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2021年の3冊

大事なことは3つに絞ってまとめるという、思考の整理方法がある。なんだかカッコいいので、昨年読んだ本の振り返りも3冊にしてみる。

2021年に刊行され私が読んだ本の中から、強く印象に残った3冊は次のとおり。

○『取材・執筆・遂行』古賀史健著

 書くことの心構え、あるべき考え方、具体的な技術について、言葉で論理的に説き詰めたすごい本である。「すごい」しか出てこない語彙力をお許し願いたい。誠実な生き方の指南書としても読める。書くことの教科書であるとともに、この本自体がその素晴らしい見本になっているということに気づいてトリハダが立った。科学を志す人にも読むことを勧めたい。



○『正欲』朝井リョウ著

 最も心を揺さぶられた小説。揺さぶられすぎて、自分の価値観を精いっぱい保ちながら読み進めるような感覚だった。どうしてこんな小説が書けるのか、私には別世界すぎて、畏れすら覚える。「多様性」がテーマと思われるが、読後は軽々しくその言葉を口にできなくなる。


○『What's on Your Mind, Tora-chan ?(寅ちゃんはなに考えてるの?)』寅次郎著・前田将多訳

 内容は、猫の写真と粋な言葉が美しくレイアウトされた美術本と言えばよいだろうか。当初、採算を度外視して企画が始められたという本書は、細部までアイデアが詰まった素晴らしいものである。
 制作に関わった方々が企画段階からツイッターなどで進捗を公開していた。豪華な装丁や紙の選択、ページ毎に異なるデザイン、さらにパソコン作業の風景を延々とYou Tubeでライブ配信するという実験的な試みもあり、度肝を抜かれた。ひとつひとつがその道のプロによる仕事である。それらを拝見しながらまんまと購入したわたしも共犯者の気分であった。踊る阿呆にみる阿呆、いや、つくる阿呆に買う阿呆と言うべきか。
 限定200冊だけ製作された本革表紙の特装版は、もはや家宝である。通常版も表紙があまりに素敵で、思わず買い足してしまった。合計いくらなのかは考えないようにしている。

革装丁の特装版(左2冊)と通常版(右端)

 後世語り継がれる本になるのではないかと、密かに思っている。


いずれも、ずっと手元に置きたい本である。