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レッドブル帝国は大宮アルディージャを変えるのか?

2月15日、大宮サポーターにとっては衝撃的なニュースが朝から飛び込んできました。

まだ何も決まってはいないのですが、こういった話があること自体は間違いないのでしょう。
報道を受け、「大宮アルディージャは今後どうなってしまうのか?」と不安に感じるサポーターも多いようです。

今回は、レッドブルのこれまでのサッカー界での動き、特にクラブ買収前後の初期段階を確認しながら、大宮が買収された場合にどうなりそうかを考察します。

参考としたのは以下の書籍です(2021年に刊行されたものです)。

本書には買収後のチーム強化や育成システム構築など競技面についても多く書かれていますので、興味のある方は是非ご一読ください。


事例1.レッドブル・ザルツブルク(2005−)

レッドブルのサッカークラブとしてまず誕生したのが、オーストリアのレッドブル・ザルツブルクです。
レッドブルの本社はザルツブルクにあるので、まずは地元から、と考えたのでしょう。
この時買収されたのがアウストリア・ ザルツブルクというクラブで、国内リーグで6回の優勝経験がある名門クラブでした。
ただ、アウストリアは財政的な問題を抱えており、成績も買収前年にはギリギリ降格を免れる状況と、クラブを取り巻く環境は厳しかったようです。
レッドブルもそこに目をつけたのでしょう。

アウストリア側は資金提供してくれるスポンサーとしてレッドブルに期待していたようですが、レッドブルの目的はスポンサーではなく経営権の取得。
そして実際に取得すると、クラブ名、クラブカラー、エンブレムを一気に変更します
これにはもちろん反発が起きるのですが、レッドブルは強硬な姿勢を崩さず。
「レッドブルが紫になったら、それはレッドブルとは呼べない」
とのレッドブル創始者の言葉もあり、ここは譲れないポイントなのでしょう。
(紫はアウストリアのチームカラー)

その後しばらく、レッドブル・ザルツブルクはオーストリア中のサッカーファンから批判を浴びることになります。
ただ、レッドブルがオーストリアの企業であることから買収に理解を示すファンが一定数いたり、チームが強くなるにつれて新たなファンが増加したりすることで、新たなクラブは着実に認知されていきました。

事例2.ニューヨーク・レッドブルズ(2006−)

続いて生まれたのが、アメリカのニューヨーク・レッドブルズです。
マーケティングの観点からはやはりアメリカは外せなかったようです。
この時買収されたのはニュージャージー州(ニューヨークに隣接)に本拠地を置くメトロスターズというMLSのクラブで、1996年にMLSがスタートしてから優勝経験はなく下位に沈むことが多いクラブでした。
レッドブルはそのクラブを買収すると、ザルツブルクの時と同じようにクラブ名、クラブカラー、エンブレムを変更。
多少の反発はあったものの、オーストリアでの反応と比べればだいぶ穏やかだったようです。
アメリカのプロスポーツではチーム名変更や本拠地移転もたまにあるので、そのあたりに対する考え方が違うのでしょう。

そして、ザルツブルクの時と大きく異なるのが、レッドブルがサッカー専用スタジアムを造ったことでサポーターから歓迎されたことです。
それまでのメトロスターズは、キャパが大きすぎるうえに決してサッカーに適しているとはいえないアメリカンフットボールのスタジアムを使用していましたが、2.5万人収容のレッドブル・アリーナが完成したことで観戦環境が劇的に向上しました。

クラブやMLSの歴史が浅かったこともありますが、アメリカ進出についてはレッドブルはうまく事を進めたのです。

事例3.RBライプツィヒ(2009−)

オーストリア、アメリカときて、レッドブルが次に目を付けたのがドイツでした。
やはりサッカー界の中心はヨーロッパであり、中でも5大リーグと称される国の中で強豪クラブを保有することはブランド価値を高めるうえで重要だったようです。
最初はブンデスリーガの1部や2部に所属する有名どころのクラブに接触しましたが、交渉はうまくいかず。
最終的に買収したのは、ドイツ東部のライプツィヒに本拠地を置く、当時5部に所属していたマルクアンシュテットという小さなクラブでした。
当時のライプツィヒにはブンデスリーガで活躍するクラブがなく、また2006年のドイツW杯でも使用されたツェントラール・シュタディオンという立派なスタジアムが使われず宝の持ち腐れになっていたことから、地域にとってもレッドブル参入は大きな起爆剤になると期待されたようです。

