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原発被災者を見殺しにした日本政府。チェルノブイリ法が日本でも必要なワケ

民立法「チェルノブイリ法 日本版」をつくる郡山の会 郷田 みほ

 福島原発事故の発生後、国は汚染状況を知らされず右往左往している福島県民を見捨てた。「原子力災害対策特別措置法」で決まっている地域防災計画をことごとく無視した。避難所に来た人たちは、体についた汚染の程度を調べるスクリーニングをし、除染をするかしないか振り分けをする。
 除染を行う基準値は1万3千コストパーマイル(40ベクレル/平方センチメートル)で、この数値は甲状腺等価線量100mSvになる。しかしいつの間にか除染は、1万3千から10万コストパーマイルへと引き上げられた。
 それでも「避難者の被ばくは問題ない」、「甲状腺被ばく測定は不要」とされた。その結果、避難者の甲状腺がん発見が遅れるという恐ろしい事態を招いている。
 また、初期被ばく軽減のための対策を怠ったため、ガンで亡くなる人が増えている。被害者の代表であるはずの県が国に同調し、救済を求める役割を放棄。測定結果の握りつぶしすら行った。
 その後も国は、健康を守るための国際基準である公衆被ばく線量限度値=年間1mSvを20倍に引き上げ、帰還政策として、「安全だから戻れ」、「大金を使って街をきれいに造り変えたから心配ない」と帰還を迫り、危険な場所に住まわせようとしている。チェルノブイリ法では、年間被ばく線量=1mSv以上は「移住権利地区」とされている。

ーー子どもたちの体と心に大きな傷

 県民健康調査検討委員会は、子どもたちに大きな不安をもたらしている小児甲状腺がんの多発について「放射能の影響とは考えにくい」としたうえで「過剰診断が原因なので、調査規模を縮小すべき」などと言っている。県は健康被害を見えにくくし、なかったことにしようとしているのだ。早期発見、早期治療の原則が無視され、子どもたちの体と心に大きな傷を負わせている。
 県民の中には、「子どもや自らの被ばくを避けることができない」と、自主避難した人が多数いる。しかし、「勝手に避難した」と誹謗中傷され、差別され続けている。健康だけでなく、心までも傷つけられているのだ。原発事故から10年という長い時間を浪費しながら、国は対策を怠り、数値をごまかし、避難指定区域の縮小や保障・支援打ち切りなど、次々と被害者を追い詰め、厳しい生活を強いている。
 また、健康被害を心配する子どもたちのために、各地で一時的保養が行われているが、すべて民間団体によるもので、国や自治体の援助がないため、寄付金だのみの活動を余儀なくされている。保養は、子どもたちが事故前のように自然と自由に触れ合う場として、心と健康に良い影響があると確認されている。
 しかし事故から10年過ぎ、保養に対する無理解、資金不足の問題を抱え、縮小されている。ベラルーシやウクライナでは、30年経った今でも「保養の権利」は守られている。福島の子どもたちに必要なのは「保養の権利」である。

ーー日本版「チェルノブイリ法」を

 「すべてをなかったことにしよう」とする国は、原発被害者を守るための法律を作ろうとしなかった。このため、福島県民は自らの力で自らを守るしかない。その参考となるのは、事故後30年経っても色あせることのない「チェルノブイリ法」である。それは私たちの心と健康の支えとなると信じている。

※ チェルノブイリ法 ※
 事故5年後に国家の加害責任を明記。予防原則に則り、生存権を保障した世界で初めての人権法。追加被ばく線量1mSvを基準に「移住」「避難」「保養」「医療検診」等が保障されている。


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