見出し画像

5.小中学校の図書室に、この本が、そっと置かれていたら…

ここまで読んでいただき、ただただ感謝しています。もう長いよ、前置き。そんなお叱りの声も聞こえてきそうですが、ようやく『教えて!マジカルドクター 病気のこと、お医者さんのこと』刊行です。「え、まじかよ?」「まじだよ!」「マジカルドクターだよ」、すみません、これがいいたかっただけです。

書影_マジカルドクター

大塚篤司先生の情感とやさしさがいっぱいつまった医の児童本。油沼さんの描かれた子どもたちの生き生きとしたキャラやユニークな絵の数々。帯には糸井重里さんからすてきな推薦の言葉もいただきました。カバーデザインは佐野裕子さん。そのほか多くの方からご支援とお導きがあり、この本がリリースされます。この場を借りて、担当編集より、お礼を申しあげます。

わたしは編集者ですが、学校の国語の授業が大の苦手で読書感想文などもからっきしだめで、夏休みの課題図書とかもほぼ読んだことがありません。でももし子どもの頃に戻れるとしたら『マジカルドクター』は読んでおきたい。そう思うのです。自分の子や次の世代に何かを残したい。歳を重ねるにつけ、大人はそのように思うものです。N国際空港の出会いから長々と書き連ねてきましたが、あのときの大塚先生の言葉にすべてが込められています。

「スイスでがんに効くという水というのがあるそうです(科学的事実に基づくものでなく民間療法として)。その話を聞いた小学生のわたしの娘ががんに罹患しているある知人を心配して、「なら、その水を〇〇さんにプレゼントしてあげたらいいのに」といったんです。それがすごくひっかかっている。その気持ちはとても純粋、でもその方法は適切でない。そこに医者として、何かしてあげられることはないかと。」

ここに、大人としての責務があり、人間としてのやさしさがあり、医師としての誠実さがあると思うのです。そして、この本は当然ながら、

基本「嘘がない、事実に基づく、正しい」内容

です。この本を通じて「健康の大切さ」「医療の大切さ」「命の大切さ」を感じてもらえたら。そう、コロナ禍で遊ぶ機会や学ぶ機会を部分的に奪われた子どもたちにこそ、届けてあげたいのです。そしてもし小中学校の図書室に、この本が、そっと置かれていたとしたら、これに勝る喜びはありません。ね、大塚先生、油沼さん、そうでしたね。

第5回木造校舎

最後に、本書の「おわりに」の大塚先生の言葉を紹介します。

おわりに 

2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まり、子どもたちも大きな影響を受けました。突然の休校や学校行事の中止、身近なところでコロナに感染した人もいたかもしれません。テレビやインターネットでは毎日のようにコロナ関連の話題が取り上げられ、なにが真実かわからなくなった人もいたことでしょう。

義務教育に「医療」という科目はありません。

なので、子どもたちは病気や健康について「考える基礎」がないまま社会に出ることになります。

SNSでは、真面目で勤勉な大人がカルトに近い医療情報にハマってしまう状況を見てきました。医療情報を発信していると、一度間違った情報を信じてしまった人をそこから正しい方向に軌道修正するのはとても大変なことだとも感じました。

現実の世界では、大きな病気になってから医療を身近に感じる患者さんが多いようです。実際、そのような患者さんを診てきましたが、多くの人は戸惑い、手探りで解決策をさがします。病院の外には医師はいないですし、病気に対する正しい答えが用意されているわけでもありません。人は病気になって、はじめて自分ごとと感じ、そこから勉強を始めるのです。

せめて子どものころから、「医療の土台となる考え方」だけでもふれておけば、大人になってからこまらないのではないかと思い、この本をつくりました。

つくり始めたのは新型コロナウイルス感染症が流行する前の時期でした。ぼく自身、病院でコロナ対応に追われ、原稿の仕上がりが大幅に遅れてしまいました。それでも担当編集の程田靖弘さんはじっくりと原稿を待ってくれました。丸善出版のみなさんがいなければこの本ができませんでした。心から感謝しています。また、全編にわたりすてきな漫画を描いてくれた漫画家の油沼さん。本書の帯に魅力的な推薦文を寄せてくれた糸井重里さん、本当にありがとうございました。

最後に、ここまで読んでくれた子どもたち、保護者のみなさん、ありがとうございました。いつか感想を聞かせてください。そして学校の先生方にも読んでもらえたらうれしく思います。

人生いつでも健康なわけではありません。心や体がつらいときもあります。そんなとき、立ち上がる助けとしてこの本が役立つことを願っています。

もうだいじょうぶ、あなたの心にはマジカルドクターがいます。


2021年10月吉日 大塚篤司 

教えて!マジカルドクター、病気のこと、お医者さんのこと

書影_マジカルドクター

おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?