2019/06/08 日記

2019/06/08(土)にお出かけした日記を書きます。
お出かけの目的は、サーカスについてのトークイベントでした。

メモツイ

それをtogetterでまとめたもの

上のtogetterで僕の一連のツイートはまとめていますが、その補足と感想を改めて書く。

お出かけ

Twitterで見かけて気になったので行くことに。現在ジャグリング論集を書いていますが、サーカス方面は勉強していないのでそのあたりを仕入れるつもりもありました。
梅田から地下鉄で15分ほど、最寄り阿波座駅から歩いて江之子島文化芸術創造センター[enoco](エノコ)へ。名前も聞いたことなく初めて行くところで、周りは幹線道路、郵便局、病院、スーパー、住宅街といった立地。
エノコさんの地下1階のカフェ(お酒もある)が会場となっており、参加者は20人程? 参加者がどういう畑からの人なのかはちょっと分からなかったが、スピーカーの関係者か、同日えのこdeマルシェというイベントをしていたようなのでそこからの人もいたのかな。

内容

19:00-20:45の約2時間、スクリーンに実際のサーカスの映像を流しつつ、3人が色々話していくというもの。
まずはスピーカー3人のそれぞれの自己紹介。ということだったが話はそのまま中身にまでなだれ込み、映像を見つつ様々に話をしていたらあっという間に、という感じだった。

簡単にスピーカー3人を紹介しておく。
一人目、中西美穂さん。大阪アーツカウンシル統括責任者。90s後半フランス遊学で現代サーカス(ヌーヴォー・シルク)に出会う。1998年シルク・イシの日本公演の関連企画として写真展を企画。
一応今回のモデレーターという立ち位置だったが、そこまでかっちりせず三人が集まり話すといった感じだった。
二人目、西元まりさん。ライター。1992年シルク・ドゥ・ソレイユに出会ってからサーカスについて取材、執筆を続けている。著書として『アートサーカス サーカスを超えた魔力』など。
三人目、甲賀雅章さん。会場である江之子島文化芸術創造センター[enoco]の館長。静岡大道芸ワールドカップに関わっていたり、静岡ストレンジシードのコンセプターなど、企画屋なのかなという印象だが、作品作り(クラウン?)も本人はするよう。道化に関心をおいている。

いくつかの現代サーカスの映像をみながら紹介し、それに関して様々に話すといった感じで、トークテーマの主軸が一つあったわけではないので、内容についてはツイまとめを参照してもらうだけにする。
言及するサーカスとして資料に挙がっていたものをとりあえず記す。

資料めも

シルク・イシ Cirque ici
シルク・イシは、ジョアン・ル・ギエルム Johann Le Guillermによるサーカスである。彼は1998年9月に日本公演(東京・神戸)を行っている。

めも
http://deracine.fool.jp/circus/studies/z_clowns/clowns05.htm
http://blog.livedoor.jp/lifecarrer33gearkawase/archives/50797868.html
http://uchigawanojikan.web.fc2.com/contents.html
https://vidy.ch/en/taxonomy/term/781

ベトナム ルーンプロダクション Lune Production
ベトナムのホーチミンで2012年に設立されたカンパニー。
『A O SHOW』『The Mist 』は2018年にKAAT(神奈川芸術劇場)で公演があった。

KAATの公演ページより
『A O SHOW にはセリフがなく、動作や歌、踊りを通して登場人物や景観を表現し、観客をベトナムの風景に導きます。また、作品には決まったストーリーはなく、ベトナムの田舎地方の田園風景の前にいたかと思えば、瞬間的に都会へと引き戻されます。
A O SHOW のテーマは、ベトナム南部の農村と都市の "日々の暮らし" を竹や籠などのベトナムの日用品を使って、シルク(サーカス)、アクロバット、ダンス、音楽で表現し、それらをいくつも繋いで、ひとつの物語として構成しています。視覚に訴える演出、素晴らしい振付、力強いアクロバットと伝統音楽(17種類からなるベトナム楽器を使用)が独特な舞台空間を演出します。』

カンボジア ファー・ポンルー・セルパク Phare Ponleu Selpak(PPS)
カンボジアのバッタンバンで1994年に発足した団体。PPSは当初から難民の子供達に美術・芸術教育を行い社会支援をすることを目的としており、一種の芸術学校事業を行うNPO団体と言える。
PPSと提携するという形でPhare, The Cambodian Circusがシェムリアップで公演をうっている。

https://pharecircus.org/calendar-productions/より
『More than just a circus, Phare performers use theater, music, dance and modern circus arts to tell uniquely Cambodian stories; historical, folk and modern.  The young circus artists will astonish you with their energy, emotion, enthusiasm and talent.』
https://performingarts.jp/J/pre_interview/1709/1.htmlより
『音楽、演劇、ダンス、美術を使って、カンボジアの歴史、文化、社会を基に、独創的なストーリーを持つオリジナル・サーカス作品をプロデュースし、毎日上演しています。』
『Phareで大切にしていることは、人間的であること、リアルであること、そして草の根であることです。これまでに有名なシルク・ドゥ・ソレイユをはじめ様々な種類の演劇とサーカスを見ましたが、Phareはユニークで特別であると感じています。』