そのように地元からは歓迎されて誕生したRBライプツィヒですが、ドイツ国内ではオーストリアの比にならないくらい激しい反発を受けることになります。
選手が乗るチームバスへの妨害や、ピッチへの物の投げ込み、スタジアムでの罵声や沈黙、ビジターサポーターの(ライプツィヒへの)遠征拒否、そして最終的にはRBライプツィヒサポーターへの危害にまで発展してしまいます。
また、RBライプツィヒのことを一切報じないメディアすらあったそうです。

その後、RBライプツィヒはブンデスリーガ1部まで登りつめますが、他クラブからの嫌悪というのは今でも続いているようです。
サッカーの伝統国では、破壊者のようなレッドブルはやはり受け入れがたいのでしょう。

事例4.レッドブル・ブラガンチーノ(2019−)

レッドブルの4番目のサッカークラブとなったのがブラジルのレッドブル・ブラガンチーノです。
(厳密にはブラガンチーノの前にレッドブル・ブラジルというクラブがあったのですが、そちらは買収ではなく新設だったのと、最終的にブラガンチーノと合併したため今回は割愛します。)
ブラジルが選ばれたのは、マーケティング目的よりもサッカー選手の発掘・育成という観点が大きかったようです。
買収前のブラガンチーノは2部リーグの半分より下にいるようなクラブで、ブラジルの多くのクラブと同じように財政的な問題を抱えていました。

ブラガンチーノの場合、レッドブルの買収によりエンブレムの変更はあったものの、クラブ名は存続、チームカラーも部分的に残すという形になりました。
ブラガンチーノはサンパウロ州にあるクラブなので、過去の事例からすれば「レッドブル・サンパウロ」のようなクラブ名になっていたはずですが、そうはなりませんでした。
また、元々のチームカラーは黒白でしたが、買収後はメインを白赤(レッドブルの基本色)としつつも黒がセカンドカラーとして残されています(ビジターユニフォームは黒)。
3番目のRBライプツィヒから10年ほど時間が空いたせいもあるのか、レッドブルも買収に際して以前ほど強硬な姿勢ではなくなったようです。

その後ブラガンチーノは1部リーグに昇格し、地元からの支持も受けながら強豪クラブとしての道のりを歩み始めています。

大宮アルディージャはどうなる?

ここまでレッドブルによる4つのクラブ買収事例を説明しましたが、ではその対象が大宮アルディージャとなった場合にどうなるでしょうか。

まず、エンブレムが変わるのは避けられないと思います。
4つの事例ではいずれもエンブレムは変更されていますし、ブランドを認知させる手段としてレッドブルのロゴの重要度はかなり高いので、ここは譲れないでしょう。

クラブ名も変わる可能性が高いです。
「レッドブル」を入れるのが基本線ですが、現状ではJリーグのクラブ名に企業名を入れることはできないので、RBライプツィヒのように「RB」を付けることで着地させるのではないでしょうか(近いうちに企業名も解禁されるかもしれませんが)。
「アルディージャ」が残るかどうかはわかりません。
ブラガンチーノのようにこれまでの歴史を考慮してクラブ名として残るかもしれませんし、不要と考えられれば容赦なく外されるかもしれません。
レッドブルなのにリス(アルディージャの由来)、だとちょっとおかしなことになってしまいますしね。

チームカラーも変わるでしょう。
基本は白赤で、セカンドカラーとしてオレンジネイビーが残る可能性はありますが、赤とオレンジは色味が似ているので残るとしてもネイビーかなという気がします。
下のユニフォームのように、ロゴを際立たせるデザインであればオレンジでもいけなくはないと思うのですが・・・。

dポイントの部分にレッドブルのロゴが入るイメージです

ホームタウンについては移転の可能性は低いと考えてよさそうです。
4つの事例でも移転はなかったですし、買収対象として選ばれるのであればそれは大宮という土地でいけると判断されたということです。
スタジアムやトレーニング施設も今のところはじゅうぶんなものがあるので、古くなったり足りなくなったりすれば改修や新設があるかも、といった感じでしょう。

マスコットは、クラブ名のところでも述べたようにレッドブルなのにリスだとおかしなことになってしまうので、おそらく変わるでしょう。
もしくは、アルディやミーヤが牛に変身するか・・・。


長くなりましたが、過去の事例から現時点で考察できることを書き連ねました。

今回のニュースに対しては、大宮サポーターの中でも
「レッドブル化反対」
「買収は構わないがチームカラーやエンブレムは変えないでくれ」
「大宮にいてくれる限りはどんな形になろうが応援する」
「今の弱いままでいるよりは、強くなった方がよい」

と反応はさまざまで、それだけ難しい話であることがわかります。

まだ何も決まっていないので、もしかすると話がなくなったり、対象が大宮でなくなったりする可能性もあります。
しかし、いつその時が来てもいいように、心の準備だけはしておいた方がよいと思います。

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