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アンダルシアンギター NEW モデル

アンダルシアンギターの新モデルを試奏させてもらった。

前回試させてもらったスタンダードモデルは、個性的な見た目でありながら正統派なフラメンコギターで、音量、音質ともに豊かでパワフル、ソロにも伴奏にも使えそうな印象だった。今回は演奏性に特化した小ぶりなモデルということで、一体どんなギターなのか弾くのを楽しみにしていた。

弦長634mm、17フレットネックジョイント、1弦の最高音は24フレット、さらにダブルカッタウェイ、他にも一般的なフラメンコギターでは聞いたことの無かった独創的な仕様をたくさん盛り込んだこのギターを、僕の視点からレビューしてみようと思う。

手に取ってみると、まず軽さと全体の小ささに意表をつかれる。
ネックは短く細く、ボディは小さく薄く、抱えやすい。
ネックはFのコードの6弦を親指で楽々握り込めるほどの細さで、指板の色合いも相まって、エレキのストラトを思い出した。
ストレッチが必要だったコードフォームでも楽に押さえられる。普通のフラメンコギターが12フレットジョイント(ボディと指板の接点が12F)のところを17フレットジョイントにしている上、カッタウェイ仕様なので、音階は上にも下にも楽に駆け上がり駆け下りができる。また、1弦が24Fまであるということはミの音が開放弦より2オクターブ上まで出せるということで、これには感激した。ただ、弦幅の狭さはピック弾きには都合が良いだろうけど、フラメンコ専門の弾き手には好みが分かれるところかもしれない。
弦のテンション感、プルサシオン(弦に指が食い込む感じ)、ゴルぺのしやすさも申し分なく、ちょっと弦に触れただけで楽器全体が振動するレスポンスの良さは、スペイン製ならでは。何を弾いても右手は疲れることがなく、このギターで弾けないフレーズは、どんなギターでも弾けないだろうと思う。むしろこのギターに慣れてしまうことで、他のギターが弾きにくく感じてしまうことが怖いかもしれない。取り回しのしやすさ、両手への負担の少なさはとにかく際立っている。

そして出音について。
小さいボディながらもやはりアンダンルシアンギターらしく力強い。
これはおそらくボディ側面に開けられたサウンドホールのおかげで、弾き手にダイレクトに音が届いてくる恩恵もあると思う。
音質はやや中域に寄る箱鳴り感があるものの、低音はしっかり届いてくる。
乾いていて、軽いようで、でも簡単に折れない音のしなり。フラメンコギターのグルーブの原動力の秘密は実はこのあたりにあるような気がするけど、そこをしっかり押さえているのはさすがスペインのギターだなと思う。
一方単音の音色の表情の豊かさ、という部分に関して言うと、やや均一な傾向。ただこれは伴奏向きのフラメンコギター全般に言えることでもある。
今回は横、裏板がシープレスのものとモビングゥイ(初めて聞く材木)の2モデルがあり、それぞれ音色の傾向が違った。シープレスはいわゆる“白”の材で、馴染みのある、パリッと乾いてついかき鳴らしたくなる感じ。一方モビングゥイは、もう少し硬質で、同時に甘みもあり、単音ひとつひとつに主張がある感じがした。

「弾きやすさ」と「音の良さ」はいつも一致しにくい要素なので、ギターを選ぶ時は皆そこで悩むと思う。
その点このギターは弾きやすさをとことん追求したモデルなので、音はピックアップを仕込むことを前提にしているとのこと。その潔さも新しいし、間違いなく突出したギターだと思う。

フラメンコギター/クラシックギターの設計はかなり完成されていて、新しい発想を盛り込む隙が無いように感じていたが、アンダルシアンギターはそこに風穴を開けてくれている。
未知の可能性を秘めたギターだと思う。


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