めも
https://performingarts.jp/J/pre_interview/1709/1.html
http://krorma.com/listing/phare-ponleu-selpak-pps/
http://plnrs.me/labo/other/8551/
https://www.youtube.com/watch?v=FIxHq7IcBls

韓国 ソウル・ストリート・アート・フェスティバル(SSAF)

ものとしては2003年から、この名前では2016年から行われているソウルでのフェス。

一例として、BONG n JOULEによるパフォーマンス『The road to Heaven』を挙げる。

『BONG n JOULE’s aim is to create a contemporary circus through the combination of circus art and other genres while focusing on the fragile part of human being behind the circus technique which looks splendid. 』
(BONG n JOULEの目的は、素晴らしく見えるサーカス技術の背後にある人間の脆弱な部分に焦点を当てながら、サーカスアートと他のジャンルの組み合わせによって現代のサーカスを創り出すことです。)

天国への道"The road to Heaven" では、サーカスの演目たるChinese Poleに  Buk(韓国の伝統的な打楽器)やDaegeum(伝統的な管楽器)による音楽が取り入れられている。また、Chinese Poleもとりわけ技術を見せようという演出にはなっていないことが見て取れる。

台湾 Future Circus Lab(未來馬戲實驗場)
台湾の高雄で2017年12月に開催されたサーカスフェス。ショーの他に、ワークショップやジャグリングバトルといったイベントも行われた。
企画実行は星合有限公司であり、これは陳星合(チェン・シンホー)が設立した会社である。

安田尚央氏のレポート

渡邉尚(ワタナベ ヒサシ)
日本のフロアジャグリングの第一人者。2015年に設立したジャグリングカンパニー「頭と口」の主宰。
代表作として『逆さの樹』がある。

乗越たかお氏によるインタビュー
https://performingarts.jp/J/art_interview/1701/1.html

第7回エルスール財団新人賞(コンテンポラリー・ダンス部門)を受賞している。
その際の選考委員(乗越たかお氏)のコメント
『現在の舞台芸術でひときわ注目されているのが、強い身体性と高い芸術性を併せ持った「現代(コンテンポラリー)サーカス」である。様々な周辺芸術を取り込みながら、熱く勢いのある作品が世界中で生まれている。
そうした流れの中にあって、渡邉尚はひときわ特異な存在感を示し、世界中のフェスで引っ張りだこの存在だ。というのも、上に投げあげることが中心の西洋のジャグリングに対して、床や重力に親しむ「フロア・ジャグリング」を提唱し、自らの驚異的な身体性をもって実践。ある種の哲学的な衝撃をもって高く評価されているからである。
自らの身体を探求する様も常軌を逸した執念で、異なった経路を辿りながらも、かつての舞踏と同じ地平にまで到達しているのが、じつに興味深い。もっとも「人と物が関わることは全てジャグリング」だと考えている渡邉にとっては、ダンスもまたジャグリングの様相のひとつに過ぎないだろう。』

上の動画に出ている渡邉尚(頭と口) とGuillaume Martinet(Defracto)は、2019年10月のKAATで新作の公演がある。頭と口×Defracto 「妖怪ケマメ:L’esprit des haricots poilus」

めも
https://www.facebook.com/yasuta/videos/10205409470912398/
Defracto https://www.youtube.com/watch?v=BXXfRlC1a-M

ホワイトアスパラガス
谷口界ハチロウによる現代サーカスカンパニー。両者ともに日本で唯一のサーカス学校である「沢入国際サーカス学校」で学んだ経験を持つ。
HPより
『サーカス学校出身の谷口界とハチロウが、アクロバットにジャグリング、コンテンポラリーダンスなどのスキルを駆使して、観客を彼らの世界に誘い込む。本気なのか?ふざけているのか?独特のセンスとシュールな笑いで、国境を超えて中毒者が続出中。』

最近の作品から、『WONDER WATER』では海の生き物をイメージさせるカラフルでユニークな形の衣装にも注目したい。

めも
http://www.geigeki.jp/performance/theater209/
https://twitter.com/chikoAm77/status/1124968765945405440
https://twitter.com/kiiro_balloon/status/1130804271736270850

静岡 ストレンジシード
2016年から毎年5月のGWに静岡で開催されているストリートシアターフェス。劇団、ダンス、パントマイム、様々な領域のアーティストが参加する。2019年は渡邉尚も参加している。

めも
http://festival-shizuoka.jp/2016/event/strangeseed/
『演劇、ダンス、大道芸、すべてのパフォーミングアーツの枠を超えて、「ストレンジシード」=「変な種」たちがGWの静岡を盛り上げます。』
https://natalie.mu/stage/news/220810
https://natalie.mu/stage/news/269767
https://natalie.mu/stage/news/330233

