その空間にいさせてくれ

爆笑がしたい。
「爆笑させたい」ではなく「爆笑がしたい」
そんな体験が年々減ってきちゃっているのが寂しい。

芸人になればずっとお腹が痛くなるくらい愉快な状態に浸かっていられると思っていたけど、案外そうでもなくて、実際は「どうしたらいいんだ」とか悩んでばっかで全然そのステージに行けない。

もちろん基本的に芸人はみんな面白おかしい毎日を過ごしている(はず)なので、そこに入る努力と能力を持ちあわせていない自分を恨むしかない。

でも今日みたいにカフェに引きこもってる時に「あれ面白かったなー」とか思い出してニヤニヤしてる時間が楽しい。これをネタ作りと呼ぶことで頑張った気になっている。
実際はいろんな思い出を引っ張り出してきているだけである。

高校の時、野球部だった。
試合が近くなってきて、レギュラー争いが白熱してた頃。1人すごく気合の入っている友達(Tと呼ぶ)がいた。
Tは仲良くしてるメンバーの1人だったので、お互い励まし合いながら、監督が帰った後も遅くまで一緒に自主練をしたりしていた。

そんなある日。レギュラーメンバーを決めるのに大事な紅白試合があって、そこでTが決定的なエラーをした。
すぐに交代させられた上に、監督からとんでもない勢いで怒られていて、他のコーチにもめちゃくちゃ怒られていた。
Tは死んだような顔をしていて、そのせいでさらに「不貞腐れるな!」みたいな怒られ方もしてた気がする。
とにかく、めちゃくちゃ、死ぬほど怒られてたのを覚えている。

そんな紅白試合の後。
監督が帰り、いつものように自主練を始めていた頃、「Tが見当たらない」という声が聞こえてきた。
帰ったのかと思ったけど、いつも遅くまで残っている奴だったし、それにTのグローブとスパイクもグラウンドに置きっぱなしだった。
「どこかにいるんじゃないか」となって、Tの捜索が始まった。そしてしばらくして部室の方から「Tがいた!」と声が聞こえてきた。

Tは真っ暗な部室の奥の方で、白目を剥いて倒れていた。

「Tが!!白目で倒れてる!!!」とみんなが騒いだ。
駆け寄るとTは、「俺は終わった…。もう終わったんだ…。」と念仏のように唱え続けていた。
電気を消して、窓も閉め切った部室の中は、いつもより空気が悪くて臭かった。

この、Tが白目で倒れてた事件が、自分の中で思い出すと笑っちゃう思い出のひとつになっている。
頑張って自主練してたこととか、レギュラーを狙ってたこととか、それなのに死ぬほど怒られてたこととか。
みんなで捜索したら「白目を剥いて倒れている人間」を発見するという、超絶バッドエンドのこととか。

多分その場にいなきゃわからない。でもすごくいい思い出だ。
きっと誰しもが、それぞれにしかわからない爆笑した思い出を持っていて、きっと他の人には絶対伝わらなかったりするんだろうな。

自分もそんな体験を今も大事に持っていて、むしろもっともっと増やしていきたいとずっと思っている。
あんな空間に入れる方法がまだあるなら、そのためになら頑張りたいと思っている。

というのが1つあって。
さらに欲をいうなら、あわよくば、みんなに伝えたいなという気持ちもあって。

自分の中のそんな思い出が、あまりにもキラキラしちゃってて。
「流石に他人持ってるものよりも、これは面白いんじゃないか」と思う時があったりして。
かなり傲慢だし、きっとそんなことはないんだろうけど、思っちゃうんだから仕方がない。
面白いんだから仕方がない。

本来外に出ないような、そんなことをお披露目できるのが、自分はとても楽しいです。
だから例え自分自身について期待していなかったとしても、芸人が、コントが、楽しいんだろうなと思うのです。

今日はそんな着地点から単独ライブのお知らせです!

四兆単独ライブ『peak』
6月30日にやります。詳細は下記を見てくれるとありがたいです。

今、自分の引き出しを鬼のように開けまくって、自分の面白いと思うものを探しまくっています。
自分は特別な人間でもないので僕が爆笑できるものはきっとみんなも爆笑できるはず。それを信じて準備しています。

ここでもう出涸らしになっていいです。カスカスになるまでやってやります。
だから『peak』です。
これでpeakじゃなかったら何がpeakなんだ、っていう覚悟のタイトルです。
次のこととか考えないくらいpeakです。
島田紳助が100点出した時くらい、このあとどうなってもええわのpeakです。

白目剥いて倒れてたら笑ってくださいな。
お待ちしています。


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