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男性原理と女性原理(1):自然は克服するものか従うものか

フリーメイソンの台頭は、端的に言えば男性原理に支配されてきた女性原理の解放運動です。

アメリカの自由の女神は、アメリカ独立100周年を記念してフランスのフリーメイソンから贈られた女神像です。

女神像は右手にたいまつを持ち、左手にはアメリカ独立記念日(1776年7月4日)が刻まれた独立宣言書を持っています。足元には引きちぎられた鎖と足枷があり、それを踏みつけるような恰好となっています。これは、一切の弾圧や抑圧からの解放を表しています。

https://worldheritagesite.xyz/statue-of-liberty/

自由の女神が"女神"である理由は、フリーメイソンが女性原理だからです。と言ってもフリーメイソンが女神信仰というわけではありません。
人間は本能的に、誰に言われなくとも一神教の支配が男性原理であると知っています。アメリカに贈られたのは、その男性原理に対するアンチテーゼの象徴としての女神です。

パリとニューヨークにアーティストが世界中から自然に集まったのは、そこが女性原理の上に構築されていることをアーティストが本能的に感じたからなのかもしれません。アートにはひらめきや直感、つまり女性性が重要です。それは肉体や性自認が男性か女性かに関わらず、もっと根源的な人間の本質の部分での女性性という意味です。

一神教が男性原理である理由

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの一神教は男性原理、父性原理であり他者は支配するもの、自然は克服するものという思念が根底にあります。
それに対して古神道や古代ヨーロッパ人のドルイド教などは多神教、女性原理の信仰。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教はどれも砂漠地帯から生まれています。これは偶然ではありません。砂漠という過酷な土地で生まれ育った人々にとっては、自然は敵であり、支配する対象なのです。だから必然的に自然崇拝=アニミズムを信仰する人々も敵であり支配対象という考え方になります。これは数百年、数千年という単位でその土地で生きてきた人々の潜在意識の深い部分に刷り込まれた意志です。一世代で生まれた理屈ではないので、自らその意思に気がつく事はまれです。

百年に一度くらいの割合で生まれてくる「宇宙の本質が見える人」はその事に気がつき、聖人や預言者と呼ばれます。彼らの教えも後世の人間によって宗教化し多くの信者を獲得しますが、聖人以外の人間は聖人の言葉を理解できないので、潜在意識の働きに負け、自然支配に都合の良いように教義をどんどん書き換えていきます。

ヨーロッパではドルイド教などの自然崇拝がキリスト教に支配され事実上消滅しました。・・・と書くと悪い事しかしていないように思えるかもしれませんが、しかし彼らが自然を支配したことによって人類が慢性的な飢えから脱し、栄養不足から来る病に苦しむ事が減っていった事も事実です。単純な善悪二元論でどちらが良いとは言えません。

さらにその後、チンギス・ハンのモンゴル帝国はこの歴史から学んでもう一歩進んだ考え方をしました。宗教の対立は必ず戦争に発展し、血が流れる事になります。それを避けつつ自然を克服し、世界を統一して戦争や飢餓を無くすためにはどうすればいいか。チンギス・ハンは「恐怖」を利用する事によって、極力戦わずに勝つという手法を取りました。

「男が味わえる最大の喜びは、敵を征服して自分の前に引きずりだすことである。敵の馬に乗り、敵の所有物を奪うこと。敵が愛する者たちの目を涙でぬらすこと。そして敵の妻や娘を、自分の腕にかたく抱きしめることだ」
チンギス・ハンはこの種の言説を、自分の品位を傷つけるとは考えずにむしろ奨励し、言葉や文字によって伝聞させる戦略を採りました。

このようなプロパガンダは後の世にも語り継がれ、「モンゴル兵=暴力・破壊・残虐・無知・野蛮」というイメージが、現在に至るまで染み付くことになってしまうのです。

上の記事に書いてある様にチンギス・ハンは信仰や文化は先住民がそのまま維持する事を推奨しました。人の暮らしや多様性は変えず、戦争と飢餓だけをこの世から無くすことを望んだのです。
もちろんこの恐怖のプロパガンダは、軍隊が強いことが大前提です。弱ければ話になりませんから。モンゴル帝国の弓騎兵団は無敵の強さを誇っていました。そしてユーラシア大陸の統一まであと一歩というところまで迫りました。しかし火薬の発明により無敵の弓騎兵団は一気に弱体化することになり、モンゴル帝国の世界統一は実現しませんでした。

もし火薬がこの世に存在しなければ。あるいは火薬の発明があと数十年でも遅れていたら、モンゴル帝国が世界統一を成し遂げてチンギス・ハンが夢見たような争いのない平和な世界になっていたんでしょうか。
火は男性原理の象徴です。火薬の発明によってアジアの女性原理が屈服することになったのは神の見えざる手による働きなのかもしれません。

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