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桜の樹の下には死体が埋まっている
そして人はそんな桜に惹かれ集まる

 そんな話を思い出す。年に一度しか開かず、すぐ風に煽られ散っていく。そんな儚いものだから惹かれているだけじゃない何かがチラつく。

 毎日当たり前に歩く会社までの道のりもこの時期になれば雰囲気は一気に変わる。

『桜って何か寂しさを背負ってるよね?』

 通りすがりの若いカップルの女の子が写真を撮りながら呟いた。

『淋しいこと言うなよ!』

 男の子の方は何か浮かれた感じなのに、ギャップがすごい。でも凄くわかる。私も桜を見るとなんか寂しさを感じる。本当に綺麗な瞬間って一瞬だけど、必ずこの時期になれば満開の美しさをアピールしてくる。でも一瞬で地面に散っていく。
『どんな気持ちでこの一瞬を生きているんだろう?』桜の花びらに魂は宿るのか?は愚問なのか?

 昔、子供の頃「人は何のために生まれ、何のために生きて、どこに向かって最期を迎えるのか?」この問題に気が狂いそうになる程悩んだことがある。自分という人はこの世に必要なのか?この魂は本当に自分のものなのか?死ぬことが前提で進むこの道に何の楽しみを見出せばいいのか?この答えは何十年と過ごしても全く出せないでいる。

 正義だ!愛だ!と争う事で自分を主張する事。
 ただ幸せを願う事で明日への期待を込める人。
 絶望の崖の縁をただ必死に綱渡の様に進む日々。

 どんなに汚い人間でも桜は綺麗だと感じる。どんなに綺麗な人生でも桜は綺麗だと感じることができない人もいる。春になれば去っていく人の裏に新しい出逢いが待っている。

そして必ずこの時期に綺麗な桜を見ながら、
いい事も。やな事も忘れている自分がいる。

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