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【松井は6千万返せ】税金使って「賛成」へ誘導 都構想パンフレットの違法性を問う訴訟、第2審へ

【都構想パンフレットの公金支出を問う訴訟】
控訴審 第2回期日
2023年4月19日(水)14:00 大阪高等裁判所


ーー大阪市の廃止と特別区設置の是非を問うた「大阪都構想」住民投票。維新の会はデマや誇大広告まで使って賛成に誘導するも、結果は草の根の市民運動によって反対多数で否決された。だがこの世論操作には市民の税金まで使われていた。20年11月の2回目の住民投票の前に、住民説明用のパンフレットが全戸配布された。この公金支出を問題化した重要な訴訟を紹介する。(編集部 朴偕泰)

 同パンフレットは、投票する際の判断材料として、都構想の内容を分かりやすく伝えることを目的として製作された。だがその内容は、賛成側に読者を誘導する露骨なものだった。

 まずパンフレットでは、都構想後の「成長する大阪」をアピールするために、直接関係のない「リニア中央新幹線」や「北陸新幹線」、「大阪万博」が記載されていた。
 次に特別区設置後の財政シミュレーションでは、右肩上がりの「未来予想図」を展開していたが、根拠となる数値に恣意的な選択が見られた。前提となる数値には「今後の財政収支概算(20(令和2)年3月版)」を使用していたが、この概算はコロナの流行を受け、同年7月に大きく下方修正されていた。市は直近の数値を使うことなく、古い数字を基にシミュレーションを行ったのだ。松井の指示か役人の忖度かは不明だが、パンフレットが都構想の賛成ありきで作られたことは明らかだ。
 行政の腐敗に対し、市民は大阪市を相手取って裁判を起こした。松井一郎市長と、手向健二副首都推進局長(当時)に損害賠償請求を行うように求める訴訟だ。原告はパンフレットの作成に使った公金、6千万円余を返還するよう訴えたが、昨年8月1日の大阪地裁判決では原告が敗訴した。
 森鍵一裁判長は判決で、パンフレットの内容に偏りがあると認めたものの、市長が自身の政策を推進することは違法ではないとした。公金を使ったパンフレットでも公平である必要はない、という不当判決だ。原告は控訴し、闘いの舞台は大阪高裁へと移った。


原告団会議の様子

「公正・中立」 認めぬ司法

 弁護団の山口博史弁護士は、裁判の主な争点を「大都市地域特別区設置法(以下、大都市法)」の解釈と位置づけている。
 山口弁護士によれば、大都市法7条2項では、住民に対して〈分かりやすい説明〉をすることを行政側に求めている。一審判決では〈分かりやすい説明〉に中立・公正という縛りはないとしたが、大都市法は法的拘束力のない住民投票条例とは異なる。同法は、住民投票の結果で賛成多数となれば特別区を設置しなければならない。つまり法的拘束力のある国民投票法と同じ仕組みであり、同様の解釈がされるべきなのだ。
 国民投票法では『説明に関する記載等については客観的かつ中立的に行う』ことと決められている。よってパンフレットに偏った内容を掲載するのは違法となる。
 また判決では、パンフレットの記載内容について、賛成に偏っていたことを認めたものの、市議の意見が掲載された投票広報によって、必要十分な情報提供ができたとした。しかし、投票広報は紙面割合が議席数で配分されたため、反対派には僅かな紙幅しか与えられなかった。
 加えて広報はパンフレットと同様に全戸配布されたが、10月中旬に配布されたため、投票日の11月1日まで周知期間はわずかだった。
 山口弁護士は控訴審で、2点の公選法違反を追加して主張するという。
 「公職選挙法の第235条第2項では、〈虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公に〉することを禁止しています。これは報道機関に対しての条項ですが、行政側の情報提供も同じだと考えます。また第136条の2項では、〈全ての公務員は地位を利用して選挙運動をしてはいけません〉とあります。松井市長は、市長という地位を利用して偏ったパンフレットを作成配布したといえ、この規定に抵触していると考えます。住民投票は公選法を準用しているので、いずれも違反していると主張する予定です。」

 原告の一人、森石かおりさんは西成区で野宿者支援に関わっている。
 「釜ヶ崎では日雇い労働者にとって不可欠な建物が閉鎖され、新しいものに作り変えられようとしています。これは新今宮駅周辺の再開発とも関連していて、住民のための開発とは言えません。問題のパンフレットも「大型再開発が大阪に経済効果をもたらす」と書いてあり、胡散臭く感じました。これから街宣活動などで広げたいと思うので、注目と応援をお願いします」と語った。

(人民新聞 2023年1月20日号掲載)

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