎではありませんでした。それが今は過去映像とか宣伝動画とかじゃなくて、生の、演劇そのものをまるっと観て判断してもらえる。お手頃価格と気楽な時間で。これこそ、最高のプロモーションだと自負しちゃう。

これってスタジオを持ってるだけでなく、劇団という体制があるから成立するやりかたではある。が、拠点がなくても顧客接点を頻度高く持ち続ける工夫があったらいいんじゃないだろうか。

劇場公演をばんばん次々やるっていうのはそれは大変なことだと私は思う。「会場・日時・金額さえ決まっていれば」というハードルが超えられないカンパニーは結構あると思う。これってつまり、目の前の公演やりながら次の公演会場を抑えたり資金調達したりができるってことで、やれる制作者はもちろんやってるんだけど、私は正直に言えばほとんどまともにできたことがない(自慢にならないけど)。おおがかりでなくてもいいからお客さんと接するポイントを作り続ける、という発想だったら取り組みやすいんじゃないかなぁ。

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おまけ。

レパートリーシアターのいいところはいっぱいあるんだけど、私のお気に入りポイントはお客さんとの距離が近いところ。物理的な意味以上に心理的な意味で。

劇場公演の場合、お客さんと直接話し込める時間と場所はほとんどありません。ロビーでお見送りしていても、じっくり話し込むなんて余裕はほとんどないし、なにより大勢のお客さんを見送りつつグッズ販売をしつつ客席では次のステージの準備をしつつ…とてんてこ舞いのことが多い。そうこうしているうちに、「忙しそうだからまた今度!」とお客さんは帰られてゆくのです。。。

それが、スタジオで開催するレパートリーシアターなら、変な言い方かもしれないけど、ちゃんと時間と空間をお客さんと共有できる。今までの公演で、私はアフターイベントをまともに見たことが数えるくらいしかありません。会場内でトークなどが開催されていても、自分はロビーにいることが多かった。それが、そもそも、ロビーとかないですからね、十色庵には(笑)

私は、この記事を読んでくださっている方と話がしたいです。レパートリーシアターの動員云々てことももちろんあるんだけど、それ以上に、一緒に演劇を観て、一緒の空間で呼吸をして、そのうえで喧々諤々してみたいと思っています。ぜひご来場ください。私は2日間ともカフェや客席内をうろうろしています。

時間堂レパートリーシアター【2016.4】 『人の気も知らないで』『ロミオ中止』

ご予約をこちらからしていただくと、私が喜びます。 

■日程:2016年4月15日(金)・16日(土)
15金 15:00 /20:00
16土 13:00◎/18:00

◎小学生以下のお子様もご入場いただけます ※保護者同伴のこと
開場は60分前/カフェ営業あり/演劇の上演60~80分、アフタートーク約20分

■演目
『人の気も知らないで』作:横山拓也(iaku) 脚色:黒澤世莉
出演:直江里美・ヒザイミズキ・阿波屋鮎美

『ロミオ中止』作:黒澤世莉 出演:男女二人

■演出:黒澤世莉

■料金:いずれもウェルカムドリンク付
一般 2,000円
U-23 1,000円
中高生 500円
小学生 500円 ◎土13:00のみ
未就学児 無料 ◎土13:00のみ

■会場:十色庵 (東京都北区神谷2-48-16カミヤホワイトハウスB1)

熊本の劇団きららとのあいのりチケット企画もやってます。私が自分の考えをせきららにだだもれに書いたり、先輩が教えてくださったことをじゃんじゃん公開しているのは、自分たちのためにも演劇界全体がいきいきしていることが大事だと思うから。共存共栄でなければ、ゆたかな演劇が生まれ続ける国にはなれないと思うから。

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また来週。ごきげんよう。来週は何をほろうかな。

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