瀬戸内サーカスファクトリー
『瀬戸内サーカスファクトリーは、フランス発祥の芸術活動である「現代サーカス」を通じて、地域の芸術、文化、芸能、技術、産業、観光、コミュニティなどの活性化と、文化ジャンルとしての「現代サーカス」を更に周知、発展させ、もって、心豊かな社会を実現することを目的』とした一般社団法人。代表は田中未知子氏。
2015年から「国際創作サーカスフェスティバルSETOラ・ピスト」というフェスを行い、2019年で5回目となる(現在は「こんぴらだんだん」の愛称がついている)。
『国際創作サーカスフェスティバルSETOラ・ピストは2015年に瀬戸内サーカスファクトリーが開始した、日本初の現代サーカス専門のフェスティバルです。
特徴は「創作を軸としたフェスティバル」「サイトスペシフィック」「サーカスによる地域ルネサンス」。
瀬戸内サーカスファクトリーが年間を通じて創作した作品を発表する場として、また、日本や世界のアーティストが創作した作品を紹介する場として、サーカスクリエイションに特化したフェスです。』

めも
https://twitter.com/setouchicircus
https://www.juggling.jp/jjf/2018/jp/setouchi.pdf
http://scf.or.jp/work-archive-2
https://faavo.jp/kagawa/project/1120
『現代サーカスとはフランスで70年代に産声をあげた新しい芸術ジャンルで、演劇やダンス、美術などあらゆるアートを取り入れ、鍛えられた身体で「空中までを使って」表現します。』

イタリア Mirabilia Festival
イタリアのサーカス・パフォーミングアーツ・フェス。

めも
http://www.festivalmirabilia.it/en/storico-festival

感想

以上のようなサーカスにまつわる情報が知れたので、為になった一方で、「サーカス」「現代サーカス」というジャンル(「ジャンル」???)がより一層分からなくなってしまった。
その分からなさについて、詳細は今度追記することにする。
おそらく、
・(伝統的)サーカスとヌーヴォーシルクと現代サーカスの切り分けが上手く出来なかったこと
・地域性と上の切り分けの関連が結びつかず混乱したこと
フランス(ヌーヴォーシルク)・カナダ(シルク・ドゥ・ソレイユ)のサーカスと、今アジアで盛んに起こっているサーカスとは何か違うのか。違うのであればどのような違いか、違わないのであればアジアの興りは単に今アジアがアツいよねというだけなのか。
ダンサーが型を踊らなくなって自分の身体と向き合わされるように、サーカスも「いま・ここ」の自ら(身体?道具?技術?演目/演出の地域性?場所?)と向き合うとき、
例えば場所がテント、大箱(舞台/ホール)、外ストリートと変わる。動物やエアリアルができない環境に変わる。何がなくなったらサーカスではなくなるのか

めも
https://www.cinra.net/interview/201709-doubleexposure
『コンテンポラリーサーカスもそのひとつ。伝統的なサーカスの技術を援用しながら、現代アートとの融合や物語の導入を試みる動向は、カナダやフランスを中心に、大きな潮流を生み出している。』
https://motion-gallery.net/projects/nagame2018
ながめくらしつ『現在は現代サーカス(70 年代にフランスから始まり、サーカスの技芸と演劇やダンス、美術などあらゆるアートを取り入れ、地上から上空まですべての空間を使って表現する舞台芸術ジャンル)のカンパニーとして活動しています。』
https://www.youtube.com/watch?v=C5Dl8lUs-MA

問い

「サーカスとは、芸術の中の自立した一部門なのか」
 つまり、他と切り分けられるようなカテゴリー(芸術形式、芸術ジャンル)なのか、単に上演/実行芸術という意味の「パフォーマンス」と同義になってしまうのか
「自立した芸術であるとすれば、サーカスの特性は何か」
 切り分けられるとき、その特性は? 何がなくなったらサーカスではなくなるのか

「サーカスの価値とは何か」
 上で検討したことでサーカスが自立した特性を持つならば、その価値
 そうでなくても、「サーカス」という語が輪郭づくる特有の価値というものがあるような気が
 サーカスとは価値カテゴリーなのか(ある特有の価値を持つものをサーカスと呼んでいるとしたら)

 切り分けにくさ、輪郭の見えなさは、道化のようである。
(道化はサーカスにおいて、なにか特定のわざを見せる者ではない。では特定の役割を持つか? 道化はよく笑いと結び付けられるが、必ずしも絶対ではない。哀しい道化もいるではないか。また、単に演目間の時間つなぎ、演出つなぎをする存在でもない。甲賀氏が言うように、捉えきれない異物、その異質さを考えずにはいられない。)


現代サーカスについての参考文献を求めています。

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