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経営と音楽の共通軸

ある尊敬するピアニストの方とSNS上で音楽と経営について少しやり取りした。

ぼくの主張は経営と音楽とは互いに通じるところがあるというもので、通常であれば音楽はビジネスとは無縁の趣味としてアマチュアは捉えているが、ぼくは大いに関連がある、いや音楽をやることがビジネス、経営に大いに役立つとすら思っている。

主たる理由は3つある:

【1.世界観】

まず、経営も音楽も、何よりまず世界観を描くことが重要であるということだ。経営における世界観とは、自分の企業がどのような事業環境におかれ、何を実現するのか、である。これが明確になっていることは必須条件である(凋落していく、苦戦する企業は世界観が旧いことが往々にしてある)。

音楽の世界観はその楽曲が何を表現しようとしているのか、作曲家が離散化された楽譜に残したものを、音楽理論や時代背景・時代思潮や音楽史上の経緯の中で読み取ること、そしてそこで自分が演奏者としてどう表現したいか、を明確に持つことが必須である。

【2.プロセス】

次に、プロセスを重視し楽しむことだ。経営にはもちろん経営目標がある。定性的な目標、定量的な目標(売上、利益、成長率、時価総額等)を、事業環境に即し適切な戦略を策定し遂行することが基本だが、多くの企業ではこの戦略策定・遂行のPDCAが弱い。

PDCAを回すプロセスを強化すれば業績が大きく改善する機会を自分はコンサルタントとしても事業会社のマネジャーとしても多く実際に目にし、改善してきた。

音楽においてもその目標、自分の世界観を表現し聴衆と感動を共有すること、を実現するには、地味な練習のプロセスが必要だが、ただ根気だ忍耐だ辛抱だとしては集中力を持続し質の高い練習を続けることは難しい。

経営でも音楽でもつらいことをつらいと思わないため、結果ではなくプロセスを楽しむことはとても重要である。

【3.オーケストレーション】

最後に、オーケストレーションである。経営は組織で行なうもの。様々な能力と個性を有する人材を烏合の衆ではなくチームとして機能させるには「オーケストレーション」が重要だ。

音楽においても、器楽曲でも管弦楽でも合唱でも同じことが言える。ピアノソロであっても、特にポリフォニックな作品であればオーケストレーションは欠かせない。

例えばベートーヴェンのワルトシュタインソナタ(21番、作品53)等は明らかに管弦楽を想起して作曲された作品であり、ピアノという楽器の新たな可能性を拓いた曲である。たとえソロでもオーケストレーションは大切なのである。バッハが確立させた対位法も複数の声部がそれぞれ主張しながらも全体として立体感(奥行、深さ)のある音楽を創り出す。

ビジネスにおいても、異なる専門性を有する個人たちがお互いの役割を全うしつつも連携し、個人では達しえない目標を組織として達成する。


そう。音楽においても経営においても、この3つのどれが欠如してもうまくいかない。

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